74 / 104
新しい生活
仲間だろう?
王妃殿下の執務室まで急ぐ。
ハァ、ハァ…。急ぎで階段を登る私は息切れしている。
こんなみっともない姿は誰にも見せられないわね。でも今は急がないといけない。
しかし、執務室のドアの前に来た私はすぐに王妃殿下が帰られたことに気づいてしまった。
執務室の前に立っているはずの王妃殿下の護衛騎士の姿がなかったからだ。
確認のために執務室のドアを開けようとするが、ドアは施錠されている。施錠されているということは、ヘミングウェイ伯爵夫人も帰られたということになる。
間に合わなかった……
どうしよう…。頼りにしようとしていた王妃殿下はもういないし、私の個人的な事情のために、急ぎだと言って呼び戻すなんてことも出来ない。
今すぐに呼び出せて頼りになりそうな人はここにはいないし。事情が事情なだけに、よく分からない人に頼むことも出来ない。
やはり危険だけど一人で行くしかないのかしら…。
「……っ!…うっ。」
涙が溢れ出してくる。せっかくのチャンスなのに。
もしかしたら、あの男と離縁が出来るかもしれないのに…。
誰もいない執務室の前で人知れず涙を流していると、こちらに歩いてくる足音が聞こえてくることに気づいた。一人ではない、複数の足音だ。
こんな時間に誰かしら?見回りの近衛騎士…?
どちらにしてもこんな顔を見られるわけにはいかないから、涙を拭いて立ち去るのが無難ね。
サッと涙を拭いて、下を向いたままその場を離れようとする私に、足音の人物からすれ違いざまに呼び止められる声がした。
「シャノン嬢…?」
この声は!
無意識に顔を上げて声の主人を見つめる。
「やはりシャノン嬢…、ではなくバーネット伯爵夫人だったな。
久しぶりだな。」
「アンブリッジ公爵様…。」
「君は今、王妃殿下の側近として働いているんだって?優秀な君は私の自慢の後輩だよ。」
久しぶりに会ったアンブリッジ公爵様は、学生の頃と変わらずに優しい声を掛けてくれる。
「とんでもないことですわ。私こそ、アンブリッジ公爵様のご活躍のお話を沢山耳にしております。
イング国より無事にお戻りになられたのですね。」
「ああ。先程帰国して、国王陛下と王太子殿下に挨拶を済ませて来たところだ。今から王妃殿下に挨拶しにいくつもりだったのだが、王妃殿下はまだ執務室にいるか?」
「王妃殿下はもう帰られたようで、執務室にはおりませんわ。」
「そうか。ではまた出直すことにしよう。
で…、君はなぜそのような顔をしているのだ?
完璧な淑女と言われていた君が、そんなに目を赤くしなければならないような、何か大変なことでもあったのか?」
泣いていたのがバレている?
「目にゴミでも入ってしまったようですわ。
もう大丈夫です。」
「君が大丈夫と言ったとしても、執務室の前で涙を流している姿を見た者は、王妃殿下やヘミングウェイ伯爵夫人に虐められて泣いていたと思うだろうな…。」
「王妃殿下もヘミングウェイ伯爵夫人も、とても親切で素晴らしい方達ですわ!」
「では、なぜ泣いていたのかをこの後にゆっくり話してもらおうか。」
少し意地悪そうな表情になるアンブリッジ公爵様。
このお方に追及されたら、逃げることが難しいのは知っている。
しかし今は時間がない。
「アンブリッジ公爵様のことは信頼しておりますので、話せというならば話をさせて頂くつもりでおりますわ。
しかし、今の私にはゆっくり話をさせて頂く時間がないのです。後日でもよろしいですか?」
「君がそこまで慌てるなんて、ますます気になる。
私は口は堅いと君には話したと思うが…。私達は仲間だろう?困っているなら力になる。
時間がないなら、ここですぐに話すのだ。」
アンブリッジ公爵様は、連れていた従者達に目配せをすると、従者達は話が聞こえないくらいの距離まで下がってくれた。
これは…、この方に助けを求めろということ?
