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第196話 来訪者

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 *

 クレハの家に戻ると、先にいつの間にかクレハの婆さんも家に戻っていた。

「おかえり」

「お婆ちゃん!!」

 クレハがクレハの婆さんに抱きつく。

「ビックリしたんだよ、噂には聞いてたけど、お婆ちゃんが〝こぶし拳聖けんせい〟だなんて」
「若い頃の話だからねぇ、病気を患ってからはもうそう呼ばれるような戦いはできないと思ってたよ、これもユキマサさんのお陰だねぇ」

「そりゃどうも、元気が一番だな」

 チラリと俺を見るクレハの婆さんに当たり障りなく返事を返す。

「そうだよ! ユキマサ君! スゴいんだから魔王を真っ二つで!」

 興奮した様子のクレハがテンション高く言う。

「そーいや、婆さん、飯食ったか?」
「ユキマサさんの炊き出しを貰ったよ」

「ユキマサ君、お腹空いたの?」
「……よく分かったな、少し小腹が空いた」

 あれだけ食ったのにな。
 それもこの怪我のせいか?

 と、俺は魔王の一撃を貰い、クレハに貰ったポーションで傷口を塞いだが、まだ傷跡の残る横腹を擦る。

「なに食べる? やっぱお米?」
「米かな……あるのか?」

「うん、ちょっと待っててね、あと唐揚げも作るね」
「まじか、助かる」

 と、待つこと十数分程度の事だ。

 コンコン、コンコン!

 家の扉が慎ましやかにノックされる。

「誰だろ?」
「俺が出るぞ」

 と、扉を開けると。

「こんばんは、来ちゃった」

 そんな台詞と共に大聖女──ノア・フォールトューナは家に上がるのだった。

 *

「の、ノアさん!?」
「こんばんは、クレハさん、お邪魔していいかな?」

「あ、はい、狭い所ですが……」
「ふふ、私は好きだなこの家」

「あ、ありがとうございます」
「で、何しに来たんだ?」

 俺がノアに聞く。

「ユキマサ君に会いに来たんだよ。君の怪我を診にね」
「俺の怪我を?」

 ズキンと魔王に貰った横腹の一撃が痛む。

「あ、後、これお土産」
「ん? ああ、ありがとう、中身はなんだ?」

「漬物だよ、ユキマサ君、好きかなと思って」
「まじか!」

 まさか異世界で大聖女に漬物貰うとはな……

「ふふ、やっぱり、ユキマサ君はエルフの特産品が好きみたいだね」
「特産品なのか? ありがたく貰うけど」

「どうぞどうぞ、あれ? それはそうと今からごはん?」
「ああ、クレハに頼んでな、傷の回復の為に飯作ってもらってる」

「そうなんだ、丁度良かったね」

 米が炊き上がると、クレハ特製の唐揚げと一緒に運ばれてくる。
 米の香りが食欲を掻き立てる。

 そしてノアが持ってきてくれた漬物だ。きゅうり、なす、大根、白菜と様々なラインナップだ。

「いただきます」

 手を合わせ俺は食事を取り始める。

「美味い!」

 早速、きゅうりの漬物をいただいた俺は、久しぶりの漬物の味に歓喜の声をあげる。

「そうだノア、メロンあるけど食うか?」
「あ、食べたいかも! デザートだね」

「クレハ、切ってやってもらえるか?」

 と、俺は〝アイテムストレージ〟から、ミリアに貰ったメロメロンをクレハに渡す。

「はーい、ちょっと待っててね」
「何か、夫婦みたいだね」

「ふ、夫婦!! べ、別にまだそんなんじゃ!!」
「ふーん、うん、でも、少し妬けるかな」

 ぷらぷらと椅子に座ったノアは足を揺らす。

「ユキマサ君、クレハさん家に住んでるの?」
「ああ、居候の身だ」

「そっか、じゃあ今日は私も泊まってこうかな?」

 と、ノアはイタズラ気に笑い、そう呟くのだった。
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