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第一章
第23話 町にやってきました
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2020/12/16 誤字を修正しました
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どうもこんにちは。ローザです。あたしは今、オフェリアさんの部隊の荷馬車に乗せてもらって町へと向かっているところです。
えっと、とってもお尻が痛いです。
それでですね。オフェリアさん達の部隊はあの森のゴブリンの調査に来ていたんだそうです。というのも、あの森にあるミツェという村の人がゴブリンの集団が襲ってきたからと助けを呼びに来たそうなんです。
ただ、その人も大けがを負っていたらしくその後すぐに亡くなってしまったそうで、現在の状況が分からなくて困っていたのでまずは少人数で調査に来たのだそうです。
ちなみにオフェリアさんの第七隊は女性のみの部隊だそうです。普段は女性の要人を警護するのが主な仕事なのだそうですが、今回は相手がゴブリンという事で狩り出されたんだとか。
あ、えっと、ゴブリンは男性だと殺されますけど女性だとその、殺されはしないじゃないですか。だから、えっと、はい。そういうことです。
それと、女性を見るとゴブリンは興奮して単純な行動を取りがちなので女性の方が倒しやすいという事もあるらしいです。つまり、あたしが魔力弾を当てられた要因の一つは興奮して単純に突っ込んで来たからってこともあるのかもしれません。
えっと、はい。それでですね。あたしの見つけたあのゴブリンの村ですけど、あそこがミツェの村なんだそうです。
あたしがゴブリンの村の方向を指さしてですね。「向こうにゴブリンの村があります」と言ったらそれが道だったらしくて、そのまま納得されてしまいました。
逃げている時になんだか走りやすいなとは思っていたんですが、まさか道だとは思ってもみませんでした。道幅も一人分くらいしかなかったですし、それに何より逃げるのに必死でしたからね。
全く気付きませんでした。
ただ、そのおかげで村に向かっていたオフェリアさんたちに助けてもらえましたし、何百匹もいるゴブリンの村にオフェリアさんたちが突入せずに済んだので結果的には良かったのかもしれません。
「ねぇねぇ、ローザちゃんだっけ?」
「はい」
そんなことを考えていたあたしに茶髪に茶色い瞳でショートヘアの女性が話しかけてきました。
「わたしはシルヴィエよ。オフェリア隊長の副官なの。よろしくね?」
「あ、はい」
「今いくつなの? 八つ? 九つ?」
「え? え? えっと、十一です」
「えっ? もうすぐ洗礼なの?」
「ええと、もう、終わってます」
「あら? そう。まあいいわ。でも十一でこんなに小さいなんてダメよ。お姉さんたちがたくさん食べさせてあげるからね」
完全に子供扱いです。あ、でも実際あたしは子供ですしね。洗礼を受けてはいますがまだ十二歳にはなっていないので未成年ですからね。そこは仕方ないのかもしれませんが、それでも八つや九つは酷いと思います。
「あら? すねちゃったかしら? ごめんなさいね。でもやっぱり体が小さいからお姉さんは心配なの」
むむむ。そう言われると何だかあたしが悪いような気もしてきました。
「ね。だから、心配しないでお姉さんたちに甘えちゃいなさい」
そういってあたしはぎゅっと抱きしめられたのでした。
え? どうだったかですか? えっと、鎧が硬くて少しひんやりしていました。
****
そのまま荷馬車に揺られること三日、あたし達はものすごく高い壁に囲まれた町にやってきました。
「わぁー、おっきいです!」
「我がオーデルラーヴァはどの国にも属さない独立した都市国家だからな。いざという時のためにも戦への備えはしっかりしているのだ」
思わず驚いて声をあげたあたしにオフェリアさんがどこか誇らしげにそう言いました。
「隊長。あんまり難しい事言ってもローザちゃんは分からないですよ?」
「む。戦争くらいわかりますよ」
「そっかぁ。ローザちゃんは賢いねぇ」
あたしがすねてそう言いましたがシルヴィエさんはあたしのことを完全に子供扱いしてきます。もう洗礼も受けましたし来年になれば大人なのに。
これも孤児院でたくさんご飯を食べられなくて町の子のように背が伸びなかったせいに違いありません。
「やや。オフェリア隊長! お疲れ様です」
「ああ。諸君もお勤めご苦労。通してもらうぞ?」
「ははっ!」
さすが、隊長さんというだけあってオフェリアさんは顔パスです。あっさりと門をくぐると町のメインストリートを進んでいきます。
「わぁ、すごい!」
その光景はラポリスクの町とは比べ物になりません。建物の造形はダイナミックなのに整然と並んでいて街並みとしての統一感がしっかりあります。それぞれの建物の壁や柱にはそれはそれは豪華な彫刻が掘り込まれていて、その豪華さに何だか圧倒されてしまいます。
ラポリスクは雑然とした町でしたし、こんな見事な彫刻はありませんでした。
「ふふふ。そうだろう。ローザはオーデルラーヴァに来るのははじめてか?」
「はい!」
「ここは交易の要衝でもあるからな。各国の商人が行き交いここで取引が行われ、それが税収となってオーデルラーヴァを潤しているのだ」
「隊長。そんなことローザちゃんにはまだ早いですよ?」
「む、そうか。すまなかったな。しばらくはこの景色を楽しんでみているといい」
えっと、はい。よく分からないですけど賑やかだってことは分かりました。
「ありがとうございます」
「ふ。言葉遣いは立派な大人だな」
