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15.パレード

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 シエラが鞘師に依頼した聖剣の鞘が完成するのを待ち、私たちはレイバーン王国を後にしようとしていた。

 ちょうどその日はダニエル王子とザハーのエレーナ姫との結婚パレードが行われていて、市場を抜ける際に私たちも人混みから馬車に乗る二人の姿を見かけた。

 幸せそうな表情で群衆に向かって手を振る二人の笑顔を見て、私はとても幸せな気持ちになった。
 隣にいるシエラを見ると彼も嬉しそうにパレードの二人を見ていた。
「ダニエル王太子、エレーナ王太子妃おめでとう」
 と多くの人々が歓声を上げる和やかなムードの中に、私は信じられないほど冷たい視線を感じて、息をひそめた。

「たった一人の跡継ぎの王子を呪うことでこの国を滅ぼし、この地を闇の教団が支配しようとしたものを……。またしても我々の計画を阻むのは聖女アイネ、貴様かっ!」

 まるで地鳴りのような恐ろしい声が響き渡った。

 恐怖のあまり私は凍り付いてガクガクと震えた。背中がゾクゾクして嫌な汗が止まらない。
 けれど周囲は誰も気付いていないようだ。私にしか聞こえない声だったのだろうか。

「……ネ、アイネッ!」

 横を向くとシエラが不思議そうにこっちを見ている。

「何か顔色が悪いよ。……もしかして人混みに酔った?」

 彼が手を引き、広場のベンチに座らせてくれた。

「飲み物買って来てあげる。ここで待ってて」

「いやっ! 行っちゃ嫌よ、シエラ。そばにいてっ!」

 背を向けて歩き出そうとしていた彼の背中へ私は大声を出しながらすがりついた。

「アイネ……」

 シエラの美しい碧眼が心配そうに私の瞳を見つめた。

 広場にはたくさんの人がいるのに、彼は私を優しく抱き締めて震えが収まるまで背中を撫でてくれた。

「きっと、疲れているんだね。ごめんね、俺のせいだね」

 ダニエル王子の呪いを解くために王子に抱かれているのを見た日から今日までの三日間、私たちは一度も宿から外出しなかった。昼も夜もひたすら私はシエラに抱かれ続けていたのだ。

 聖剣を手に入れることができたと喜んでいたものの、内心は王子に嫉妬していたのだ。王子に突かれた膣も後ろも繰り返し犯して、私の中の王子のペニスの感触を消そうとしているみたいだった。

「今夜、もう一晩この町に泊まろうか」

 ここ三日自分が激しく抱いたせいで私の体調が悪くなったと思ったシエラは出発の予定を伸ばそうと提案してくれたが、私はさっきの底知れない恐怖から逃れたくて、

「体調はもう大丈夫。早く次の町へ行きたいわ」

 と彼を急かした。

 もし闇の教団のものらしき声を聞いた、とシエラに相談したら、彼はきっとその教団関係者を探し出して果敢に立ち向かうだろう。
 しかし聖剣を手に入れたばかりの彼が太刀打ちできる相手かわからない。私にはこの世界の平和と同等か、それ以上に彼自身が大事なのだ。
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