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番外編
5【※挿絵あり】
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「ッ、き……、ら……ッ」
「……あさひ?」
唾液と白濁で汚れた唇が、何かを話そうと開閉している。
髪に触れられない代わりに、震えている足へ太腿を擦り寄せた。
ひぅと喉が高い音を漏らして、蕩けていた目元を険しくした。
「そ、ッ……な、ら……」
「……なに?」
やっと怒っていた理由を話してくれる気になったのだと理解して、乱れた呼吸を急いで整える。
手で撫でられない分、声音を可能な限り柔らかくした。
ぶるぶると震えている唇に鋭い犬歯が強く食い込むのが見える。
収まったように見えていたけど、怒りがぶり返してきたんだろうか。
唇を傷付けそうな犬歯を止めるべく口を開くが、旭陽のほうが早かった。
「ぁ……んで、きの、……ッは、っンぁッ……っそ……し、なか――った、ッ!」
肩口を、力が入らないらしい指が引っ掻いてくる。
きのう。
鸚鵡返しに呟けば、耳に鈍い痛みが走った。
驚いて肩が跳ねる。
硬い額が擦り付けられて、肩にも鋭い犬歯が食い込んできた。
咎められている気も、甘えられている心地もする。
「き、の、……ッは……っぃ、……ッぁか、った……ッ」
は、は、と浅い呼吸の下から辿々しい声が絞り出される。
昨日。いなかった。
――居なかった? 部屋にか?
昨晩、別の部屋で寝たことを咎められているとやっと理解が及んだ。
正確には、一晩中うろうろしてて寝てはないんだけどな。
旭陽が気になって眠るどころじゃなかった。
本当は俺が看病したかった。
全くこれっぽっちも威張れることではないが、俺が旭陽を抱き潰してしまうのは毎晩のことだ。
特に最初のうちは、何度も体調を崩させてしまった。
それに勇者の手から奪い返してきた時は、瀕死の男へ医師も誰も近付かせずに俺だけが触れて看病した。
本来なら、昨日だって俺が看病すべきだった。
でも、旭陽を見ていたらまた襲ってしまうと自覚したから。
「高熱出してるお前を、襲うわけにはいかないだろ」
「ぁ……ん゛で、だよ……」
そもそも俺が無理をさせた所為だから、仕方ないとは言えない。
でも好きで旭陽の側から離れたとは思われたくなくて、それだけは言っておこうと思った。
だと言うのに、肩から離れた顔が心底不思議そうに眉を寄せて尋ねてくる。
「何でって……」
「い……つ、やめろ、って……言、った……」
言……われては、ないけど。
でも、駄目だろ。自分の所為で寝込んだ相手を更に犯すとか。
口籠もる俺に、息を切らしながらも男が微かに唇を歪めた。
「は、ら……ッん、なか、」
「……なか?」
「あきら、で、満たされ、んの……わるく、ねえ」
首筋に濡れた頬が擦り付けられる。
「おま、えがッ……ぃね、……えと、さみ……ぃ、から、……治り、おそく、なる……」
かりり、と首の薄い皮膚を甘く齧られた。
噛まれた痛みはない。
でも、胸の奥からは急速に熱の塊じみた疼きが噴き出してくる。
無意識に歯を食い縛っていた。
衝動を堪える俺の首筋に、荒い呼吸を繰り返す唇が吸い付いてくる。
「お、れ……より、んぁッ……っゆ……せん、すっこと、とか……ッァ、ねえ、だろ……っ」
「……あ、さひ、」
震えが収まらない腕が、首筋に絡み付いてきた。
「な……のため、に、臣下が、いる……ッ、も、少し……うまく、使え、ッ」
「……ごめん」
「さわん、なら……っは、キスの、ひとつくら、い、しろ、!」
「うん……ごめんな」
そうか。止まれなくなるからって、もう何日も額や頬以外へのキスすらしてなかった。
ちかちかと視界の端が瞬く中、現実逃避のように冷静な部分が呟く。
それも、顔を上げた旭陽の表情を見た瞬間に吹き飛んでいた。
「お、れにッ……ぁ、きらが、ッ、足ん、ね、って……おもわせんじゃ、ねえよ……!」
涙で煌く黄金が、俺を映してくしゃりと歪む。
喉が大きく痙攣した。
側に居なかったことを咎められている。
もしかすると、その前の一方的にイカせ続けたことも。
無茶したことじゃなくって。
何日も抱かず、いつもみたいなキスも出来なかったことを、怒られている。
俺が足りなかった、って。
……何だ、それ。
なんだそれ、なんだそれ!!
