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第297話 ノアの部屋8

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「それで、一応聞いとくけど、ユキマサ君とクレハさんはどこまでいってるのかな?」

 変に酔った風でも無く、いつもと殆ど同じペースの、強いて言うなら少し普段より楽しげな様子のノアが突然にそんな質問を投げかける。

「な、なんだその質問は……」
「そのまんまの意味かな? 付き合ってるの?」

 興味津々と言った目で俺を見るノア。ちなみに本日三杯目を突破したスイーツレモンを刺した果実酒をノアは、それこそスイーツでも食べるかのような笑顔でそれをくぴくぴと飲んでいる。

「付き合ってねぇよ」
「ふむふむ、もしかしてちゅーぐらいした?」

 からかってるのか、そうでないのか微妙なトーンだ。質問の度に果実酒を口に運ぶノアは、三杯目の果実酒を飲み干す。

「いや、してねぇよ。つーか、どんな質問だよ?」
「気になる男の子の異性関係の情報は女の子にとっては重要なんだよ? 一応、私も女の子だし♪」

 クスクスと微笑むノアは〝エルフ酒〟に並ぶ、珍しい酒である〝万祭ばんさい〟をコップに注ぐ。
 そしてトテっと、俺の肩に頭を傾け預けてくるノアはすこぶるご機嫌だ。

「絵になりますね、ユキマサさんと大聖女様が並ぶと。今この都市のツートップのツーショットです」
「褒めてもなんにもでないぞ?」

 変なおだてを言うロキに俺はクイっとはいに注いだ酒を飲みながら、そっけなく返事をする。

「これ以上、私はユキマサさんに何かを貰うわけにはいきませんけどね。──っと、そうだ。忘れる所でした、これをユキマサさんに」

 スッとロキが懐から、取り出したのは透明なアクリル版のような物に入った星の形をした二枚のメダル?

「あ、星金貨せいきんかだ。流石はギルドマスターだね♪」
「星金貨?」

 聞いたこと無い。多分、金貨の上位互換か?

「うん。金貨1000枚分の価値があるよ」

 うわぉ、日本円換算で1億円……!
 2枚で2億かよ? サラっと出すな。大金を。

「私は2枚しか持ち合わせていませんが、よろしければ──というか、絶対に受け取ってください」

 ロキの目は真剣だ。さっき迄の酔っぱらいの目とは全く違う。強いて言うならギルドマスターの目だ。

「分かった、ありがたく、いただくよ」

 俺がそう言うと、ロキは満足そうに笑い、また一口酒を煽る。

 てか、使いづらいな。どうやって使うんだ。
 家とか買えるぞ? いや、それでも釣りがくる。

 〝アイテムストレージ〟に星金貨を仕舞うと、俺は残りの〝エルフ酒〟をはいに注ぎ、口へ運ぶ。
  
 その後も俺達は酒をみ交わした。
 そんな夜が段々と深くなっていく──

 ロキが「では、私はそろそろ」と、席を立ったのは、時計の針がとうに天辺てっぺんを越えて長い針が数回、回った辺りだった。

 ノアもロキも本当に酒豪らしく、あんだけ飲んだのに、まだまだ余裕とばかりの様子だった。

「今日は楽しかったよ、ロキさん♪ また皆で飲もうね♪」
「ええ、是非に。私もこんなに楽しい日は久々です」

「──ロキ、

 短く俺は告げる。するとロキが唇を噛みしめ──

「ユキマサさん……本当に本当にありがとうございました! ──この恩は一生忘れません! そしていつか必ず倍にして返します!」

 また頭を深々と下げ、深夜にしては少し大きすぎる声で礼を言う。

「ん、期待しとく。フォルタニアによろしくな」

 涙を流し、何度も何度も頭を下げてから帰宅するロキを最後まで見送った俺とノアは「もう少しだけ飲むか」と言う話になり、深夜に二人、まだ飲み続けた。
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