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26 旅行計画進行中
しおりを挟むテーマパーク巡り、第一弾。
私たち四人が一応ホラー系OKなので、9月は大阪でホラー巡りをすることに決定しました。パチパチ。
ホラーって流行ってるの? って思うくらい、色んなイベントが開催されてるみたい。そこのところは、とてもやる気になった未歩ちゃんと日向さんが細かく調べ決めている。VRとか没入型とかね。
ちゃんと、山中さんの都合を訊いたのかな?
山中さん以外は仕事をしていないから、発作が被らなければ、いつでも、何日でもいいけど、山中さんはそうはいかないでしょ。
訊きたいけど……ちょっと、口が出せない空気なんだよね。まぁ、二人ともしっかりしてるからたぶん大丈夫。片方は大人だし。
そろりと離れた私は、窓ガラスに真っ黒な肉球を押し付けている、柴犬の写真をパシャパシャと撮る。
「……何やってるんですか? 桜井さん」
呆れた声が頭上からした。私を桜井さんって呼ぶのは一人しかいない。
「柴犬の肉球が可愛くて撮ってました。山中さんは休憩ですか?」
素直にそう答えたら、尚更呆れられた。
「ほんと、好きですね……少し、日向の様子が気になって。それに、旅行の件も……」
「それなら、大丈夫ですよ。二人とも、殺気立って計画立ててますから」
苦笑しながら答える。
「言葉おかしくありませんか?」
「なら、あの中に入ります?」
私は遠慮しますが。
「…………止めときます」
若干、引き気味で、山中さんがポツリと呟いたからね。ちゃんと伝わってよかったよ。
「山中さん、窓ガラス開けてもいいですか?」
「犬が入らなければいいですよ」
院内は動物禁止だからね。
一人が二人になったせいか、柴犬さんの興奮度MAX状態。う~ん。開けた途端に入って来そうな勢いよね。でも、私と山中さんがバリケードになったら入って来れないよね。そうと決まれば、
「山中さん、私の隣に、もうちょっと引っ付いてください」
戸惑う山中さんの腕を掴み引き寄せてから、私は窓ガラスに手を掛けた。
すると、柴犬さんは窓から離れ、お利口にお座りした。ハッハッと舌を出して、尻尾は左右に振っている。
「うっわ~超可愛い!! なに、この生きモノ!!」
心の声が口からポロリ。私は全くそれに気付かず、写真を連打。その後は窓を開け、柴犬さんをモフりたおしました。完全に山中さんが隣にいるの忘れてましたね。
お腹を見せてくれた柴犬さんのお腹にダイブしたい葛藤と戦っていたら、側でコトンと音がした。見ると、山中さんが皿にお水をいれて持って来てくれたみたい。
「暑いからね」
柴犬さんにも優しい、山中さん。ほんと、これでモテないって嘘でしょ。
私はお腹にダイブすることを諦め、柴犬さんを開放した。柴犬さんは起き上がり、水を勢いよく飲み始めた。喉乾いてたのね。我慢させちゃった、少し反省。
テラス席の椅子に座りながら、私は柴犬さんを愛でまくる。
すると今度は、私にもアイスコーヒーを持って来てくれた。自分の分も一緒に。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
そのまま、山中さんは私の隣に腰を下ろした。
「ほんと、動物好きですね。聞きましたよ、餌やり手伝ってるんですね」
別に隠してないけど、山中さんにそう言われると照れるわね。
「ええ。すっごく楽しいですよ。山中さんも一緒にどうです?」
「楽しそうですね、是非」
まさか、OKが出るとは思わなかったよ。
「旅行の件、俺たちに任せっきりで、いいご身分だな、お二人さんよ」
とても不機嫌そうな声が降ってきた。
「そうだよ。旅行は、私たち全員で行くんだから、ちゃんと希望言ってよね」
珍しく、未歩ちゃんもプリプリモード。
「ごめん、ごめん。今から行くよ」
「悪かった」
私と山中さんは素直に謝る。
私たちは立ち上がると、室内に戻る。勿論、柴犬さんの頭を撫でてから。
「桜ちゃん、警備員と友だち、どっちがいい?」
席に戻る途中、早速、未歩ちゃんが訊いてきた。
警備員? 友だち? あっ、閉園後に開催される肝試しのことね。
「時間とお金に余裕があるなら、両方体験したらいいんじゃない」
悔いがないようにね。
「両方か……うん、それいいね」
「ああ、いいな。違う恐怖が味わえそうだ」
「なら、二回目の昼は室内動物園に行きたい。桜ちゃんも見たいよね?」
未歩ちゃんが訊いてきた。
「いいわね、見たい。特にカピバラ」
「桜ちゃん、カピバラ好きなの?」
「うん、好き。あの無表情が堪らないのよね」
「あ~なんとなくわかる」
そんな話をしながら、私たち四人は旅行の計画を詰めるために席に戻った。
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