横領を告発しようとした私の声を奪った婚約者へ。愛人との結婚式で、その沈黙をお返しします
「声がなければ、告発も否定もできない。喋れない女の走り書きを、誰が立ち止まって読む?」
伯爵令嬢アメリアは、婚約後の領地運営を手伝うなかで、不自然な支払いを見つける。
南堤防の石材代として処理された二百四十金貨。
同じ支払番号、同じ金額、同じ婚約者の署名が記されたもう一枚の明細には、こう書かれていた。
――愛人ダフネへ贈る、婚礼用サファイア首飾り一式。
公的救済金の横領を地区救済局へ告発すると宣言した直後、アメリアは婚約者ヴィクトルから「封言の呪い」をかけられる。
横領という秘密を隠すため、声そのものを奪う呪い。
ヴィクトルはアメリアとの婚約を解消し、十日後にはダフネとの結婚式を開くと告げた。
声を奪えば、何も訴えられない。
声を失った女の話など、誰も聞かない。
ヴィクトルはそう信じていた。
けれど、アメリアが失ったのは声だけだった。
文字を書く手も、証拠を求める知識も、どこで誰へ伝えるかを選ぶ意思も、奪われてはいない。
以前から面識のあるジュリアン子爵は、アメリアの代わりに告発しようとしない。彼女が一文字ずつ書き終えるまで待ち、本人が決めるまで答えを先回りしない。
アメリアは自分で二つの支払控えを確保し、安全と複数の証人がそろう場所を選ぶ。
それは、ダフネが横領金で買われたサファイアを身につける、ヴィクトル本人の結婚式だった。
誓いの前に婚姻への異議を問われた瞬間、声のないアメリアは自ら立ち上がり、一枚目の告発書を大勢へ掲げる。
> 私はアメリア・レイン。ヴィクトル・ハロウに声を奪われました。
これは、声を奪われても意思を他人へ渡さなかった令嬢が、自分の文字で秘密を公にし、自分の言葉と名誉を取り戻す物語。
全7話・完結。婚約破棄、愛人との結婚式での直接告発、ざまぁ、意思を尊重して待つ相手との異世界恋愛です。
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アメリアは自分で二つの支払控えを確保し、安全と複数の証人がそろう場所を選ぶ。
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