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新しい生活
仲間だろう?
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王妃殿下の執務室まで急ぐ。
ハァ、ハァ…。急ぎで階段を登る私は息切れしている。
こんなみっともない姿は誰にも見せられないわね。でも今は急がないといけない。
しかし、執務室のドアの前に来た私はすぐに王妃殿下が帰られたことに気づいてしまった。
執務室の前に立っているはずの王妃殿下の護衛騎士の姿がなかったからだ。
確認のために執務室のドアを開けようとするが、ドアは施錠されている。施錠されているということは、ヘミングウェイ伯爵夫人も帰られたということになる。
間に合わなかった……
どうしよう…。頼りにしようとしていた王妃殿下はもういないし、私の個人的な事情のために、急ぎだと言って呼び戻すなんてことも出来ない。
今すぐに呼び出せて頼りになりそうな人はここにはいないし。事情が事情なだけに、よく分からない人に頼むことも出来ない。
やはり危険だけど一人で行くしかないのかしら…。
「……っ!…うっ。」
涙が溢れ出してくる。せっかくのチャンスなのに。
もしかしたら、あの男と離縁が出来るかもしれないのに…。
誰もいない執務室の前で人知れず涙を流していると、こちらに歩いてくる足音が聞こえてくることに気づいた。一人ではない、複数の足音だ。
こんな時間に誰かしら?見回りの近衛騎士…?
どちらにしてもこんな顔を見られるわけにはいかないから、涙を拭いて立ち去るのが無難ね。
サッと涙を拭いて、下を向いたままその場を離れようとする私に、足音の人物からすれ違いざまに呼び止められる声がした。
「シャノン嬢…?」
この声は!
無意識に顔を上げて声の主人を見つめる。
「やはりシャノン嬢…、ではなくバーネット伯爵夫人だったな。
久しぶりだな。」
「アンブリッジ公爵様…。」
「君は今、王妃殿下の側近として働いているんだって?優秀な君は私の自慢の後輩だよ。」
久しぶりに会ったアンブリッジ公爵様は、学生の頃と変わらずに優しい声を掛けてくれる。
「とんでもないことですわ。私こそ、アンブリッジ公爵様のご活躍のお話を沢山耳にしております。
イング国より無事にお戻りになられたのですね。」
「ああ。先程帰国して、国王陛下と王太子殿下に挨拶を済ませて来たところだ。今から王妃殿下に挨拶しにいくつもりだったのだが、王妃殿下はまだ執務室にいるか?」
「王妃殿下はもう帰られたようで、執務室にはおりませんわ。」
「そうか。ではまた出直すことにしよう。
で…、君はなぜそのような顔をしているのだ?
完璧な淑女と言われていた君が、そんなに目を赤くしなければならないような、何か大変なことでもあったのか?」
泣いていたのがバレている?
「目にゴミでも入ってしまったようですわ。
もう大丈夫です。」
「君が大丈夫と言ったとしても、執務室の前で涙を流している姿を見た者は、王妃殿下やヘミングウェイ伯爵夫人に虐められて泣いていたと思うだろうな…。」
「王妃殿下もヘミングウェイ伯爵夫人も、とても親切で素晴らしい方達ですわ!」
「では、なぜ泣いていたのかをこの後にゆっくり話してもらおうか。」
少し意地悪そうな表情になるアンブリッジ公爵様。
このお方に追及されたら、逃げることが難しいのは知っている。
しかし今は時間がない。
「アンブリッジ公爵様のことは信頼しておりますので、話せというならば話をさせて頂くつもりでおりますわ。
しかし、今の私にはゆっくり話をさせて頂く時間がないのです。後日でもよろしいですか?」
「君がそこまで慌てるなんて、ますます気になる。
私は口は堅いと君には話したと思うが…。私達は仲間だろう?困っているなら力になる。
時間がないなら、ここですぐに話すのだ。」
アンブリッジ公爵様は、連れていた従者達に目配せをすると、従者達は話が聞こえないくらいの距離まで下がってくれた。
これは…、この方に助けを求めろということ?
