煉獄の歌 

文月 沙織

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十一

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 朦朧もうろうとしてきた敬の意識に、すべりこんだのは、嘲笑をふくんだ岩田の声だった。
「すごい格好だな」
 かすかに残っていた敬の矜持が最後の抵抗をもたらして、どうにか瀬津の手を払おうと動いたが、ぴしゃり、と悪戯をたしなめるように瀬津の左手によって打ちはらわれる。
 同時に、右手による追い込みが激しくなった。敬の白い太腿や足が震える。脱がされることない靴下に守られた足先も、小刻みに震えた。
 信じられないほどに猥雑で、滑稽でもあれば、残酷で、そして官能に満ちた姿だった。
「あ、はぁ……!」
 やがて襲ってきた絶頂に、敬はとうとうと、またほのかな雄の臭いを放ってしまった。
「ああああ……」

 もはや悪態をつく元気もなく、己をいましめる男の腕に身を預けるよにして啜り泣いていた。
 そんな弱気な一面を見せる敬をどう思ったか、瀬津は指で敬の頬にながれる涙を拭ってくれた。だが、後始末をさせてもらえない敬の身体には、恥ずかしい痕跡がのこったままで、それがまた敬を切なく追い詰める。 
「あ、あの、もう、それで許してやってください」
 嶋がおずおずと言うのに、瀬津はそっけない一瞥いちべつをくれてから、言い放った。
「もう一回だ。これで終わりにしてやる。坊や、今度は自分でやってみせてみろ」
「な……!」
 さすがに弱っていた敬も瀬津の残酷な命令に、なけなしの気力を取り戻して、顔をこわばらせた。
「ほら、やれ。自分の手でちゃんとやってみせてみろ。ちゃんとやれたら、今日のところは帰してやる」
「こ、この野郎……!」
「なんだ? 嫌か? できないのか?」
 敬は目に力を込め、身体をよじって相手を睨みつけた。
「出来るわけないだろう!」
「そうか。それじゃ、仕方ないな。俺がしてやるか」
 さらに瀬津がつづけた言葉は敬から血の気を引かせた。
「おい、岩田、店行って、暇そうにしている女の子がいたら、二、三人呼んでこい」
 言われた岩田は目をたぎらせた。
「二、三人でいいんですか?」
「ああ。まぁ、客でも好きそうな奴がいたら呼んできてやれ。こんな面白いショー、見逃せないと言ってな。安賀組の坊やの可愛い姿が見れるんだからな。あっという間に評判になっちまうかもな」
「や、やめろぉ!」
 敬は蒼白になって、不利な体勢なのもかまわず、瀬津につかみかかっていた。
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