「景人」の検索結果

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恋愛 完結 短編
婚姻届を出す前日、久世景人はようやく、十年遅れの婚約指輪を私の指にはめた。  銀色の輪が薬指に滑り込んだ瞬間、私は照明の下で光るダイヤをぼんやり見つめた。長く続いた待ち時間が、やっと終わったような気がした。けれど次の瞬間、彼は私の手を見下ろし、まるで似合わない品物を評するように静かな声で言った。 「正直、澪の手ってあまりきれいじゃないよな」  私は言葉を失った。  景人はそのまま私の指先を取ると、さっきはめたばかりの指輪を抜き取った。十年待ち続けた指輪は、彼の手のひらの上で冷たく光っていた。 「この指輪、瑠奈の手にあったほうが似合うと思う」  私は手を引き戻し、信じられない思いで彼を見た。 「どういう意味? 瑠奈と結婚するつもりなの?」  景人は目を伏せ、指輪の縁を指先でなぞった。まるで、たいしたことではない問いを少し考えているだけのようだった。 「そこまでじゃない。ただ、会えない時間が長くなると、どうしても瑠奈のことを考えるんだ」  その瞬間、私は自分がどうやってあのタワーマンションを出たのかさえ覚えていない。
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文字数 20,838 最終更新日 2026.07.07 登録日 2026.07.07
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