幸せを諦めていた聖女が王子様に『お前を溺愛する準備ができた』と言われて神殿からさらわれてしまいました
――聖女の不幸は、国民の幸せ。
この世界にはそんなことわざが存在するほど、人々の生活は聖女の多大な犠牲のもとに成り立っている。
特に聖女が男性と肌と肌を重ねて愛し合うことは、聖女の持つ力を損ねてしまうため禁忌とされていた。
……なのに。
『愛してる! 俺はお前よりも、お前のことが好きだ!!』
……なのに、なのに。
『お前は面倒な女のままでいい。俺に迷惑をかけ続けていい。そんなの、惚れた時から受け入れていることだ』
……なのに、なのに、なのに!
『自覚しろ、お前は俺の女だ。人のものは、丁重に扱え。お前を蔑ろにする奴は、たとえお前自身でも許しはしない。もし俺の言いつけを守れないようなら……とことんわからせてやるよ。俺がお前のこと、どんだけ大切に思っているのかをな』
聖女の頭の中は、別れた王子との思い出でいっぱいになっていた。
二人の関係は良好だったが、王子の将来を考えて聖女が一方的に身を引いた形だ。
しかし別れた今もなお、聖女は王子のことを忘れられず苦しんでいた。
そんな悶々とした日々を送っていた聖女は、ある日、ひょんなことから王子が魔王を倒しにこの国を旅立ったことを知ってしまう。
魔王とは聖女の運命を縛りつける最たる元凶だ。
王子は聖女が幸せになれる世界を実現するために、命懸けで戦っているという。
全てを知った聖女は、王子が無事に帰って来ることを祈った。
そして一年後……
「お前を溺愛する準備ができた。拒否権はない。さらっていくぞ、お前の全てを……」
こうして魔王を倒して英雄となった王子に、聖女はさらわれてしまった。
はたして、障害の無くなった恋の運命やいかに……?
※この小説はカクヨムにも掲載しております。
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