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彼の部屋にはしばしば花が飾ってあった。
彼は美しいものが好きな人だった。
表面ではなく、内面のうつくしさを見詰めることのできる人だった。
十一月二日、私は彼に花を贈ろう。
文字数 2,262
最終更新日 2023.11.02
登録日 2023.11.02
「どうしてわたしなんかを――……?」
問いかけると、年下のはずの彼は、すこしだけ大人びた微笑を見せた。
「ひみつだよ。――だって、そうしたらあなた、もっと僕のことを考えてくれるでしょう?」
宵国は、月仙女・姮娥娘々(こうがニャンニャン)の加護を受けて栄える国だ。
蘇紅月(そ・こうげつ)は、算術好きの変わり者。そのせいもあって、かつて婚約者に棄てられ、二十五歳になる今も独身のまま、自室で算盤と算木とに向き合うことだけに楽しみを見出す日々を送っていた。
そんな紅月のもとに、ある日、突如として、皇太孫(皇太子の嫡男)との縁談ばなしが舞い込んでくる。
皇太孫・李朗輝(り・ろうき)は、成人したばかりの十六歳。
自分などがそんな彼のお妃候補になどなるはずもない。もしかしたら何かの陰謀なのではないか。
そんなふうに疑いつつも、お見合いに出掛けた紅月を迎えたのは、涼やかな美貌を誇り、明るく溌溂とした少年だった。
隠そうとしても隠しきれない算術好きのために、奇異な行動、奇異な発言をしがちな紅月を、けれども朗輝は、ちっとも気にしたふうがない。
それどころか、紅月に対して甘い言葉を囁き、ぐいぐいと迫ってくる。
戸惑いながらも、どきどきしてしまう紅月だったが、その後、朗輝とともに出掛けた港で、紅月の元許婚とふいに再会したところから、事態は租税の不正案件という、思わぬ方向へと転がり始め――……。
算術マニアでちょっぴり引きこもり気味の行き遅れ令嬢、お見合いをきっかけに、年下皇太孫殿下から、謎の溺愛モードに突入……??
果たして、朗輝が紅月に求婚した理由とは――……?
文字数 107,549
最終更新日 2023.09.28
登録日 2023.08.31
――岩代真幸って、僕の名前。じいちゃんの弟子の律さんみたく、あなたもちゃんと読んでくれる?
新学期。
小学六年生の岩代真幸は、クラスメートの男子ふたりが険悪なムードになっている場面に遭遇した。なんでも、天狗を見たとか見ないとか……どうやらそんなことで、ふたりは言い争いになっているらしい。
「公園の桜の下で真っ赤な天狗を見た」
森本凛介は主張する。
「天狗なんて馬鹿みてぇ、この嘘つき」
立花悠翔は凛介を嘲う。
しかも、どうも、ふたりのこのいざこざには、水野周という、凛介の幼馴染を挟んでの友達関係も関わっているようなのだ。
凛介が一方的に嘲られる姿に堪りかねた真幸は、思わず立ち上がった。
「僕のじいちゃんは学者なんだ。天狗の謎が解けるかもしれない」
帰宅後、母の勧めで、祖父の勤める大学へ向かった真幸は、そこで祖父の弟子(ゼミ生)だという冴木律を紹介される。
真幸の祖父から真幸の手伝いを押し付けられた律は、困惑しながらも、真幸の天狗調査を手伝ってくれることになって――……。
文字数 97,920
最終更新日 2023.08.23
登録日 2023.07.29
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