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2章

18.協力者 01

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 本当に仕事なんだなぁ……。
 私はチャーリーを眺める。

 王宮内の修繕を行っていた見るからに職人って感じの人に声をかけられたチャーリーは案内を中断し少し待って欲しいと伝えた。 で、私達は何か仕事をしているらしいチャーリーを離れた場所から見ている訳だ。

 良く見た景色のようで……全然違う。
 貴族令嬢やご婦人相手の時と違って、真剣な顔をし、考え込み、提案をし、意見交換を重ねて話し合う。

「商人が修繕で何を語るんでしょう?」

「費用的な事とか?」

 子犬姿のヴェルは余り興味がないような声色で言うが、視線は割と真剣だし、耳をチャーリーに向けていた。

「速攻で、判断できるのかしら?」

「出来るんじゃないか? 実際に話しをしているんだし」

 私達は無知な子供だと思い知らされる。

「律儀に立って待っている必要もないだろう」

 言われて私は、子供だからこそ座れる壊れたベンチに腰を下ろし、私は何時も以上に柔らかな毛並のヴェルをもちもちした。

 元々はドラゴンなのに子犬サイズになると、頼りなくふにふにとした感触になってしまう。 それがとても可愛らしいし気持ちいい、控えめに言って最高と言う奴だ。 因みにこの言い回しはご先祖様に学んだ。

 もふもふもふもふ……

「楽しいか?」

「気持ちいい」

「そりゃぁ、良かった」

 憮然とした声だが気にしない。

 こう癒しが無いと嫌な事ばかりを考えてしまうのだ。



 例えば……、



 王宮で明らかに権力を持つアダ―商会の面々の活動。

 チャーリーが足止めされるまで、他の兄弟に、従姉弟、親族等も見た。 彼等は皆商人としての範疇を超えた仕事をしているように見えた。 とは言っても、商品を卸していただけの私に、商人とは何ぞ? と聞かれても困るのだけど。

「随分と……発言権があるのね。 それに金銭的裁量?」

「後、資材の管理もしているんじゃないのか?」

「きっと良い稼ぎなるし、今まで以上の人脈も出来るだろうな」

「彼等のように、全てが良い方に進んでいる人っているのかな?」

「探偵ゴッコは危険だから止めておけ」

「それはそうだけど……」

 自分が王族だって分かっているのだろうか? そう脳裏を過ぎったけれど、前日の沈黙はとても居心地が悪くて、私はヴェルの事は語らないように口を閉ざし、考え事を変える事にした。

「商人には、起こせない事件だったはずよね?」

「僕はそうおもうけど……王宮の外の知識は無いから。 商人が日頃どんな働きをして、王族、貴族ではない者を相手にするときのこと等知らない」

「それもそうだよね……」

 もう少しで1時間は経過しそうだ。

「忙しそうだね……」

「だな」

「忘れられてしまったのかな?」

「かもな」

「皆、良く働くよね……。 王宮で働くって緊張しないのかな?」

「瓦礫の撤去作業や、壁の復旧ぐらいで緊張はしないだろう」

「そうかな? 私は王宮に来ていると言うだけで、ドキドキするのに……。 それは私が子供だからかな? 大人って結構神経図太いんだね」

「人ソレゾレだろう。 そう言いたいが、修繕作業をしている奴等は、元々王宮で働いていた奴等だ。 復興課と言えば、なんか恰好良さそうだけど、王宮内の修繕作業を引き受ける奴がいる。 後は庭師、馬の世話係、料理人、後は庶民出身の文官に、憲兵達、僕が見た限り元々王宮勤めの奴等だ」

「全部?」

「僕が記憶している限りはだけどな。 ほら、あのオヤジの方が言っていただろう。 死んだのは王族全部と、向かってくる騎士、上位の貴族、下位貴族と使用人は無事だと言っていた」

「う~~、そう言う言い方をされると……。 なんか全てが仕組まれていた気分になって、モヤモヤする~」

「危険な行動は禁止だからな」

「分かっているけど……私は子供で大人の力が必要になるときがある……。 現状を知れば知るほど、私は不安になってくるの!!」

「そっか……そうだな。 アダ―商会は怪しいもんな」

「あ~あ~」

「どうした?」

「そんなハッキリ言わないでよ。 不安になってくるでしょ」

「なら、別に信用できる大人を味方につければいい。 あいつなんてどうだ?」

 ヴェルが視線を向けた先に1人の男が壁の修繕作業を行っていた。 穴の開いた壁を塞いでるのだろうか?

「ぇ? あの人がどうかしたの?」

「彼は、庶民出身の憲兵だ。 実力があるから随分昔から王宮警備を行っている。 顔も懐も広く、情に厚く、人望もある器用貧乏な男だ。 損が多くて出世もしないし、給料も安いが大人の知り合いを得たいと言うなら僕のお勧めの男だ」

「情に厚く、器用貧乏な憲兵の人が生き残っているんだ」

「彼は庶民だからな。 建国祭には王宮に入れてもらえなかったんだろう。 権威って奴を気にするからな」

「ふぅ~ん。 なんか理不尽だねぇ……今いるのは、王宮職員、使用人、庶民上がりの人間。 なんて言っていいんだろう……何故か不快に感じてしまうし、私も同じ事をしていいの? って、気分になる」

「分からない訳でもない。 だが、まぁ、色々と力になってくれる人は必要だろう。 で、どうする?」

「う~ん、分かった……声をかけてみる」

 クリスティアはヴェルを抱っこしたまま立ち上がり、そして割と長く停止してしまった。

「どうした? 腹でも減ったのか?」

「確かにオヤツの時間ではあるけど、違うわ。 どう、声をかけていいのかな?って」

「黙って服でも引っ張ってやればいい。 今、凄く情けない顔をしているから丁度いい。 凄く困っているように見えるから、きっと奴の庇護欲が刺激できる」

「それは……なんか、嬉しくない……かな」

 クリスティアはヴェルをしっかりと両手で抱っこしたままで、1人の男に近寄って言った。  シャツとパンツにガッシリとしたベルト、ベルトには作業用の道具が入ったバックと言う、なんか作業しているって感じを全面に出した格好。

 ヴェルは服を引っ張れと言ったけど、壁に沿って大人の背丈ほどある足場の上に昇って行ってしまったのだから、黙って見守るしかできない。 結局、私はモジモジと距離を置いて作業を見上げるしかできなかった。

 フラリと倒れそうになった私は慌てて座りこんだ。

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