ぶー。もうすぐあたしは大人ですよーだ。
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どうもこんにちは。ローザです。あたしは今、オフェリアさんの部隊の荷馬車に乗せてもらって町へと向かっているところです。
えっと、とってもお尻が痛いです。
それでですね。オフェリアさん達の部隊はあの森のゴブリンの調査に来ていたんだそうです。というのも、あの森にあるミツェという村の人がゴブリンの集団が襲ってきたからと助けを呼びに来たそうなんです。
ただ、その人も大けがを負っていたらしくその後すぐに亡くなってしまったそうで、現在の状況が分からなくて困っていたのでまずは少人数で調査に来たのだそうです。
ちなみにオフェリアさんの第七隊は女性のみの部隊だそうです。普段は女性の要人を警護するのが主な仕事なのだそうですが、今回は相手がゴブリンという事で狩り出されたんだとか。
あ、えっと、ゴブリンは男性だと殺されますけど女性だとその、殺されはしないじゃないですか。だから、えっと、はい。そういうことです。
それと、女性を見るとゴブリンは興奮して単純な行動を取りがちなので女性の方が倒しやすいという事もあるらしいです。つまり、あたしが魔力弾を当てられた要因の一つは興奮して単純に突っ込んで来たからってこともあるのかもしれません。
えっと、はい。それでですね。あたしの見つけたあのゴブリンの村ですけど、あそこがミツェの村なんだそうです。
あたしがゴブリンの村の方向を指さしてですね。「向こうにゴブリンの村があります」と言ったらそれが道だったらしくて、そのまま納得されてしまいました。
逃げている時になんだか走りやすいなとは思っていたんですが、まさか道だとは思ってもみませんでした。道幅も一人分くらいしかなかったですし、それに何より逃げるのに必死でしたからね。
全く気付きませんでした。
ただ、そのおかげで村に向かっていたオフェリアさんたちに助けてもらえましたし、何百匹もいるゴブリンの村にオフェリアさんたちが突入せずに済んだので結果的には良かったのかもしれません。
「ねぇねぇ、ローザちゃんだっけ?」
「はい」
そんなことを考えていたあたしに茶髪に茶色い瞳でショートヘアの女性が話しかけてきました。
「わたしはシルヴィエよ。オフェリア隊長の副官なの。よろしくね?」
「あ、はい」
「今いくつなの? 八つ? 九つ?」
「え? え? えっと、十一です」
「えっ? もうすぐ洗礼なの?」
「ええと、もう、終わってます」
「あら? そう。まあいいわ。でも十一でこんなに小さいなんてダメよ。お姉さんたちがたくさん食べさせてあげるからね」
完全に子供扱いです。あ、でも実際あたしは子供ですしね。洗礼を受けてはいますがまだ十二歳にはなっていないので未成年ですからね。そこは仕方ないのかもしれませんが、それでも八つや九つは酷いと思います。
「あら? すねちゃったかしら? ごめんなさいね。でもやっぱり体が小さいからお姉さんは心配なの」
むむむ。そう言われると何だかあたしが悪いような気もしてきました。
「ね。だから、心配しないでお姉さんたちに甘えちゃいなさい」
そういってあたしはぎゅっと抱きしめられたのでした。
え? どうだったかですか? えっと、鎧が硬くて少しひんやりしていました。
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そのまま荷馬車に揺られること三日、あたし達はものすごく高い壁に囲まれた町にやってきました。
「わぁー、おっきいです!」
「我がオーデルラーヴァはどの国にも属さない独立した都市国家だからな。いざという時のためにも戦への備えはしっかりしているのだ」
思わず驚いて声をあげたあたしにオフェリアさんがどこか誇らしげにそう言いました。
「隊長。あんまり難しい事言ってもローザちゃんは分からないですよ?」
「む。戦争くらいわかりますよ」
「そっかぁ。ローザちゃんは賢いねぇ」
あたしがすねてそう言いましたがシルヴィエさんはあたしのことを完全に子供扱いしてきます。もう洗礼も受けましたし来年になれば大人なのに。
これも孤児院でたくさんご飯を食べられなくて町の子のように背が伸びなかったせいに違いありません。
「やや。オフェリア隊長! お疲れ様です」
「ああ。諸君もお勤めご苦労。通してもらうぞ?」
「ははっ!」
さすが、隊長さんというだけあってオフェリアさんは顔パスです。あっさりと門をくぐると町のメインストリートを進んでいきます。
「わぁ、すごい!」
その光景はラポリスクの町とは比べ物になりません。建物の造形はダイナミックなのに整然と並んでいて街並みとしての統一感がしっかりあります。それぞれの建物の壁や柱にはそれはそれは豪華な彫刻が掘り込まれていて、その豪華さに何だか圧倒されてしまいます。
ラポリスクは雑然とした町でしたし、こんな見事な彫刻はありませんでした。
「ふふふ。そうだろう。ローザはオーデルラーヴァに来るのははじめてか?」
「はい!」
「ここは交易の要衝でもあるからな。各国の商人が行き交いここで取引が行われ、それが税収となってオーデルラーヴァを潤しているのだ」
「隊長。そんなことローザちゃんにはまだ早いですよ?」
「む、そうか。すまなかったな。しばらくはこの景色を楽しんでみているといい」
えっと、はい。よく分からないですけど賑やかだってことは分かりました。
「ありがとうございます」
「ふ。言葉遣いは立派な大人だな」
ぶー。もうすぐあたしは大人ですよーだ。
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