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第六章 友人からお使いを頼まれました
今までの人生の中で一番幸せです
しおりを挟む「マリエールって、色んなこと知ってて偉いな」
あいも変わらず、ライさんは頭を撫でながら褒めてくれる。
「私が知ってるのは、本で書かれてあることだけですよ。本当の知識ではありません。だから、楽しい。初めてのものがいっぱいあって」
それは、ライさんやジョルジュさん、フリードさんも、もちろん含まれてる。
実はね、私、エルフに憧れてたんだ。
魔族図鑑で読んだ時からね。
とても長命で、聡明で博識、ましてや容姿端麗。魔力も有し、別名森の民と呼ばれている。神秘的な生物。そう記載されてたわね。憧れる要素、てんこ盛りでしょ。
だけど実像を見て、ガタガタと崩れさったけどね。あっ、フリードさんは別だよ、理想に近いかな。
人族でないものは、全部魔族。単純的な考えよね。魔国に来て特にそう感じた。だって、エルフ族はエルフ族で魔族じゃないもの。その点でいえば、ドワーフ族も獣人族もそうらしい。
いかに、自分の世界が狭いか知ったわ。
でもね、それ抜きにしても、本はいいわよ。
仮にも公爵家だったからね、図書室の本はかなりの数が揃えられていた。その価値を知らずに、宝石を揃え、自分の価値をアピールするのが目的だったとしてもね。
本には大まかにニ種類があって、知識を得るためのものと娯楽的面が多いもの。
前者は、魔術書とか、生きて行く上で必要な経済や情勢に歴史を記した書物。法律関係も含むわね。後、薬草関係もあるかな。調理法とか、すっごく役に立ったわ。錬金術も。アイテム作製にね。
それとは別に、私が唯一、現実から逃避できるものが娯楽書だった。魔族図鑑もそう。実際に、どんな生物なんだろうとか……もし、会ったら、どうしようとか、そんなことばかり考えてた。ハンターになるつもりだったから特にそうかな。とはいっても、魔族が人間の敵である以上、平和なやり取りなんてできないんだと思ってた。昔の記憶もあるし。
でも、現実は違ったわ。
人間の中にも悪い人間がいて、それは他種族も同じで。馬鹿な奴はどの種族にもいることを知った。考えてみれば、思考能力がある生き物だもの、当たり前だよね。
子供を見れば、可愛がりたくなるのも一緒。
「楽しいのか。良かったな、マリエール」
ジョルジュさんが微笑む。私も微笑み返す。
「マリエールさんは、本が好きなんですね。なら、視察を終えたら、私の所蔵庫に案内しますよ」
「ほんとに!?」
フリードさんの服を掴み興奮する。鼻息荒く訊くと、吃驚しながらも微笑んでくれた。
視察って名のハイキングは順調に進んだよ。
精霊と妖精に護られてるおかげで、魔獣は現れないし、出るのは野生動物ばかり。
晩ご飯を食べて後片付けもすんで、フリードさんが淹れてくれたミルクと蜂蜜入りの紅茶を飲んでいると、神獣様が訊いてきた。
「マリエールは今、幸せか?」
真面目な声だった。神獣様のお腹を背もたれにしていた私は、体を起こし神獣様を見る。
「幸せです。神獣様には感謝しかありません。魔国に連れて来てくれて、とても幸せです。今までの人生の中で一番に。私が私でいられるし……お兄様もできましたし。それに、神獣様をモフモフできますから。とても幸せです」
私はコップを置き、神獣様の首に腕を回して抱き付いた。神獣様がそんなことを訊いてくることに、少し不安を感じながら。
☆☆☆
最後まで読んで頂きありがとうございます。
実は短編予定の作品を投稿しています。
タイトルは【言いたいことはそれだけですか。では始めましょう】です。
口が悪い勝ち気なヒロインが活躍してます。
これからも頑張って書いていきますので、応援宜しくお願い致します。
応援ありがとうございます!
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