遥かに離れた家族 小説一覧
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プロローグ
地球上がマグマオーシャンに被われて322年目の2月……規模や質量に於いても、火星の衛星フォボスと同程度の反物質岩塊が太陽系に侵入した
多大な人的犠牲を払ったが捕捉して68日目に、土星を周回する軌道への投入に成功する
太陽系内市民社会は、このアンティ・マター・ショック・ディストゥルバンスを暫く引き摺っていたが……エネルギーの需要に対して供給が圧倒的に不足していた、当時の太陽系内市民社会に於いて……反物質岩塊をエネルギー資源として開発する事が喫緊(きっきん)の急務である事は……誰の目にも明らかだった
太陽系連邦政府はこの反物質岩塊へのアプローチを『地球型惑星探査推進本部』と『太陽系開発機構』に、それぞれ一任した
『地球型惑星探査推進本部』は、反物質を少量ずつ使用する、マイクロ・ブラックホールの生成と量産の事業に着手すると決定・表明し、『太陽系開発機構』は内部組織…『太陽系エネルギー開発庁』を中心に、反物質岩塊をエネルギー資源として開発する方針を打ち出した
『地球型惑星探査推進本部』は、直接的な主導・指揮の下に人員・資材・機械装置装備・船舶・エネルギーを動員して事業を推進し始めたが、『太陽系エネルギー開発庁』は、民間の研究開発機関から個人の科学者・研究者・技術者に至るまで広く呼び掛けてアイデアを募集し、プレゼンを求めた
その中で注目され取り上げられたのが若い新進気鋭の技術者、アンソニー・アンダーソンとエヴァー・アンダーソンのアンダーソン夫妻……彼らが新たに提唱していた『対消滅ロケット・タービン発電』の技術理論だった
この新理論を基に『太陽系エネルギー開発庁』が示した発意を受けて、『太陽系開発機構』はアンダーソン夫妻に対し莫大な投資を行い、新民間会社を設立……反物質岩塊に於けるエネルギー開発は民間事業としてスタートした
勿論民間開発事業は順調でも平坦でもなく、幾つかのトラブルや事故もあり犠牲も払ったがやがて軌道に乗った
その後の事業は右肩上がりに推移して、会社にも夫妻にも莫大な利益がもたらされた
その後また暫くが経過して『地球型惑星探査推進本部』はアンダーソン夫妻を呼び『地球人類潘種(はんしゅ)計画』への参加・協力を求めたのだった
具体的には太陽系を通過して去る巨大な高速航宙天体に潘種(はんしゅ)輸送準備船を設置して太陽系から出発させ、太陽系から11.9光年離れたくじら座を目指す
潘種輸送準備船に収蔵するのは、アンダーソン夫妻から提供される健康な卵子と精子
そしてアンダーソン夫妻を精巧・精緻に模倣・複製して…あらゆる情報をダウンロードし、必要なプログラムを施したコピー・アンドロイドと…必要とされる機械装置・設備・装備・機器・器機の数々を積み込むと説明された
文字数 13,683
最終更新日 2025.11.14
登録日 2025.11.04
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