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第346話 アーメジスト山脈

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 ──アーメジスト山脈・道中──

 朝〝ルスサルペの街〟を出て、次の街へ歩く俺とクレハは日が沈み、夜がやって来ると、椅子になるような倒れた大木がある所に適当に腰を掛けながら、野営の為の火を起こしていた。
 と、言っても〝火の結晶イグクリュスタル〟で、パッと集めた木に点火するだけだから、一瞬で終わる。
 スピードだけならマッチやライターと変わらない。

「悪い、家がどうのとか言ってたのに。旅の2日目から野宿になっちまったな。いや、ホントすまん……」

 野宿はさせまいと意気込んでたんだがな。
 いや、ホント不甲斐ない。

「あ、全然。大丈夫だよ、私、外好きだし。たまにはこういうのも良いよね。夜も今はそんな寒くないし」

 元気に笑ってくれるクレハに俺は感謝する。

 ──その時だ。

 森の奥から2体のワイバーンが飛んできたのは。

(うわ、懐かし、そんな日にち経ってないけど)

 俺は瞬時に〝アイテムストレージ〟から取り出した〝魔力銃〟でワイバーンをする

「え、わ、ユキマサ君、何したの!?」
「ただの早撃ちだ〝アイテムストレージ〟を応用してるから、自分で言うのも何だが、かなり早いぞ」

 倒したワイバーンから〝ドロップアイテム〟を拾う。

 ──〝魔力結晶+1〟

 この世界、お馴染みの奴だ。2体倒したが〝ドロップアイテム〟を落としたのは1体からだけだった。
 まあ、こういうのは塵積ちりつももだ。
 売るにせよ、使うにせよ大事に取っておこう。

「で、また〝アイテムストレージ〟の出番だ。今日の夕飯何食いたい?」
「あ、食材買い込んであるんだっけ? 本当に便利だよね。もし良いんだったらお肉希望です」
「肉か、あ〝大猪おおしし〟あるぞ?」

 クレハが一瞬だけ、目を見開く。

「た、食べたい! 食べたいけど、今はダメ。あれだけは、外でじゃなくて、家の中でじっくり食べたい」

 大猪は昔家族で食べた思い出の味とも言っていた。大猪に関してはクレハなりの何かこだわりがあるのだろうか? 外で食べたくない理由は多分そこら辺にある筈だ。詳しくは分からないけど今回はパスだな。

「じゃ、妥当な所で〝縞牛しまうし〟にしとくか、鉄板で焼いて、ステーキにしよう。後は野菜か」

「縞牛! 私、それも大好物だよ! いいの?」
「そりゃ、良かった。腹一杯食いな」

 ということで、適当な石を焚き火に立て、土台を作り、その上に〝アイテムストレージ〟から鉄板を取り出して乗せ温める。

 鉄板を温めてる間に、俺はまたもや──〝アイテムストレージ〟から、縞牛の肉、豚鹿のベーコン、ロイヤルレタス、クリムゾントマト、塩、胡椒、油、シーザードレッシングを取り出す。

 豚鹿のベーコン、ロイヤルレタス、クリムゾントマトは食用ナイフで一口サイズに切り、シーザードレッシングをかけて、2人分を作り完成だ。

 肉には塩胡椒で下味をつけ、鉄板で焼いていく。

 余談だが、この世界の塩ってのが元いた世界の塩と比べると、コクが強く、甘味があり、比べ物にならないぐらい美味い。
 ただのお湯に塩を少し溶いただけで店で出せるぐらいのスープになる。

 両面を強火で焼き、表面に焼き色が付いて来た所で、少し火を弱め、弱火でじっくりと焼く。

「うーん、いい匂い! 美味しそう!」

 クレハが俺が出した食器を並べながら感想を言う。

「もう少し焼けば完成だ、期待しときな?」
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