上 下
482 / 518

第481話 誰の仕業か

しおりを挟む


「の、ノアさん、く、苦しいです……」
「あ、ごめんね。つい、嬉しくて……」

 そうだ、ユキマサならば、ユキマサならば心臓の再生も可能かもしれない。
 確実じゃないが可能性は十分にある。

「ヴィクトリアさん、待っててね」

 こうしてヴィクトリアとガーロックの身体は〝教会〟にて保管されることになった──

 *

 ──〝大都市エルクステン〟
        ギルド・救護室。

 先に運び込まれた、ヴィエラ、ラジ、ボタン、ルドルフ、システィア。そしてエミルが並べられていた。

 そこに新たに入って来る二つの影。

「ゼンスさん、リーゼスさんが重体です。治療をお願いできますか?」

 リーゼスを背負い救護室に現れたのはティクタスだ。

 ゼンスと呼ばれた初老の医師は慌ててティクタスとリーゼスに駆け寄る。

「兄さん! これは酷い、直ぐに手当てを!」

 ゼンスはリーゼスの実の弟だ。リーゼスをゼンスに任せるとティクタスは少しばかり力を抜く。

「──皆さん、ご無事ですか!」

 フォルタニアが飛び込んでくる。

 しー、と、ゼンスがジェスチャーをすると、顔を赤くし「申し訳ありません」とフォルタニアが謝る。

「フォルタニアさん、ギルドは閑散としてますが、住民の皆さんは無事に逃げられたのでしょうか?」
「はい。皆さんが時間を稼いでくれたお陰で住民の皆さんは無事に西側へと避難できています」

 無事とは言えなくても騎士隊長全員が生き延びることができたことに深く安堵する。

「にしても、魔王となった愧火キビはどうなったのです? 撃退との報告がありましたが……」
「そ、それは大聖女様が……」

 斑のことは内密にするように聞かされているのでどうも歯切れの悪い返事をしざるを得ない。

。なぜ嘘を?」

 すかさず自身のスキルで嘘を見抜くフォルタニアは嘘を吐くティクタスを問い詰めると言うよりは、もう少し優しく問いかけると言った方が正確だ。

「すみません、私の口からは言えません。口止めをされていますので、私は魔王を撃退してくれた方を裏切れません」
「そうですか、分かりました」

 短く返事を返したフォルタニアは空気の読める女性だ。それ以上は一切、問うことは無かった。

 *

 ──その人類の朗報は瞬く間に広がった。

「魔王が倒された!?」「いや、撃退しただけらしいぞ」「それでもすごい! 流石は大聖女様だ!」

 祭りや某コミック祭典よりも今は人口密度が高い──〝大都市エルクステン〟の西側門付近は大騒ぎだった。

「しなのん、これでお店に帰れますよ。やったー!」
「それは大変喜ばしいですが、大聖女様は何者なんですか、この短時間で魔王を撃退って尋常じゃないですよ。ユキマサさんの知り合いは化物ばかりですか?」

 今回の一件はノアが愧火を撃退したと、どこからともなく噂が流れた。
 当のノアは今回の一件の話には何を問われてもYESもNOも一切答えなかったという。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,149pt お気に入り:825

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,942pt お気に入り:4,076

街角のパン屋さん

SF / 完結 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:2

本当はあなたを愛してました

m
恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,279pt お気に入り:218

石女と呼ばれますが......

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,569pt お気に入り:45

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:1,765

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,246pt お気に入り:1,565

処理中です...