『氷の王座に座る君へ ― 赦さないという聖域』

『氷の王座に座る君へ ― 赦さないという聖域』

触れれば溶けるはずのものを、
わたしは溶かさないでいる。

名前を呼べばほどける距離を、
呼ばないことで固定している。

あなたはまだ、言葉を信じている。
謝れば、埋まると思っている。
欠けた時間も、削れた気持ちも、
同じ形に戻ると、どこかで思っている。

だからわたしは、受け取らない。

受け取らないことで、
あなたの言葉は宙に浮く。
行き場を失って、
わたしのまわりを静かに回り続ける。

それでいい。

赦さないということは、
終わらせないということ。

切り捨てることでも、
断ち切ることでもなく、
ただ、解決を拒むこと。

氷の上に置かれたままの関係は、
腐らない。
進まない。
変わらない。

わたしはそこに座る。

冷たい椅子は、やさしい。
熱を奪い、感情を鈍らせ、
決して沈まない高さをくれる。

見下ろすのではない。
ただ、落ちないだけ。

あなたが見上げるのは、
わたしではなく、
許されるかもしれないという幻想だ。

だからそれを壊す。

何度でも。

「許さない」

その一言で、
あなたはここに留まる。

進めず、戻れず、
終われない場所に。

わたしも同じだ。

知っている。

この椅子は、降りられる。
溶けることも、終わることも、
選ぼうと思えば、できる。

それでも選ばない。

なぜなら、

あなたがここにいる限り、
わたしは過去ではないから。

赦さないことは、
罰ではない。

関係の保存だ。

温度を奪い、
時間を止め、
名前だけを残す保存。

だからわたしは、
今日も何も受け取らない。

あなたの言葉も、
後悔も、
変わったという証明も。

すべてを、ここに置いていく。

溶けない場所に。

終わらないままの形で。

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