かおるこ

かおるこ

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現代文学 完結 短編
『うちの隣人が、なぜか毎日ちょっと幸せを置いていく』
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小説 11,423 位 / 220,377件 現代文学 136 位 / 9,249件
文字数 52,012 最終更新日 2026.03.23 登録日 2026.02.12
現代文学 完結 短編
「12歳年上のマザコン夫と月15回のアポなし突撃義母~地獄の同居未遂から、二人まとめてゴミ箱へ~」 朝七時、静寂を裂くチャイムの音 「いるんでしょ」と 鍵を回す影 「健ちゃんのため」という 甘い毒を盛り 私の手料理を ゴミ箱へ沈める義母 「母さんは正しい」と 微笑む十二歳上の男 「養ってやる」と 見下す瞳の奥で 私の父が授けた 地位に胡坐をかき 私の貯金を 母の借金へ流し込む マザコンという名の 断てぬ臍の緒 教育という名の 支配の檻 けれどあなたは まだ知らない 私が元経理の 「数字の鬼」であることを 裏帳簿の綻び 消えた三百万 差し押さえられた 義母の城 積み上げた証拠は 鋭い刃となって あなたたちの 薄汚れた日常を切り刻む 「初めまして」と 地獄で挨拶しましょう プライドを剥ぎ 肩書きを奪い 愛した「お母様」と 手を取り合って 狭いアパートで 一生、共食いすればいい 空っぽになった部屋に 差し込む夕陽 私はもう 誰の着せ替え人形でもない 重たいゴミを まとめて捨てた朝 私の本当の人生が 今、紡ぎ出される
24h.ポイント 149pt
小説 8,885 位 / 220,377件 現代文学 93 位 / 9,249件
文字数 23,878 最終更新日 2026.03.23 登録日 2026.03.07
現代文学 完結 短編
『愛した人は、あの日死んだ』 あの日 あなたは、生きていた 笑って 触れて 名前を呼んでくれた人 でも 役所の白い光の下で あなたは、静かに死んだ 紙一枚で 七年がほどけていく音を 私は、確かに聞いた 「じゃあな」すらない背中は あまりにも軽くて あまりにも遠かった ねえ あなたが追いかけた“初恋”は そんなに眩しかった? 私と過ごした日々は どこに置いてきたの 冷たい床に膝をついて 吐き気と涙に溺れながら それでも 私の中で 小さな命が、灯った 皮肉だね すべてを失ったその日に すべてを守る理由を 与えられるなんて あなたは知らない あの日 あなたが捨てたのは 私じゃない 未来だったことを だからもう 振り返らない 死んだ人の名前は 呼ばない この腕にある あたたかい重みだけが 私の世界で 私の、すべてだから 朝が来る 何もなかったみたいな顔で 光は差し込むけれど 私は知っている あの日、確かに 一つの愛が終わり 一つの命が 始まったことを さよなら かつて、愛した人 あなたはもう ここにはいない ――だから私は 生きていく
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小説 1,834 位 / 220,377件 現代文学 18 位 / 9,249件
文字数 21,461 最終更新日 2026.03.22 登録日 2026.03.22
恋愛 連載中 短編
『最後の雨の、そのあとに。』 さよならを言った夜 街は静かに 銀色の雨に煙っていた 君は 僕の傘を残して 振り返らずに走っていった あの日の僕は 君を守ることばかり考えて 君が息をする場所を 忘れていたんだ 優しさは ときどき 檻になる 愛は ときどき 重さになる 君がいなくなった夜 傘の下で 初めて気づいた 守りたいと願うほど 人は 誰かを閉じ込めてしまうことを だから僕は その傘を そっと手放した 雨に濡れながら 歩くことを やっと覚えたんだ すると不思議だね 雨の向こうに もう一度 君が立っていた 傘もささず ただ 空を見上げて 泣いているのか 笑っているのか わからない顔で 僕は 新しい傘を開く 今度は 君を包むためじゃない ただ 隣を歩くために 最後の雨は まだ降り続いている だけど そのあとに来る空を 僕たちは もう知っている
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小説 23,192 位 / 220,377件 恋愛 10,199 位 / 64,267件
文字数 22,096 最終更新日 2026.03.22 登録日 2026.03.06
現代文学 完結 短編
