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「イヴェット、この首飾りを鑑定してくれ。贈り物にふさわしい額をつけてな」 夫が私の作業台へ連れてきたのは、愛人だった。 彼女の胸元には、金の花びらに囲まれた青い石が揺れている。 石の奥を覗いた私は、息を呑んだ。 小さな白い点の並び。結婚前、私が帳面に描き残した特徴と同じだった。 一週間前、夫は母の首飾りを売ったと告げた。 買い手はもう遠方だと。名前も売却の記録も、教えてはもらえなかった。 それなのに、母の石は愛人への贈り物に作り替えられていた。 「妻の物なら家の物だ」 私の形見を奪い、今度は私の署名で贈り物に箔をつけるつもりらしい。 私は婚前の帳面を開き、新しい枠を作った工房へ照会する。 力を貸してくれたのは、以前から私の仕事を認めてくれていた宝飾商だった。 母の思い出に言葉が詰まっても、彼は結論を急かさず、私の話を聞いてくれた。 夫が客を集め、愛人への贈り物を誇る披露会。 そこで鑑定結果を告げるのは、私だ。 母の形見も、私の仕事も、あなたの物ではありません。 自分の名で事実を書いた妻が、形見と仕事を取り戻し、新しい恋を選ぶ物語。 全6話・ハッピーエンド。
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王宮の春の仮面舞踏会。王妃の侍女を八年務めてきた子爵夫人ジスレーヌは、王妃の後ろで客の名をささやきながら、夫が連れてきた女を見た。女の顔を覆うのは、ジスレーヌが毎年自分で羽根を縫い直してきた銀の仮面。夫はその女を「妻」として王妃に挨拶させたのだ。招待状も夫の役目も屋敷の借入の保証も、支えてきたのは妻だと夫は知らない。けれど王妃はひと言で偽物を見抜き、仮面を外さない皮肉屋の公爵は、声だけで本物を聞き分けていた。元サヤなし。全七話。
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「今日から正妃はリュシアだ。君は側妃として残る」 八年尽くした夫に、エレオノーラは「華がない」と正妃の座を奪われた。 それなのに、新しい王妃の教育も、王宮の裏方も、これまで通り妻の務めとして続けろという。 ――承知しました。では、報酬をお支払いください。 離縁を申し立て、勤務時間と報酬を定めた元王妃。 もう誰かの失敗を、徹夜と我慢で埋め合わせるつもりはない。 教える相手の新王妃は、故郷を救いたい一心で、商人の要求に逆らえずにいた。 エレオノーラは彼女に、自分で判断するための授業を始める。 そして、彼女の仕事を当然のように尊重する隣国の外交官との間にも、少しずつ、私的な言葉が増えていく。 手放した妻が必要になっても、もう以前の二人には戻れない。 これは、便利な妻だった女性が、自分の仕事と新しい恋を取り戻す物語。 ※全28話・完結まで執筆済み。元夫との復縁なし。ハッピーエンド。
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王宮礼拝堂で開かれた娘の命名式。伯爵夫人マルヴィナが決めていた名を差し置いて、夫は幼なじみの男爵未亡人の名を告げた。祖母から継いだ名の帯まで取り替えようとしたとき、生まれて二十日の娘は帯の房を握って泣き、代父を務める北の大公が「赤子の指は、こじ開けるものではない」と止める。代母の王妃も偽りの名を拒んだ。持参金も領地の帳簿も夫の侍従の職も、支えてきたのは妻だと夫は知らない。帯に縫った名まで切られて、マルヴィナは娘を抱いて家を出る。元サヤなし。全七話。
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「系図に名を残せるのは、血のつながった者だけよ」 結婚して三年目の秋。 伯爵家の系図の更新の日、義母は、私の名を「同居人」の欄へ移した。 夫のヘクトルは頷き、ペンを置いた。 「筆記は、いつもどおり君が頼むよ。奉納の儀の支度もね」 家族の居場所が欲しくて嫁いだ三年間。 私は、無償で、一門すべての系図と相続台帳を書き続けてきた。 その夜、私は、王立系図院へ、筆記人の辞任届を出した。 私を迎えたのは、無表情な院長レオポルトと、 「この字を、三年間、ずっと探していました」という、思いがけない一言。 一方、私のいなくなった伯爵家では、台帳の書式が誰にも読めず、 奉納の儀の期限が、刻一刻と迫っていた。 系図が提出されなければ、一門の継承権は、すべて失効する。 儀式まで、あと三十日。
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