ハァ、ハァ…。急ぎで階段を登る私は息切れしている。
こんなみっともない姿は誰にも見せられないわね。でも今は急がないといけない。
しかし、執務室のドアの前に来た私はすぐに王妃殿下が帰られたことに気づいてしまった。
執務室の前に立っているはずの王妃殿下の護衛騎士の姿がなかったからだ。
確認のために執務室のドアを開けようとするが、ドアは施錠されている。施錠されているということは、ヘミングウェイ伯爵夫人も帰られたということになる。
間に合わなかった……
どうしよう…。頼りにしようとしていた王妃殿下はもういないし、私の個人的な事情のために、急ぎだと言って呼び戻すなんてことも出来ない。
今すぐに呼び出せて頼りになりそうな人はここにはいないし。事情が事情なだけに、よく分からない人に頼むことも出来ない。
やはり危険だけど一人で行くしかないのかしら…。
「……っ!…うっ。」
涙が溢れ出してくる。せっかくのチャンスなのに。
もしかしたら、あの男と離縁が出来るかもしれないのに…。
誰もいない執務室の前で人知れず涙を流していると、こちらに歩いてくる足音が聞こえてくることに気づいた。一人ではない、複数の足音だ。
こんな時間に誰かしら?見回りの近衛騎士…?
どちらにしてもこんな顔を見られるわけにはいかないから、涙を拭いて立ち去るのが無難ね。
サッと涙を拭いて、下を向いたままその場を離れようとする私に、足音の人物からすれ違いざまに呼び止められる声がした。
「シャノン嬢…?」
この声は!
無意識に顔を上げて声の主人を見つめる。
「やはりシャノン嬢…、ではなくバーネット伯爵夫人だったな。
久しぶりだな。」
「アンブリッジ公爵様…。」
「君は今、王妃殿下の側近として働いているんだって?優秀な君は私の自慢の後輩だよ。」
久しぶりに会ったアンブリッジ公爵様は、学生の頃と変わらずに優しい声を掛けてくれる。
「とんでもないことですわ。私こそ、アンブリッジ公爵様のご活躍のお話を沢山耳にしております。
イング国より無事にお戻りになられたのですね。」
「ああ。先程帰国して、国王陛下と王太子殿下に挨拶を済ませて来たところだ。今から王妃殿下に挨拶しにいくつもりだったのだが、王妃殿下はまだ執務室にいるか?」
「王妃殿下はもう帰られたようで、執務室にはおりませんわ。」
「そうか。ではまた出直すことにしよう。
で…、君はなぜそのような顔をしているのだ?
完璧な淑女と言われていた君が、そんなに目を赤くしなければならないような、何か大変なことでもあったのか?」
泣いていたのがバレている?
「目にゴミでも入ってしまったようですわ。
もう大丈夫です。」
「君が大丈夫と言ったとしても、執務室の前で涙を流している姿を見た者は、王妃殿下やヘミングウェイ伯爵夫人に虐められて泣いていたと思うだろうな…。」
「王妃殿下もヘミングウェイ伯爵夫人も、とても親切で素晴らしい方達ですわ!」
「では、なぜ泣いていたのかをこの後にゆっくり話してもらおうか。」
少し意地悪そうな表情になるアンブリッジ公爵様。
このお方に追及されたら、逃げることが難しいのは知っている。
しかし今は時間がない。
「アンブリッジ公爵様のことは信頼しておりますので、話せというならば話をさせて頂くつもりでおりますわ。
しかし、今の私にはゆっくり話をさせて頂く時間がないのです。後日でもよろしいですか?」
「君がそこまで慌てるなんて、ますます気になる。
私は口は堅いと君には話したと思うが…。私達は仲間だろう?困っているなら力になる。
時間がないなら、ここですぐに話すのだ。」
アンブリッジ公爵様は、連れていた従者達に目配せをすると、従者達は話が聞こえないくらいの距離まで下がってくれた。
これは…、この方に助けを求めろということ?
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