『三ヶ月だけの婚約者 ― 嘘つきな体温』 三ヶ月だけの約束だった 指輪は借り物 笑顔も、言葉も ぜんぶ契約書の余白に書かれた嘘 あなたは冷たい人だと思っていた 雨の日に傘を差し出したその手も きっと合理的な計算で 伸ばされたものだと 「俺を好きになるな」 その一言で 世界はとても安全になった 恋をしなければ 傷つかなくて済むから だけど 同じ部屋の空気を吸い 同じ食卓の湯気を見て 同じ夜を越えていくうちに 嘘のはずの距離が 少しずつ 温度を持ちはじめる 触れない指先 触れてしまう視線 名前を呼ばれるたびに 胸の奥で何かが揺れた 三ヶ月の終わりが近づくころ 気づいてしまった あなたの言葉は 嘘だったかもしれないけれど あなたの体温だけは 一度も 嘘をつかなかったことに 契約は終わる 指輪も返す 役目も終わる それでも 最後に残ったこの温度を どう呼べばいいのか 私はまだ 知らないままでいる
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小説 220,377 位 / 220,377件 現代文学 9,249 位 / 9,249件
文字数 16,869 最終更新日 2026.03.22 登録日 2026.03.05
現代文学 完結 短編
『義父母の介護を十年終えた日に、夫から「おつかれー」と離婚届を渡されました。空っぽの人生だと思ったら、幼馴染が迎えに来ました』 『おつかれー、のあとで』 十年分の夜が、まだ指に残っている 呼ばれれば起きて 息を確かめて 名前を呼ばれても、私の名前ではなかった日々 義父の咳を数えた五年 義母の呼吸に合わせて眠った五年 時計はいつも、誰かのために進んでいた 終わった日 静かになるはずだった家で 紙切れ一枚が、私を外に出した 「おつかれー」 その一言で 十年は、なかったことにされた 遺されたものは 減った通帳と 戻らない時間と 履歴書に書けない日々 私の人生って、いったい何だったのだろう 駅前のベンチで 答えを探すふりをして ただ、座っていた そのとき 名前を呼ばれた ずっと昔と同じ声で 振り向くと 懐かしい顔がいて なにも聞かずに、ただ言った 「来いよ」 強くもなく 優しくもなく 当たり前みたいに 私は、その一言に はじめて自分を思い出した 空っぽだと思っていた十年は 消えたわけじゃなくて 誰かのために、ちゃんと燃えていた時間だった 「おつかれー」と言った人は なにも見ていなかっただけで 見ていた人は、ちゃんといた 白馬なんてなくてもいい 特別な奇跡じゃなくてもいい ただ 私の名前で呼んでくれる人がいる それだけで 私の人生は、もう一度はじまる
24h.ポイント 198pt
小説 7,463 位 / 220,377件 現代文学 77 位 / 9,249件
文字数 24,722 最終更新日 2026.03.22 登録日 2026.03.17
現代文学 完結 短編
『普通の夫だと思ってた』 ~無自覚な俺が、5年間の「記録」に殺されるまで~ 普通だと思っていた 朝、起きて 飯が出てきて 少し文句を言って それでも回る生活を 当たり前だと思っていた 「母さんの方がうまいな」 軽い冗談のつもりだった 笑ってくれると思っていた 黙っていた理由を 考えたことはなかった --- 普通だと思っていた 働いて 稼いで 家に帰る それだけで 十分だと信じていた 「俺は何もしてない」 本気でそう思っていた --- 気づかなかった 皿の置き方が 言葉の棘が 視線の冷たさが 少しずつ 削っていたこと --- 残っていたのは 音だった 「無能」 「役立たず」 「母さんならできる」 知らない声が 部屋に響く いや 全部 俺だった --- 普通だと思っていた 怒鳴らなければ暴力じゃないと 殴らなければ優しいと そう思っていた --- でも違った 何もしていないと思っていた時間が 一番、壊していた --- 五年分の沈黙が 机の上に並んだとき 初めて知った あれは 記録じゃない 傷跡だった --- 「1000万円」 数字は軽いのに 息ができなくなる 払えないからじゃない 理解したからだ --- あの日の朝 止まった手 伏せられた目 全部、見ていたはずなのに 何も見ていなかった --- 普通の夫だと思ってた そう思っていたのは 俺だけだった --- 声が、残る 笑っていたはずの部屋に もう誰もいない --- 遅すぎる そう思った時には もう 全部終わっていた --- それでも 頭のどこかで まだ思っている 「俺は、何もしてないのに」
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小説 4,809 位 / 220,377件 現代文学 47 位 / 9,249件
文字数 24,263 最終更新日 2026.03.22 登録日 2026.03.22
ファンタジー 完結 短編
