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第198話 結界の家

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「……ん、寝ちまった」

 俺は目を覚ますと上体を起こす。

 すると隣には、すやすやと寝息を立てるノアとクレハの姿があった。
 
(よく見なくても、宝石みたいに綺麗な奴だな、ノアは)

 後、傷、治ってるな。完全に。

「んっ……んっ……」
「おはよう、ノア、治療ありがとな。それと寝ちまってすまん」

「おはよう、全然大丈夫だよ。ふふ♪ 朝起きて男の人の顔が真っ先に目に入って来るなんて初めてかな」

 相変わらずのマイペースさでノアは微笑む。

 じー。
 ノアとは反対側から視線を感じる。

「クレハもおはよう」
「うん、おはよう。ノアさんも」

「おはよう、クレハさん、いい朝だね」

 ふりふりと手を振るノアは機嫌がよさそうだ。

 *

 クレハの婆さんが、作ってくれた朝食をノアも含め一緒に食べると、俺達はギルドへ向かう。

「じゃあ、私は大聖堂に戻るね」
「改めてありがとな、助かったよ」

「どういたしまして、また会おうね」
「今度は外に食事でも行こうぜ、ギルド前の〝ハラゴシラエ〟はクレハに教わったんだが絶品なんだ」

「うん♪ 楽しみにしてるね♪ それじゃ、またね」

 そう告げるとノアは旋風を巻き上げ、風のように去っていくのだった──

 *

「あ、やっと来た」

 ギルドに着くと理沙と糞爺がいた。

「悪い、待たせたな」
「まあ、このギルドは色々あるから退屈はしなかったけどね」

「それじゃ行くかの」
「ああ、その前に改めて、こっちはクレハだ。この世界に来てかなり世話になってる」

 俺がそういうとペコリとクレハが頭を下げる。

「クレハ・アートハイムです。よろしくお願いします」

稗月暁ひえづきあかつきじゃ」
花蓮理沙はなはすりさです」

「それじゃ、自己紹介も済んだし、行くか、この世界の糞爺の家に──」

 *

 にしても、婆ちゃんに会うの久しぶりだな。
 話したいことも沢山あるんだ。

 何せ8年ぶりだ。
 背も伸びたんだぜ? もう身長は余裕で追い越したかな。

 昔はよく手を繋いで歩いてくれたよな。
 あの頃は照れ臭くて言えなかったけど、すごく嬉しかったんだ。

「ここじゃ」
「ん? 何にもないじゃねぇか」

 場所は〝大都市エルクステン〟から歩いて30分ぐらいの何の変哲もない森だ。

「結界を張ってあるからの、普通じゃ気づかん」
「なるほど、そう言うことか」

 すると何もない空間に糞爺が手刀を入れると、そこからぐにゃりと空間が歪む。

「凄い……」

 クレハが呟く。

「邪魔するぜ」
「お邪魔します」
「ただいま」

 結界内に入ってく糞爺に続き、俺、クレハ、理沙がそれに続く。

「お帰りなさいませ~」

 飛び込んできたのは薄ピンク色の髪をした女性だ。年は20代半ばぐらいだろうか?
 しかしこの女……どっかで見たことある気が……

「おい糞爺。誰だこの女は?」
「コイツか? コイツはストレアじゃ」

「ストレア? どっかで聞いたことあるような……」

 どこでだっけ?

「あ、ユキマサ君、レヴィニアさんのお姉さん!」
「それだ!」

 確か〝7年前の魔王戦争〟の時に白獅子──糞爺に拐われた事になってる奴だ。
 見た感じデマっぽいぞ?

「つーか、婆ちゃんどうした? 家ん中か?」

「……!? ユキマサ、お前……何を言うとるんじゃ……」
「おじいちゃん、私たちユキマサに言ってない!」

 何だ? どう言うことだ?

 その後、理沙に付いてきてとだけ言われ、後を付いていくと稗月魅王ひえづきみおうと書かれた墓石がそこにあった── 
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