『鹿鳴館カーストで嘲笑された吉原の大夫、断頭台帰りの王妃でした』

『鹿鳴館カーストで嘲笑された吉原の大夫、断頭台帰りの王妃でした』

 笑われることには、慣れている
 雪の夜も、畳の冷たさも
 誰かの視線に値をつけられることも

 けれど

 首に触れたときだけは
 忘れられない

 落ちてくる気配
 音もなく、確実に
 すべてを終わらせる刃の記憶

 ――あのとき、私は何も持っていなかった

 だから今は、持つ

 姿勢を
 言葉を
 沈黙を
 そして、誇りを

 笑うなら、笑えばいい
 そのドレスも、その言葉も
 借り物の輝きにすぎない

 わたしは知っている
 本物が、どれほど静かで
 どれほど残酷に美しいかを

 足音を刻む
 三枚歯の高さで
 揺らぐことなく

 視線を伏せる
 すべてを見渡しながら

 扇を閉じる
 それだけで十分だと知っているから

 ――ここは宮廷ではない

 ただの模倣
 ただの虚飾
 ただの、夢のなりそこない

 けれど

 それでもいい

 偽物の中に立つなら
 本物で在ればいい

 誰も気づかなくても
 誰も理解できなくても

 ひとりで、十分だ

 わたしは、落ちない

 もう二度と

 あの場所へは戻らない

 だから

 この場所で
 この国で
 この名で

 生きる

 ――吉原の大夫として
 ――断頭台を越えた王妃として


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