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第270話 エルフの宿屋の一夜2
しおりを挟むフォルタニアが着替え終わると、二人でベッドに腰かける。
「……」
「……」
ほんのついさっきまで、かなり際どい所まで行っていたこともあり、お互いに妙な沈黙が流れる。
「あ、あの、ユキマサ様、少しお茶をしませんか!」
「お茶か、いいな。少し落ち着こうか」
ということで、部屋に備え付けられていた、急須と茶葉でフォルタニアがお茶を煎れてくれた。
「不思議と本当は今残念な気持ちなんです」
俺はお茶を吹き出しそうになる。
「最初は本当に何かを返すという形で、ユキマサ様とそういうことをしようと考えていました。ですが、本当は怖かった。でも、断られてホッとした自分と、今日ユキマサ様とそういうことをしないという結果に残念な気持ちの自分がいるんです」
自身もお茶を飲みながらフォルタニアが言う。
「それは──光栄なことで……ん、反応に困るな」
「ふふ、今日は引き下がりましたが、もしユキマサ様の気が変わったらいつでもおっしゃってくださいね。このお茶を飲んで頭を落ち着けてから、私は冷静に覚悟を、答えを決めました。もう怖くはありません」
俺は再びお茶を吹き出しそうになる。
「ゴホッ、ゴホ、お前な、自分が何言ってるか分かってンのか? かなり危ないこと言ってるぞ?」
「はい、分かってますよ。私は私が頭で思う以上にユキマサ様を好意に思ってたようです。失礼ながら、今この時間も凄く楽しいんです。生きててよかったと、そう思えるぐらいには、嬉しく楽しい時間です」
「本当に色々揺れちまいそうだ。お茶おかわり」
空になった湯呑みをフォルタニアに渡す。フォルタニアは少しキョトンとした後、ふふっとまた笑う。
何だかんだで三杯のおかわりをした後、俺とフォルタニアは就寝モードだ。
ベッドは一つしか無いが、ダブルなので二人で寝れる。俺は床で寝てもいいんだが、フォルタニアがそれを断固拒否。
俺の理性に心配しながらも、今夜はフォルタニアと一緒のベッドで寝ることになった。
「ユキマサ様、失礼します」
先にベッドに入ってた俺の後からフォルタニアがベッドに入ってくる。うわ、もう何かいい匂いするし。
なんつーか、フォルタニアは艶かしい。
理性を保ちたければ、あまり意識してフォルタニアを見ない方がいいだろう。
「昨日の件はユキマサ様が直ぐに助けてくれましたのでノーカウントとして、殿方とベッドに入ったのは初めてです」
昨日の件と言うと、ボルスに襲われかけてた奴か、つーか、あの豚野郎……こんな綺麗なフォルタニアにあのクソ汚い体で触れたりしようとしてたのか。
何か、腹立って来たな。もう一発蹴りにでも行ってこようかな。
てか、この世界に来てから俺は何で女性と毎日一緒に寝てんだ? クレハ、エメレア、ノア、フォルタニア……エルフ率が約50%を占めてるのも謎だ。
「ユキマサ様」
ゆっくりと、ひっしりとフォルタニアが俺の左腕を掴んでくる。ちょ、胸が……や、柔けぇ。
暴力的な迄の柔らかさが左手に伝わる。
ああ、柔らかいは暴力だったんだな。
「この体制で寝てもいいですか?」
「……好きにしろ」
理性、頑張れ! エメレアぁ! あ、ダメだ。あいつはクレハ専用機だった! ポンコツめ!
「ふふ、今日は安心して寝れそうです。いえ、昨日も安心して寝れましたね。明日と言う日が憂鬱でしたが……でも、今日はそんな不安もありません。ユキマサ様、本当に本当にありがとうございます」
ぎゅっと、フォルタニアが掴む腕の力を強める。
「どういたしまして、お休み、フォルタニア」
「はい、ユキマサ様、お休みなさいませ」
フォルタニアの添い寝と言う、ご褒美に関しては、ありがたく受け取っておこう。
つーか、我ながら、よく理性持ってると思う。
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