幻術師の泡沫花嫁
この国には、古くから幻術と呼ばれる不思議な術がある。それは火を起こさずとも熱を得ることができ、消えぬ灯りを灯し、時には人の傷や病までもを治す奇跡の術だった。
生まれながらにして幻術の源となる「人魚の涙」を流すことができる千花は、高額で取引されるその涙を父に搾取されながら育った。涙を得るために父に日常的な暴力を受け、飼い猫を殺され、親しい従者を殺され、孤独に耐えながら生きてきたのだ。
暴力に慣れ、次第に涙を流せなくなりはじめた十八歳の春、父の散財により没落寸前となった家を立て直すため、千花に身売り同然の縁談が持ち込まれる。
相手は帝都で名を馳せる幻術師であり、六年前に父に殺されたはずの元従者・朔だった。彼は、自分を殺しかけ、ごみのように捨てた浅海家と千花への復讐のために、千花を妻として買い取りに来たのだった。
「あなたはこれから死ぬまでずっと、ぼくのそばで償い続けるんですよ。千花お嬢さま」
【人魚の涙を流す薄幸令嬢】 × 【復讐を誓う元従者の幻術師】のすれ違いの恋の物語。
※他サイトにも投稿しています。
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