観音通りにて・父親

 はじめてのバイト代で、父親を買った。三月、まだ肌寒い晩だった。
 観音通りとかいう妙な名前で呼ばれる売春通り。その奥の方で、街灯から少し外れた薄暗闇に、父親は立っていた。目の前まで行くと、父親は軽い感じで目を上げ、俺の顔を見て、静かに瞬きした。
 少しくらい同じろ、と思った。
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