菊 小説一覧

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九日の菊、天よりこぼれた露

九日の菊、天よりこぼれた露
九月九日、重陽の節句。 山あいの村で薬師として暮らす菊乃は、十五年前に都へ旅立ったまま帰らない兄・清隆を、今も待ち続けていた。 兄に渡した一輪の白菊。 「枯れても捨てないで。私だと思って」 その約束だけを胸に、菊乃は毎年九月九日になると、白菊を携えて「菊童子の泉」へ向かう。 そして今年も山道を歩いていた彼女は、石碑のそばで倒れている一人の老人を見つける。 老人の懐から現れたのは、長い年月を越えて大切に守られてきた、枯れた一輪の白菊だった。 「それ……」 十五年前の約束。 忘れられた名前。 失われた記憶。 そして、時を越えて再び巡り合う兄と妹。 菊の花言葉「高貴」「高潔」「高尚」と、重陽の節句に伝わる不老長寿の言い伝えをモチーフに描く、家族の絆と記憶、そして“誰かの心に生き続けること”をめぐる物語。 花はいつか枯れる。 けれど、誰かに託された想いまで、枯れてしまうとは限らない。 今年も白い菊の花びらに、天よりこぼれた露が宿る。
ファンタジー 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 4,635 最終更新日 2026.09.09 登録日 2026.09.09
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