お前の辞書に自重って文字を加えてくれないかな！？

日常

第12話 もっと欲しがって

「っ旭、陽、もういや？　要らない？」
「ッぁ、ンあっ！　はっア、ッぁ、う……っ？」

　突き上げるのを止めて、ゆっくりと腰を回す。
　がくりと体を揺らした旭陽の気を惹こうと、目の前で震えている唇に舌を這わせた。

　ぼやけている視線と目が合ったのを確認してから、可能な限り穏やかな声を出す。

「ッあ、ぁうっ、な、ッぁ、な、に……っ？　ぃ、ら……？」

　思考なんて既に溶けきっている旭陽が、鸚鵡おうむ返しに呟いた。
　汗を伝わせている耳に唇を押し付ければ、高く啼いて腰を押し付けてこようとする。
　その分だけ、俺も少し腰を引いた。

　ぱちりと瞬いた瞳から、大粒の雫が滴り落ちた。
　一瞬何が起きたのか分からないような顔をしてから、瞳が大きく歪んだ。

「っや、ぁッ、あっ、ッ……ぁ、ッら……ぁっ、ッはっア！　っ、足、りな……っィ、ぃあっ」

　ぼろぼろと涙を落としながら、肩に担いだ両足が俺を引き寄せようとする。
　震え続ける足には普段の力強さは見る影もなく、碌な力が入っていないけど。
　その変わりに、熱い腸壁は俺を締め付けて誘ってきている。
　あー、めちゃくちゃに突いて掻き回してやりたい。

　本能的に腰が動きそうになるのを堪えて、首筋へ唇を押し付けた。
　最初は人間たちに嵌められた首輪が太すぎて殆ど肌が見えていなかったが、俺が枷を作り変えた今は問題なく触れられるようになっている。
　肩口が慄く様を横目で見ながら、普通なら痛みが勝るだけの力で吸い上げた。
　今の旭陽なら、それも快感に変わってくれるはずだ。

「っあ、あうう！　はっ、ぁ！　あ、きっ、も……っ、と、ぉ、っんぁ……ッ」

　肌を吸い上げると同時に、旭陽の腰が跳ねた。
　強い力で残した朱痕は、変化が分かりにくい褐色の肌でも確かに咲いている。
　そこへ舌を這わせれば、同じ場所に受ける刺激に男の体が震えた。

　求められるがままに、別の場所へも吸い付く。
　ひっと小さく啼いて頭を仰け反らせたから、晒された喉仏にがぶりと歯型を残した。

「っひぁあ！　あっ、ぁあう！　ぅ、ンぅあ、ア……ッ」

　牙は立てずに他の歯で噛み付いて、じゅうじゅうと強く肌を吸い上げる。
　腰を振り乱して快感に震えながら、旭陽はペニスから精液を滴らせていた。

　ああ、普通に噛まれただけでもイってるのか。
　そんなにイイなら全身噛んでやりたい気もするけど、それには一度抜かなくてはならない。
　この気持ち良い場所から出るのは嫌だから無理だな。

　口の中に広がる旭陽の味を思い出しながら、男の耳にまた唇を触れさせる。

「旭陽、ッは、もうヤなんだろ？　さっきも言ったけど、俺、嫌がる相手に無理矢理するのは趣味じゃないんだよな、あ」
「ッッぁ、あっ、ゃ、い、やだっ、ッちが、っあきら、っ……！」

　奥まで貫いてやりたい本能を強引に抑え込んで、ゆっくりと腰を引いていく。
　気付いた旭陽が、今までとは違った種類の悲鳴を上げて俺を引き止めようとしてきた。

　まあ凄かったもんな、さっき。
　あんなに淫気をだだ漏れにしてる生き物も、あそこまで辛そうな旭陽も初めて見た。

　また放置されると思えば、それは取り乱しもするだろう。


　どくどくと耳の奥で煩い音が響いている。
　それが自分の鼓動の高鳴りだと気付かないまま、こっちまで震えてきた唇を舌で拭う。
　旭陽が振り撒いている淫らな魔力と唾液の味が、甘く舌に染み込んできた。

「お、れは、自分で処理するからさ。旭陽は、休んでて、くれよ、っ」

　俺が腰を引く度に、襞が隙間なく絡み付いて中に引き止めようとしてくる。

　どうしても声が上擦るのを止められない。
　それでも、理性なんて溶けきっている相手はあっさりと騙されてくれた。

　例え旭陽が本気でもう止めてくれと泣いたって、こんな状態で手放してやれるわけないのにな。