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第二章

第二章第15話 空き巣

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 迷宮に再び挑み始めてから一週間が経過した。俺たちは未だに第三階層を制圧できずに苦しんでいる。

 あれだけカリストさんが念を押したにもかからわず、教会からの治癒師は未だに派遣されていない。そのためメラニアさんはすっかり限界を迎えてしまっており、もはやにっちもさっちもいかないといった状態だ。

 ちなみにこれまでに俺が倒した数はゴブリンの上位種が大体 700 匹くらいで、レッサーデーモンが 200 匹くらいだ。はっきり言ってこの数は異常だ。ほぼ休みなく倒している計算になる。そんな俺よりもカリストさんたちのほうが多く倒しているのだから、この現場がいかに過酷な状況にあるのか分かってもらえると思う。

 それだけ戦っていれば当然、冒険者たちもかなりの数の負傷者が発生している。それでも死者が出ていないのはメラニアさんのおかげだ。毎日倒れそうになるまで必死に重傷者を治療してくれているのだから。

 俺も結構被弾はしたが、断魔の鎧のおかげで怪我一つしていない。だが、この鎧がなければメラニアさんのお世話になるどころか死んでいた可能性だってあっただろう。

 ちなみにゴブリンの上位種の魔石が大体一つ 50 マレ、レッサーデーモンは 150 マレほどで買い取ってもらえる。そのため、これまでの戦果でガチャ二百連分と少し引ける計算となる。

「やれやれ。これはちょっと三階層の制圧は厳しそうだね。この前線基地を守って増援を待つ方が良いかもしれないね」

 カリストさんがそうぼやくと、近くにいるリカルドさんもルイシーナさんも無言で頷いた。他の冒険者たちの表情にも安堵あんどの色が浮かんでいる。

「そうですね。というか、俺たちじゃ戦力的に厳しくないですか? トーニャちゃんがいてくれれば……」
「……そうだね」

 重苦しい空気が俺たちの間を流れる。すると、迷宮の入口の方から誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。

「断魔さーん! 断魔さんはいまっかー?」
「ディーノ君。お呼びのようだよ?」
「はーい」

 俺は立ち上がって返事をすると、見覚えのない若い女性が俺の方に向かって走ってきた。

「お忙しいとこスミマセン。ウチはサバンテ衛兵隊のイルヴァやねん」

 妙に関西弁風な喋り方でそう挨拶してきた。

「はあ、どうも。ディーノです」
「そいでですな。ちょっとオタクに空き巣が入ったさかい、一緒に来たってや」
「はぁっ!? 空き巣?」
「ええ。そうなんですわぁ。被害者さんいないと盗まれたモンが何か分からへんのや。せやから、申し訳ないねんけどちょっと協力してくれへんか?」
「う……」

 俺はちらりとカリストさんのほうを見遣った。

「いいよ。そういう事情なら行っておいで。それと町に戻ったら支部長に直接、もう限界だと伝えてきてくれるかい?」
「……わかりました」

 こんな状況で迷宮を離れるのは心苦しいが、あの支部長にはカリストさんの代理としてしっかり文句を言ってやろう。

 こうしてイルヴァさんと迷宮を後にした俺は再びサバンテの町へと戻るのだった。

◆◇◆

 久しぶりに戻ってきた我が家は凄まじい惨状になっていた。物という物がひっくり返され、足の踏み場もないほどに散らかっている。

 侵入経路は窓のようだ。窓ガラスが割られており、出ていくときは堂々と玄関から出ていったようだ。

「何を盗られてます?」
「そうですね……」

 俺はお金を保管していた棚を開けて調べるが、生活費として保管してあった 4,000 マレが残されていない。

「ここにあったはずの金貨が 40 枚、なくなっています」

 残りは迷宮で閉じ込められた場合に備えて入金済みだったので助かった。

 いや、助かってない! 食費が!

『あ゛~~~~~~~。あたしのっ! あたしの蜜がないっ! ねぇっ! 精霊花の蜜がないよっ!』

 フラウが大声を上げ、泣きそうな顔で俺に迫ってきた。

「(お、落ち着けフラウ)」

 俺は何とか小声で宥めると、イルヴァさんに被害を訴えた。

「あとは、そこの棚の上に置いてあった精霊花の蜜が盗まれています。妖精の食べ物だったのでこれはどうにか取り戻してほしいんですが……」

 するとイルヴァは顔を曇らせた。

「なるほど。蜜いうのはそういうことやったんか……」
「そういうこと?」
「あとでな。他にはあらへんか?」
「他には……」

 俺はくまなく部屋を調べた結果、鉄の剣と鉄の盾、それにショートボウが盗まれていることが分かった。ポーション類は持ち運んでいたので無事だったが現金と☆4のアイテム、それにフラウのための蜜が盗まれている。

「さいでっか……ほならこっちに来たってや」

 イルヴァさんに連れられて自宅を後にする。次に向かった先は罪人を牢屋に入れておくための収容所だった。

「被害者さんを連れてきたで」
「はっ」

 収容所の前で警備をしていた衛兵たちがビシッと敬礼をすると扉が開かれる。この感じだと、この人は偉い人なのかもしれない。

「ほな、ついて来たってや」
「はい」

 そのまま建物の奥へ奥へと向かい、やがて一つの牢屋の前にやってきた。その中には一人の男が座っているが、その表情は虚ろで目の焦点が合っていないという表現がぴったりだ。

 俺はその男に見覚えがある。迷宮前の拠点で建設作業員をしていたあいつだ。

「お前はたしか……ミゲル、だったか?」

 俺の声にピクリと反応したミゲルは突然立ち上がり、牢屋の格子に突撃してきた。

 そして両手で格子をガシャガシャと動かすと予想外の言葉を口にした。

「ああああああ! ミツ! ミツをくれ! ミツ! ミツ! ミツをぉぉぉkぅあgrwnォ〇※★△■」

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私は関西弁のネイティブではありません。エセ関西弁は生暖かい目でご容赦頂くとともに、間違っていましたら感想欄で正しいものを教えて頂けると幸いです。
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