孤児護り、アリーハック
「私に肩書を与えるな」
名家の娘として生まれながら、家柄も役目もすべて捨て、森の奥で気楽な無職生活を送る魔族の女、アリーハック。
ある日、森に響いた竜の悲鳴を聞きつけた彼女は、密猟者に襲われ瀕死となった母竜と、その仔竜を発見する。
密猟者は叩きのめした。だが、母竜は助からない。
そして死の間際――母竜は仔をアリーハックへ託してしまった。
「待て。私は竜の育て方など知らん!」
抗議する相手は、もういない。
仕方なく連れ帰った仔竜に肉を食わせ、夜泣きに付き合い、火を吐けば耐火布を買い、怪我をすれば薬を塗る。名前がないと不便なので「ルカ」と名づけ、姿が見えなくなれば森中を探し回る。
だが、これは育児ではない。
ただ預かっているだけだ。
――少なくとも本人は、そのつもりだった。
そんなある日、ルカが突然、人間の幼児へと姿を変える。
そして初めて口にした人の言葉は――
「ママ」
「違う。私に肩書を与えるな」
何者にもなりたくなかった女と、母親を失った仔竜。
後に「孤児護り」と呼ばれることになるアリーハックの、最初の一匹との物語。
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