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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
まずは一人
しおりを挟む私は糞女神に啖呵を切りながら、殿下に身を任せた。目線は糞女神を見据えたまま。
「貴女のような糞女神が、人間であるアレクに惚れた理由は理解できますわ。自分を犠牲にすることを躊躇わないほどの深い愛、いえ、重い重い愛を、愛の女神であった貴女が欲しないわけありませんものね。さぞかし、悔しい思いで悶えたでしょうね。対象が神ではなく人間だったなんて。……正攻法では手に入らないから、壊してしまおうと考え行動したけど、それすらも叶わないなんて、本当に可哀想ですね。心から同情いたしますわ、元女神様」
超上から目線。台詞だけ聞いたら、まず間違いなく私が悪者ね。少なくとも、虐げられていた人間とは思わないわね。
それにしても、糞女神の顔ったらないわ。十人中十人が後退り逃げ出す容貌ね。どんなに可愛くても、憤怒を露わにしたらいけないわ。まぁそうでなくても、ここまで内面が出るのは……ちょっと、頭が緩くない? 緩いから、下位にまで落ちたのよね。
「……よ、よくも、我のことを……人間風情が!!」
ソフィア感なくなったわね。糞女神は怒声を撒き散らす。
同時に四方八方から襲って来た、無数の黒い神力の刃。
いくら殿下でも、この攻撃全てを防ぎきることはできない。そもそも、殿下は一歩も動かなかった。
「諦めたのか」と、糞女神が嗤う。
想像しているのね、私たち全員が串刺しになって、血まみれの姿で床に倒れてるのを。おあいにくさま。そんな無様な姿を晒すわけないでしょ。どこまで、自分が偉いと思ってるのよ。
「我を馬鹿にした罪は重い!! 精々、苦しむがいい!! アリエラ!!」
「馬鹿は貴女の方よ」
私はニヤリと嗤う。すると、
「我は眼中にないか。脳みそが足りない奴だ」
神獣様が呆れながら吐き捨てる。目の前にいるのにね。
「脳みそがないから、欲望に忠実なんだろ」
殿下は不快感と馬鹿にしきった蔑みの目で、糞女神を見ている。
私と神獣様の結界が、そう容易くに破られるはずないでしょ。これぐらいの攻撃なら、簡単に対処できるわよ。もしかして、これが限界とは言わないでよ。
「今度は私たちの番ね。でも、その前にーー」
死角から襲ってきた司祭のナイフを受け止める。素手で。手に魔力を集めているから、通常の盾よりも強度がある。
「なっ!?」
司祭は驚愕の声を上げ、距離をとろうと後ろに飛び下がる。でも、足が床に付く前に、壁に激突した。そのまま崩れ落ちる。
「物理攻撃は有効だと思ったのかしら。甘いわね。……貴方、暗殺を生業にしている方ね」
その身のこなしと、死角からの攻撃。ナイフに毒を染み込ませてる点からみて、そうとしか思えないわ。
「…………」
司祭は答えない。答えられないんだけどね。肋骨数本折れたと思うから。いくら優秀でもすぐには動けない。それぐらいのダメージは叩き込んだ。
「まさか、司祭が暗殺者ね……てっきり、糞女神の眷族だと思っていましたわ」
私的には、蛇だろうが人間だろうが、どちらでも構わないけどね。敵には違いないから。ただ、人間の方が意思疎通が出来るから、じっくりと話をすることはできるわね。
「インディー様、彼の捕縛お願いできますか? これで縛ってください。絶対に解けないので」
私は対魔獣用につかう罠のロープをインディー様に手渡した。ハンターには必需品だからね。
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