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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です
怒られました(後半、殿下視点)
しおりを挟む目を覚めれば、広がるのは真っ白な世界。
モフモフに顔を埋める幸せは、どんな高級店の美味しい食事やデザートよりも、遥かに上だわ。
モフモフこそ正義。
あ~~全身で味わいたい。服、脱いじゃおうかな。うん、脱いじゃおう。
「ハレンチじゃ!!」
「駄目だっ!!」
頭に衝撃が走った。
「痛っ!! ……ん? あれ? 魔王様、おはようございます。神獣様もおはようございます」
朝の挨拶は大事だからね。ちゃんとしないと。うーー頭、痛~~もしかして、寝相が悪くてベッドから落ちたの? だったら、恥ずかしい。
「もしかして、寝ぼけておったのか!? 心配して来てみれば……いつも、こうなのか? 神獣」
悶絶している私の横で、私抜きで会話が始まる。
「今日はまだマシな方だ」
ベッドから落ちたのがマシな方!? なら、いつもはどうなの!?
「あれでか!?」
私も驚くわ。
「神獣……すまぬ。神獣ほど、我慢強く紳士な者はおらぬ。悪かったのう」
ん? どういうこと?
「わかってくれたら、それでいい」
神獣様の声が凄く疲れてるような気がするんだけど、どうして?
「…………神獣様が疲れてしまうような、酷い寝相なのですか?」
「酷い。酷すぎる。ハレンチじゃ」
「ハレンチですか……?」
「神獣の前で服を脱ぎだしおって。吃驚したわ」
えっ!? 私が服を脱ごうとしたの……神獣様の前で…………えーーーー!!
「これまで、一度も脱いでませんよね!!」
お願いだから、脱いでないって言って!!
「脱ぎ掛けてはいたが、脱いではおらぬ。代わりに、舐めるように強要したがな」
その言葉を聞いて、心底ホッとしたよ。
「よかった~~こんな貧相な体、見られなくてよかった」
そう答えたら、拳が飛んできた。
「この、馬鹿娘が!!」
「痛っ!!」
魔王様に殴られた。さっきまで痛かった場所に、また同じ痛みが。じゃあさっきの痛みって。神獣様は大きなため息を吐いている。
「マリエール、お前には慎みと羞恥という言葉が欠如しておるようじゃ」
酷い言われようね。確かに、魔王様の言う通りですけど……
「……あまりにも、魅力的過ぎる神獣様が悪いのですわ。そのフワフワな体毛、心地良い体温、そして、私をいつも包み込んでくれる優しさ、どれも魅力的ですわ。だからつい、無意識に……」
「本当に、マリエール、お前は馬鹿よのう」
酷い!! そんなに、馬鹿馬鹿言わなくてもいいじゃないですか。
「馬鹿を馬鹿と言って何が悪いのじゃ。まぁいずれ、その馬鹿さに気付くとよいのう」
とても、残念な子を見る目で見られてしまったよ。意味わかんない。
毎日の習慣になってしまった。
どんなに疲れても、寝る前に、眠るマリエールの顔を見に行くのが。
ある日を境に、マリエールの気配が忽然と消えた。
マリエールの新しい家の周囲に張り巡らしていた魔法具にも、マリエールの姿はない。映るのは、慌てる護衛騎士の二人と、ショックを受け崩れるグリード公爵の姿。
姿を消した理由は自ずとわかる。
グリード公爵がマリエールを訪ねたからだ。
グリード公爵がマリエールを大事にしているのは理解している、だが、接し方を間違えてしまった。今さら、それを訂正しようとしても無理なことぐらい、いい加減に察しろよ。
「いらんことをしやがって。マジで潰してやろうか……」
駄目だな。マリエールの前だとつい本音が出てしまう。
「もし、俺がそうしたら、マリエールは悲しむな、あれでも一応、義父だし。……今は自由にしててもいいよ、マリエール。でも、体が治ったら、離してやるものか。君が、笑うのも、泣くのも、怒るのも、俺だけの前だ。例え、神獣だろうが、マリエールの隣に立つのは許さない。いいか、マリエール、お前の全ては俺だけのものだ。愛してるよ、マリエール」
そして俺は、今日もマリエールに愛を囁やき続ける。
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