誘ってんのか!? 煽ってんのか!?
昨日あれだけ熱出してたくせに!
ここまで煽られたら、お前の反応がなくなるまで抱いても止まれなくなるぞ!
必死で衝動を抑えていると、甘い声で囁くように名前を呼ばれた。
「ぁ、きら、ぁ……っ、足ん、ね……ぇ……っ」
おまえが足りない、と黄金が訴えてくる。
拘束に対する許しであることは、茹だった頭でも理解出来た。
「ッ!」
碌に動かない頭で、握り締めすぎて感覚が薄くなってきていた腕を引く。
硬い音を立てて砕けた手枷の存在も、もう頭には残っていない。
震える腰と背中にそれぞれ腕を巻き付け、旭陽を抱き締めたまま上半身を起こす。
「ヒッ……!? ッィ゛、っぁ――ッッあ゛あアアあ゛あ゛ーーッ!!」
驚いたように跳ね上がった体が、すぐに震えを大きくしていく。
ぶるぶると全身の痙攣が大きくなっていき、咆哮じみた悲鳴が迸った。
激しく揺れる褐色を腕の中に閉じ込め、腰を掴んで強引に体を浮かせる。
「ッひィ゛ううっ!」
結腸から抜けていく感覚に、硬直した体がぶしゃぶしゃと透明の体液を噴き上げた。
持ち上げていた腰から手を離すと同時に、俺からも腰を突き上げる。
「っひぐぅ゛ッう゛アアア゛ーーーッッ!!」
逞しい体が飛び上がるように仰け反って、強く尾を引く後虐の絶頂に陥った。
「ッヒ、ぁ゛ッ、ぁ゛っ――ッぁ、ぃ゛……ッ!」
俺の膝の上でガクンガクンと激しく痙攣している男が、すっかり焦点を失ってぶれている目を微かに揺らした。
唇がはくりと空ぶり、真っ赤な舌先が微かに顔を覗かせる。
もう完全に舌が回っていない。
それでもあきらと名前を呼ばれたのは分かった。
何度気絶されてもどれだけ泣きじゃくられても、これだけ煽られたらもう止まれない。
多分、旭陽の反応が消えても飲み込ませ続けてしまう。
今からどんな酷い無体を受けることになるか理解しているだろうに、旭陽はまだ俺を求めている。
「ッン゛んぅう゛……ッ!」
自由に体を上下させられる度に揺れている射干玉へ、加減のできない力で掌を押し当てた。
噛み付くように口を塞いだだけでガクンと跳ね、色を失った精液を撒き散らしている。
殆ど息はできていないはずの唇を深く塞ぎ、口腔を容赦なく掻き回す。
ぼたぼたと涙と精や潮を落としながら、薄い唇が強張りをなくした。
黄金がとろりと蕩け、塞いでいる唇が笑みを浮かべる。
そっか。
どれだけイキ狂わされてつらくても、俺に抱かれるほうがいいのか。
俺が旭陽の側に居られないのは寂しくて堪らなかったように、旭陽も俺が足りないって感じてくれたんだ。
それを嫌なことだと捉えて、怒ってくれたんだ。
視界が歪むのを感じながら、背中を抱く腕に力を籠める。
旭陽の腕も力を増して、俺の首筋を掻き抱いてきた。
可愛い。好き。旭陽、好き。
もう、次からは離れたりしないから。
心に誓って、ぶるぶると震えている舌へ牙を突き立てた。
――――――
【こちらのイラストは、つむぎみかさんが描いてくださいました】
※今回のお話は、FAお礼文として書かせて頂きました! ありがとうございました!