ハァ、ハァ…。急ぎで階段を登る私は息切れしている。
こんなみっともない姿は誰にも見せられないわね。でも今は急がないといけない。
しかし、執務室のドアの前に来た私はすぐに王妃殿下が帰られたことに気づいてしまった。
執務室の前に立っているはずの王妃殿下の護衛騎士の姿がなかったからだ。
確認のために執務室のドアを開けようとするが、ドアは施錠されている。施錠されているということは、ヘミングウェイ伯爵夫人も帰られたということになる。
間に合わなかった……
どうしよう…。頼りにしようとしていた王妃殿下はもういないし、私の個人的な事情のために、急ぎだと言って呼び戻すなんてことも出来ない。
今すぐに呼び出せて頼りになりそうな人はここにはいないし。事情が事情なだけに、よく分からない人に頼むことも出来ない。
やはり危険だけど一人で行くしかないのかしら…。
「……っ!…うっ。」
涙が溢れ出してくる。せっかくのチャンスなのに。
もしかしたら、あの男と離縁が出来るかもしれないのに…。
誰もいない執務室の前で人知れず涙を流していると、こちらに歩いてくる足音が聞こえてくることに気づいた。一人ではない、複数の足音だ。
こんな時間に誰かしら?見回りの近衛騎士…?
どちらにしてもこんな顔を見られるわけにはいかないから、涙を拭いて立ち去るのが無難ね。
サッと涙を拭いて、下を向いたままその場を離れようとする私に、足音の人物からすれ違いざまに呼び止められる声がした。
「シャノン嬢…?」
この声は!
無意識に顔を上げて声の主人を見つめる。
「やはりシャノン嬢…、ではなくバーネット伯爵夫人だったな。
久しぶりだな。」
「アンブリッジ公爵様…。」
「君は今、王妃殿下の側近として働いているんだって?優秀な君は私の自慢の後輩だよ。」
久しぶりに会ったアンブリッジ公爵様は、学生の頃と変わらずに優しい声を掛けてくれる。
「とんでもないことですわ。私こそ、アンブリッジ公爵様のご活躍のお話を沢山耳にしております。
イング国より無事にお戻りになられたのですね。」
「ああ。先程帰国して、国王陛下と王太子殿下に挨拶を済ませて来たところだ。今から王妃殿下に挨拶しにいくつもりだったのだが、王妃殿下はまだ執務室にいるか?」
「王妃殿下はもう帰られたようで、執務室にはおりませんわ。」
「そうか。ではまた出直すことにしよう。
で…、君はなぜそのような顔をしているのだ?
完璧な淑女と言われていた君が、そんなに目を赤くしなければならないような、何か大変なことでもあったのか?」
泣いていたのがバレている?
「目にゴミでも入ってしまったようですわ。
もう大丈夫です。」
「君が大丈夫と言ったとしても、執務室の前で涙を流している姿を見た者は、王妃殿下やヘミングウェイ伯爵夫人に虐められて泣いていたと思うだろうな…。」
「王妃殿下もヘミングウェイ伯爵夫人も、とても親切で素晴らしい方達ですわ!」
「では、なぜ泣いていたのかをこの後にゆっくり話してもらおうか。」
少し意地悪そうな表情になるアンブリッジ公爵様。
このお方に追及されたら、逃げることが難しいのは知っている。
しかし今は時間がない。
「アンブリッジ公爵様のことは信頼しておりますので、話せというならば話をさせて頂くつもりでおりますわ。
しかし、今の私にはゆっくり話をさせて頂く時間がないのです。後日でもよろしいですか?」
「君がそこまで慌てるなんて、ますます気になる。
私は口は堅いと君には話したと思うが…。私達は仲間だろう?困っているなら力になる。
時間がないなら、ここですぐに話すのだ。」
アンブリッジ公爵様は、連れていた従者達に目配せをすると、従者達は話が聞こえないくらいの距離まで下がってくれた。
これは…、この方に助けを求めろということ?
あなたにおすすめの小説
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです