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第414話 銀雪祭5
しおりを挟む「ちょ、男子集合!!」
クラスの出し物を決めるかのようなノリで言うチャッチャラー。
「男子集合って会場中の男共を集めるつもりか?」
「俺とユキマっさんの二人っス、はいこっち!」
ズルズルと会場の端に引っ張られる俺。
カボチャのキッシュ、美味いな。もぐもぐ。
「──ユキマっさん! どういうことスッか!!」
「騒がしいな、聞こえてるっつーの」
耳元で騒ぐチャッチャラーから俺は煩わしそうに少し距離を取る。
「マジで、クレハちゃんと付き合ってないんスか?」
「……だから付き合ってねぇよ」
その手の話は苦手なんだ。
あからさまに俺は嫌な顔をする。
「クレハちゃん超かわいいじゃないスか」
「可愛いと付き合うはまた別の話だろう?」
「一緒に旅してるのに?」
「ああ」
「同じ宿なのに?」
「ああ」
「同じベッドなのに?」
「ああ……てか、何で知ってんだよ?」
「いやー、最後のは鎌かけだったんスけどね。てかマジスか、それで付き合ってないは信じられませんよ」
「そ、そういうもんか?」
「……ユキマっさん他に好きな人とかいるんスか?」
「恋愛的な意味で聞いてるなら、いねぇよ。それに俺はよく分からねぇんだ。そういうの……」
「ユキマっさん、かわいっスね!」
「うるせぇ……かわいいとか言うな」
「でも、ユキマっさん。これだけは言っておきますよ。気づくべき時に気づかないと後々後悔すること何て山ほどありますよ。俺はユキマっさんに後悔をしてほしくない──っと、俺が言っても柄じゃないスね」
チャラ男らしからぬ真剣な声でそう言われた。
最後はお茶らけた感じに戻っていたが。
後悔──嫌な言葉だ。
あぁ、いつか俺はこの時間に後悔を感じる未来は来るのだろうか──?
嫌だなぁ。そんな未来は俺は来てほしくない。
だが、悲しいかな。どんな形であれ未来は必ず来る。それこそ数年前の過去の俺は神様に呼ばれて異世界に魔王を倒しに来る何て夢にも思わなかった。
アルテナの頼みどおりに魔王たちを倒しきったら俺はどうするのだろうか? またあの退屈な日々に──理沙に心配をかけ続け惰眠を貪るだけの意味のない日々に戻るのだろうか?
……っ……まあいい、それは後で考えよう。それにまだ魔王を倒しきれるかも分からないしな。皮算用はしない主義なんでね。
だが、今に未来の後悔を残すのだけはやめよう。
その方が、きっと幸せな結末に近づく気がする。
「チャッチャラー、ありがとな。肝に銘じとくよ」
「礼を言われるような事は俺は何もしてねぇっスよ、いや本当に。礼を言うのは俺の方っスよ」
「イカ」
「?」
「ん、クレハとアリシアも呼んで食いに行こうぜ。この祭りでは縁起もんなんだろ? さっきは何も知らずに食っちまったから食べ直したいしな」
あと美味かったし。雪イカのイカ焼き。何かイカの好感度上がってきたな。恐るべしお祭りパワー。
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