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第315話 エメラルドの約束14

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 ──あれから数日が経った。

 家も見に行ったけど、家は荒らされ、畑まで荒らされていた。
 兄さんとの大切な思い出の地を……許せない。

 ここ数日の私は水は飲んだけど、食事はパンを1つ食べただけだ。

 初めて行くパン屋でパンを1つ買ったのだが、お会計で小金貨1枚を出したら、お釣りも無く、そのまま持っていかれた。
 お釣りをくれと言ったら店から蹴り出された。

 それからは買い物がトラウマだ。
 エルフの国の全員が敵のように見える。

 小金貨1枚──それだけあれば兄さんと20日はお腹いっぱいの食事ができた。
 そんな大金をパン1つで持っていかれた。

 ……情けない。私は弱い。
 そもそも私が強ければ兄さんを守れた。

(早く国を出よう。でも、何処に……)

 ──『昔、大都市エルクステンの街に行ったことがあるんだけど、いい街だったよ。エメレア、今度お金を貯めて、二人でそこに旅行に行こう!』

 昔、兄さんと話していた会話を思い出す。

「……大都市エルクステン」

 そこを目指そう。
 他にアテがあるワケじゃない。

 だが、大都市エルクステンまで歩いては行けない。
 距離の問題じゃない、危険の問題だ。

 魔物も盗賊もいっぱい出る。
 私1人じゃ鴨が葱を背負って歩いてるような物だ。

 こういう時はギルドから冒険者に護衛依頼を出すと聞いた。
 〝シルフディート〟の都心部から少し外れた〝シルフディート〟の小さなサブギルドから私は依頼を出そうと考えた。

 またボッタくられる気がした。
 でも、護衛は付けないと、でないと、それこそお金も荷物も、命さえも、あっという間に失ってしまう。

 私はギルドの受付の人に話しかけた。

 できるだけ、優しそうな人に──でも、話しかけた亜人のお姉さんは「護衛依頼の専門の人を呼ぶね」と、バトンタッチしてしまった。

 代わりに現れたのは、大きな亜人のお世辞にも清潔とは言えない毛むくじゃらのおじさんだった。

(う、こ、怖い……)

「──お嬢ちゃん〝大都市エルクステン〟に行きたいんだって? 1人でかい? お家の人は?」

 ……少しの沈黙。

「……移住です。お家の人はいません」

 困り顔のおじさん。

「で、いくらあるの?」
「多少はあります。高くても騙さない人がいいです」

 このおじさんに騙さない人がいいだなんて、そんな事を口で言っても気休めにしかならない。

 その結果──
 提案された予算は金貨1枚……手が振るえる額だ。

 だが、評判が良く、実力もそこそこで、おじさんの信頼する、丁度〝大都市エルクステン〟方面に帰還する予定の、冒険者パーティーを紹介してもらえる事になった。でも、私は正直期待はしていない。依頼料の数倍の追加料金とか取られなきゃいいなと思う。

 ──翌日。
 約束の時間に私はギルドを訪れた。

 紹介された冒険者パーティーのパーティー名は〝吟遊詩人バラッド〟と言うらしい、どうでもいいけど。

「やぁ、おはようございます。私は〝吟遊詩人バラッド〟のリーダーのトア──です。貴方がエメレアさんかな?」

 白茶色の髪の男性は私にそう話しかけて来た。
 優しそうな男性だ、でも私はこんな優しそうな人を前にしても、男の人と言うだけで恐怖を感じた。
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