「……あさひ?」
唾液と白濁で汚れた唇が、何かを話そうと開閉している。
髪に触れられない代わりに、震えている足へ太腿を擦り寄せた。
ひぅと喉が高い音を漏らして、蕩けていた目元を険しくした。
「そ、ッ……な、ら……」
「……なに?」
やっと怒っていた理由を話してくれる気になったのだと理解して、乱れた呼吸を急いで整える。
手で撫でられない分、声音を可能な限り柔らかくした。
ぶるぶると震えている唇に鋭い犬歯が強く食い込むのが見える。
収まったように見えていたけど、怒りがぶり返してきたんだろうか。
唇を傷付けそうな犬歯を止めるべく口を開くが、旭陽のほうが早かった。
「ぁ……んで、きの、……ッは、っンぁッ……っそ……し、なか――った、ッ!」
肩口を、力が入らないらしい指が引っ掻いてくる。
きのう。
鸚鵡返しに呟けば、耳に鈍い痛みが走った。
驚いて肩が跳ねる。
硬い額が擦り付けられて、肩にも鋭い犬歯が食い込んできた。
咎められている気も、甘えられている心地もする。
「き、の、……ッは……っぃ、……ッぁか、った……ッ」
は、は、と浅い呼吸の下から辿々しい声が絞り出される。
昨日。いなかった。
――居なかった? 部屋にか?
昨晩、別の部屋で寝たことを咎められているとやっと理解が及んだ。
正確には、一晩中うろうろしてて寝てはないんだけどな。
旭陽が気になって眠るどころじゃなかった。
本当は俺が看病したかった。
全くこれっぽっちも威張れることではないが、俺が旭陽を抱き潰してしまうのは毎晩のことだ。
特に最初のうちは、何度も体調を崩させてしまった。
それに勇者の手から奪い返してきた時は、瀕死の男へ医師も誰も近付かせずに俺だけが触れて看病した。
本来なら、昨日だって俺が看病すべきだった。
でも、旭陽を見ていたらまた襲ってしまうと自覚したから。
「高熱出してるお前を、襲うわけにはいかないだろ」
「ぁ……ん゛で、だよ……」
そもそも俺が無理をさせた所為だから、仕方ないとは言えない。
でも好きで旭陽の側から離れたとは思われたくなくて、それだけは言っておこうと思った。
だと言うのに、肩から離れた顔が心底不思議そうに眉を寄せて尋ねてくる。
「何でって……」
「い……つ、やめろ、って……言、った……」
言……われては、ないけど。
でも、駄目だろ。自分の所為で寝込んだ相手を更に犯すとか。
口籠もる俺に、息を切らしながらも男が微かに唇を歪めた。
「は、ら……ッん、なか、」
「……なか?」
「あきら、で、満たされ、んの……わるく、ねえ」
首筋に濡れた頬が擦り付けられる。
「おま、えがッ……ぃね、……えと、さみ……ぃ、から、……治り、おそく、なる……」
かりり、と首の薄い皮膚を甘く齧られた。
噛まれた痛みはない。
でも、胸の奥からは急速に熱の塊じみた疼きが噴き出してくる。
無意識に歯を食い縛っていた。
衝動を堪える俺の首筋に、荒い呼吸を繰り返す唇が吸い付いてくる。
「お、れ……より、んぁッ……っゆ……せん、すっこと、とか……ッァ、ねえ、だろ……っ」
「……あ、さひ、」
震えが収まらない腕が、首筋に絡み付いてきた。
「な……のため、に、臣下が、いる……ッ、も、少し……うまく、使え、ッ」
「……ごめん」
「さわん、なら……っは、キスの、ひとつくら、い、しろ、!」
「うん……ごめんな」
そうか。止まれなくなるからって、もう何日も額や頬以外へのキスすらしてなかった。
ちかちかと視界の端が瞬く中、現実逃避のように冷静な部分が呟く。
それも、顔を上げた旭陽の表情を見た瞬間に吹き飛んでいた。
「お、れにッ……ぁ、きらが、ッ、足ん、ね、って……おもわせんじゃ、ねえよ……!」
涙で煌く黄金が、俺を映してくしゃりと歪む。
喉が大きく痙攣した。
側に居なかったことを咎められている。
もしかすると、その前の一方的にイカせ続けたことも。
無茶したことじゃなくって。
何日も抱かず、いつもみたいなキスも出来なかったことを、怒られている。
俺が足りなかった、って。
……何だ、それ。
なんだそれ、なんだそれ!!
