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ことわりきれない長澤さん
物語は金曜日の午後五時二十分、営業一課のフロアから始まる。小林課長が大量の付箋が貼られた分厚いファイルを持って、長澤絹枝のデスクを訪れた。来週月曜日の朝イチに控える役員会に向け、自分がチェックしなければならない数字のデータを、絹枝に見てもらいたいと頼み込む。
隣の席にいた同期の佐々木は、「断れよ絹枝。それ、課長の個人的な宿題だぞ。今日金曜日だぞ」とすかさず忠告する。しかし、絹枝は頭の中で千回くらい断る練習をするものの、いざ口から出る言葉はいつも受け入れの形に変わってしまう。
「ふふ、大丈夫ですよ。私、週末は特に大きな予定もないですし。課長、月曜の八時半までにデスクに置いておけばいいですか?」と、笑顔で申し出を引き受けてしまった。課長は「本当!? 助かるよ?! 長澤さんは本当に女神様みたいだねえ!」と大喜びで手を合わせ、そのまま退社していく。
課長を見送ったあと、絹枝は「またやった……」と小さく息を吐いた。それに対し、佐々木は「またやったな」「お前さ、断らないんじゃなくて『ことわりきれない』んだよな。断ろうという意思はあるのに、語尾が全部受け入れの形になっちゃう。重症だよ」と呆れ果てる。絹枝が「だって、課長、本当に困り果てた顔をしてたし……それに、頼にされるうちは華かなって……」と言い訳をすると、佐々木は「その華、もう満開を通り越してジャングルになってるぞ」と鋭く突っ込むのだった。
この後、絹枝は無事に自分の週末を取り戻せるのか、それとも「ジャングル」のような頼まれごとの連鎖に巻き込まれていくのか――「ことわりきれない」彼女の日常と奮闘。
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文字数 4,431
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.09.05
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