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生まれ変わったら悪役令息でした。つーか王子?
しかも、将来的に悪役令嬢が婚約者に「お前みたいな糞女には、下種野郎がお似合いだ」とばかり嫁ぎ先にされる。
マジかよ。つらたん死ねる。
姉さん(前世)の好きな乙女ゲームってやつだ。タイトルは忘れたけど、スチルではまさに西洋モブおじさんみたいなやつだった。顔ははっきり映っていなかったけれど、きったないオッサンだった。
浅黒い肌は腹なんか三段腹、太った芋虫みたいなぶっとい指、脂肪がぶよぶよで、髪はギトギトしていそうなぼさぼさ縮れ毛。厭らしい分厚い唇に丸い鼻。
神様ひどい。俺が何をしたっていうんだ。
俺の母親は異国の小国――あったかい気候の海に浮かぶ小さな島々から輿入れした。だが、王妃であっても正妃ではなく側妃だった。
こういっちゃなんだが、肉感的な美女でお国柄もあり露出の多い民族衣装だった。出身国自体も香辛料と真珠、そして海産物の輸出が盛んな国だ。そういったものを融通してもらうために結婚したんだろう。
だが、裕福な小国のお姫様だった俺の母親は糞我儘だった。娶られたばかりの頃は大層美女であった。なまじ、一度国王陛下の寵愛なんざ得ちまったものだからそりゃあ贅沢を覚えた。悪い権力の使い方も。
物心ついたころ、既に母親はつわものどもが夢の跡といわんばかりに、美女だっただろう残骸だった。圧倒的にお肉だった。肉感的ではない。物心つく頃には既にボンレスハムだった。当然、陛下の寵愛なんざもうどっかに吹き飛んでいる。
自分の中に潜むDEBU遺伝子に恐れおののき、俺は断固として体重を増やし過ぎないようにした。
剣術、体術、護身術、魔法の訓練、地理学、歴史学、経済学、帝王学と体と頭を使うことを積極的に行い、日々出される甘いお菓子の誘惑と格闘しながらカロリーを消費しようと奮闘した。
そんなこんなで生活していると、俺は甘いお菓子よりも野菜と果実を好む草食男子になっていた。肉は好きだけど淡白なものを好んだ。
俺の母親は第四妃。三番目の側室だ。
一番目と二番目の王妃様はもともと隣国の大国のお姫様と、国内の有数の大貴族のご令嬢だった。当然、王宮の王位継承争いはこの二つが一番苛烈だ。第三妃は子宝に恵まれなかったため、今は後継争いから外れている。
俺は一応王位継承権もってるんだけど、側妃の子供だしその妃もそれほど強力な後ろ盾ではない。
しょっちゅう王宮や庭園でお妃様方がバチバチやらかしているのを見て、俺は「女ってこぇええ」と青ざめながら猫のように木に登って逃げた。
護衛のルッツは「殿下ズルい」と、見たくもない修羅場に巻き込まれる度に、俺に対して口を尖らせる。
だが、俺は悪目立ちしたくなかった。
この国では珍しい、褐色の肌に漆黒の髪、そして目立つ金色の瞳。母の国では王族らしい見てくれらしいけど、この国では異質だ。明らかに異国の匂いを感じさせる俺は、好まれないだろう。美形遺伝子は仕事をしていて、幼い頃はぱっちりおめめの可愛らしい子供だった。
だが、人とは異端なものを排斥しようとする。当然他の王妃たちの受けは悪い。この蛮族の小僧が! って視線をバシバシ感じる。
兄上たちはそこそこに可愛がってくれる。
何故って?
馬鹿っぽく振舞ってるからだよ!!
菓子を手づかみでバリバリ食べてるからな! クッキーやクラッカーどころか、ケーキやプリンも!
好きでこんな野生児をしているわけではなく、自衛の一環だ。
なんせ最初のお茶会で俺は一番目の王妃様に一服盛られた。血反吐が出るんじゃないかって勢いでゲロをはいてのたうち回った。
王様になれなくていいから手に職つけたくていろいろ勉強したのがマズかったのだ。
下手に剣術とか魔法で目立ったら、兵士として追い出されそうだし。普通に軍人とか騎士とか、戦う系は草食男子には無理っすわ。
うん、悪役下種王子にもなりたくないし、文官希望でいこうとしたら……
幼いながらに聡明かつ利発な美童というのは、父王の関心を引いてしまったみたいだ……
そしたら、それをよく思わない他の妃たちによりさっそく殺意が非常に分かりやすい形で現れたのだ。
こりゃやべぇ、と思わざるを得ない。
前述通り俺の外見はこの国ではウケが悪い。臣籍に婿としていくにも、名家は嫌がりそうだ。だが、死ぬよりはマシ。
仕方なく、馬鹿王子路線でいくことにした。
ルッツは「俺は殿下についていきますよー」とへらへらしてた。お前、第一王子か第二王子のほうが絶対甘い汁すすれるつーのに。
「いいんスよ。俺はサフィシギル様くらい緩い方がやりやすいっす」
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