誘ってんのか!? 煽ってんのか!?
昨日あれだけ熱出してたくせに!
ここまで煽られたら、お前の反応がなくなるまで抱いても止まれなくなるぞ!
必死で衝動を抑えていると、甘い声で囁くように名前を呼ばれた。
「ぁ、きら、ぁ……っ、足ん、ね……ぇ……っ」
おまえが足りない、と黄金が訴えてくる。
拘束に対する許しであることは、茹だった頭でも理解出来た。
「ッ!」
碌に動かない頭で、握り締めすぎて感覚が薄くなってきていた腕を引く。
硬い音を立てて砕けた手枷の存在も、もう頭には残っていない。
震える腰と背中にそれぞれ腕を巻き付け、旭陽を抱き締めたまま上半身を起こす。
「ヒッ……!? ッィ゛、っぁ――ッッあ゛あアアあ゛あ゛ーーッ!!」
驚いたように跳ね上がった体が、すぐに震えを大きくしていく。
ぶるぶると全身の痙攣が大きくなっていき、咆哮じみた悲鳴が迸った。
激しく揺れる褐色を腕の中に閉じ込め、腰を掴んで強引に体を浮かせる。
「ッひィ゛ううっ!」
結腸から抜けていく感覚に、硬直した体がぶしゃぶしゃと透明の体液を噴き上げた。
持ち上げていた腰から手を離すと同時に、俺からも腰を突き上げる。
「っひぐぅ゛ッう゛アアア゛ーーーッッ!!」
逞しい体が飛び上がるように仰け反って、強く尾を引く後虐の絶頂に陥った。
「ッヒ、ぁ゛ッ、ぁ゛っ――ッぁ、ぃ゛……ッ!」
俺の膝の上でガクンガクンと激しく痙攣している男が、すっかり焦点を失ってぶれている目を微かに揺らした。
唇がはくりと空ぶり、真っ赤な舌先が微かに顔を覗かせる。
もう完全に舌が回っていない。
それでもあきらと名前を呼ばれたのは分かった。
何度気絶されてもどれだけ泣きじゃくられても、これだけ煽られたらもう止まれない。
多分、旭陽の反応が消えても飲み込ませ続けてしまう。
今からどんな酷い無体を受けることになるか理解しているだろうに、旭陽はまだ俺を求めている。
「ッン゛んぅう゛……ッ!」
自由に体を上下させられる度に揺れている射干玉へ、加減のできない力で掌を押し当てた。
噛み付くように口を塞いだだけでガクンと跳ね、色を失った精液を撒き散らしている。
殆ど息はできていないはずの唇を深く塞ぎ、口腔を容赦なく掻き回す。
ぼたぼたと涙と精や潮を落としながら、薄い唇が強張りをなくした。
黄金がとろりと蕩け、塞いでいる唇が笑みを浮かべる。
そっか。
どれだけイキ狂わされてつらくても、俺に抱かれるほうがいいのか。
俺が旭陽の側に居られないのは寂しくて堪らなかったように、旭陽も俺が足りないって感じてくれたんだ。
それを嫌なことだと捉えて、怒ってくれたんだ。
視界が歪むのを感じながら、背中を抱く腕に力を籠める。
旭陽の腕も力を増して、俺の首筋を掻き抱いてきた。
可愛い。好き。旭陽、好き。
もう、次からは離れたりしないから。
心に誓って、ぶるぶると震えている舌へ牙を突き立てた。
――――――
【こちらのイラストは、つむぎみかさんが描いてくださいました】
※今回のお話は、FAお礼文として書かせて頂きました! ありがとうございました!
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