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聖女としての働き

20.これは何

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訓練場に三人で先に戻っていると、キリルはそのあと少しして戻ってきた。

私たちが戻る時にジェシカさんが来たところだったので、
もう少し面会室で話しているのかと思っていたのに、
意外とすぐに戻ってきたので驚いた。

「ただいま……ユウリ、一人で大丈夫だった?」

走ってきたのか、少し汗をかいている。
それほど時間はたっていないのに、私を一人にしたことで焦っているようだ。

…この前のことがまだ気になっているんだ。
面会室まで見に行ってましたとは言えないなぁ…。

「大丈夫だよ。そんなに時間たってないし。
 今日はちゃんと美里とカインさんから離れなかったから。」

さすがにちょっと罪悪感を感じながらも答える。
どうやって一花のことを聞こうかと思っていたら、
美里とカインさんがキリルに素直に聞いた。

「キリルさん、イチカのこと何かわかった?」

「詳しい情報あったんじゃないのか?」

「あれ?なんで知ってるの?」

「だって、隊員さんの声が大きかったから聞こえてたよ?
 ダニエル王子が来てる、一花がさらわれた~って。
 その話をしに受付まで行ったんじゃないの?」

二人に聞かれてキリルは驚いていたが、美里の言葉で納得する。

「あぁ、聞こえてたんだ。
 そうダニエルから話を聞いて来たんだけど、
 興奮しちゃってて話にならなかった。

 それよりもジェシカからの話のほうがわかりやすかった。」

「ジェシカが?」

「あぁ、ちょうど休憩時間だし、お茶を淹れるよ。部屋に戻ろう。」

「わかった。」




部屋に戻るとキリルがアイスティーを淹れてくれる。
今日のお菓子はビスキュイの間に苺と生クリームがはさまっていて、
見た目から美味しそうではあったが、食欲はなかった。

一花のことはもう二度と会いたくない思っていた。
だけど、こんなふうに会えなくなることは望んでいなかった。
自分とは関わらないところで幸せになってくれればいいと思っていた。

今こうしている間も一花がひどい目に合っているかもしれないと思うと、
呑気にお菓子を楽しむ気になんてならなかった。
のんびりとお茶を淹れてくれるキリルにもどかしさを感じ、
席に着いたとたんに話を急かす。

「で、ジェシカさんの話って?」

「あぁ、ジェシカの話はこれだ。
 ハイドンから渡されたらしい。
 神官宮が持っていたほうがいいだろうからと。」

キリルが見せたのは、手のひらにおさまるくらいの大きさの砂時計だった。
中にはキラキラ光って見える赤い砂が入っている。
上のガラス管には半分ほどの砂が入っていて、サラサラと下のガラス管へと落ちる。

ハイドン王子からこれを?
綺麗な砂時計だとは思うけど、これが一花と何か関係するのだろうか。



「砂時計?」

「これがどうかしたの?」

砂時計にしか見えないそれに、私と美里が首をかしげていると、
カインさんが砂時計をじっと見つめている。

「それはイチカのだな?魔力計を登録していたのか。」

「魔力計?砂時計じゃないの?」

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