短々編-1-なくし物

死を目前にした人は、ときに思いもよらないことを口にする。
それを知っていた僕は、ベッドに横たわる彼に尋ねた。
「死は、怖くないのですか?」
彼は穏やかに微笑みながら、こう答える。
「君、死とは、すべてを失くすことだよ」

時間の尽きかけた病室で交わされる、静かな会話。
そこには絶望も涙もなく、ただ真っ直ぐに『死』という現象を見つめるまなざしがあった。

人は、忘れ物なのかもしれない。

「死」を通して浮かび上がる、「生」の輪郭。
ひとつの終わりに寄り添う、短くも深い物語。
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