『首輪を贈られた花嫁は、本物の聖女でした』 婚約の日、 あなたは指輪といっしょに 首輪をくれた。 「守るためだよ」と やさしい声で。 その声が いちばんきつく 私の喉を締めつけていたなんて あの頃の私は知らなかった。 夜ごと熱を帯びる金具。 朝には立てない体。 減っていく魔力を 「努力不足」と呼ぶあなた。 光に包まれる幼馴染は 涙を浮かべて言った。 「かわいそうに。 あなたには祝福がないのですね」 祝福がないのは どちらだったのだろう。 私の胸は空っぽになっていった。 時間も、労働も、愛情も、 目に見えない魔力も。 すべて あなたたちの光の燃料になっていた。 やがて心が消えた日、 私は森へ歩いた。 逃げたのではない。 ただ、もう 縛られる力が残っていなかっただけ。 森は静かだった。 誰も数値を測らない。 誰も期待しない。 誰も嘲らない。 そこで初めて、 私は自分の鼓動を聞いた。 「これは吸収の魔術だ」 穏やかな声が告げる。 首輪の内側に刻まれた 契約の文字。 守るためではなく、 奪うための祝福。 外された瞬間、 世界が息をした。 光が溢れたのではない。 ただ、 私の中にあったものが 私のもとへ戻ってきただけ。 森が揺れ、 精霊がひざまずき、 空が澄んだ。 そのときようやく知った。 聖女は 光を与えられる者ではない。 奪われてもなお 消えなかった者だ。 王都であなたは叫ぶだろう。 「僕が守ってやっていた」と。 違う。 私は 奪われていただけ。 指輪も、首輪も、 もういらない。 私の喉は自由だ。 私の魔力は私のものだ。 私の光は 誰かのために燃やされる薪ではない。 祝福は 選んで差し出すもの。 私は今日、 はじめて 自分を祝福する。 首輪はもうない。 それでも私は、 まだ こんなにも 光っている。
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小説 31,983 位 / 220,377件 ファンタジー 4,642 位 / 51,243件
文字数 52,686 最終更新日 2026.03.21 登録日 2026.03.01
現代文学 完結 短編
『離婚しないことが最大の復讐』 紙切れ一枚で 終わらせてあげるほど 私はやさしくない あなたが望む「自由」は 私の一言で手に入る だからこそ 絶対に与えない 愛はもうない とっくに死んだ 丁寧に分解して 跡形もなく処分した 残っているのは 名前だけの関係と 逃げ場のない現実 「夫」という肩書き 「父親」という役割 それら全部 あなたの鎖にしてあげる あなたは外に出られない 誰かを愛することも 誰かに選ばれることも もう許されない 私が許さない限り 毎朝 同じ家で目を覚まし 同じ空気を吸い 同じ沈黙を飲み込む それが罰 怒鳴りもしない 壊しもしない ただ 壊れない形で 壊し続ける 優しく笑ってあげる 完璧な妻として 非の打ち所のない生活で あなたの逃げ道を塞ぎ続ける 誰も気づかない でもあなたは知っている ここが檻だと ねえ 離婚してほしい? だめよ それは救いだから ——だから私は 一生 離婚してあげない
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小説 3,563 位 / 220,377件 現代文学 36 位 / 9,249件
文字数 25,440 最終更新日 2026.03.21 登録日 2026.03.21
現代文学 完結 短編
『10年目の断捨離 ―寄生夫、あなたの居場所はもうどこにもない―』 十年分の朝が 静かに、同じ場所で目を覚ましていた 同じ声 同じ靴下 同じ「まだ?」 そして、同じ沈黙   あなたは言った 「誰のおかげで食えてると思ってる」 私は知っていた その言葉の空洞を その声の軽さを その“外面”の重さを   あなたは積み上げていた 信用ではなく 見栄と借金と、他人の成果 私は積み上げていた レシートと ため息と 終わりの準備   気づかれないように 一枚ずつ剥がしていった あなたの顔を あなたの居場所を あなたの「当然」を   証拠は、静かに光る 怒鳴り声も 割れた音も すべて、逃げ場を失っていく   ねえ あなたは知らなかったでしょう 沈黙は、従順じゃない 我慢は、同意じゃない   ただ “終わりを選ぶ力”を 育てていただけ   最後の日 あなたは言った 「俺がいなきゃ生きていけないだろ」   私は、はじめて 何も怖くなかった   差し出した紙は 軽かった 十年よりも、ずっと   寄生していたのは どちらだったのか   答えはもう あなたのいない部屋にある   朝が来る 音もなく 責めることもなく   ただ、明るい   それだけで もう、十分だった
24h.ポイント 198pt
小説 7,463 位 / 220,377件 現代文学 77 位 / 9,249件
文字数 22,844 最終更新日 2026.03.21 登録日 2026.03.21
現代文学 完結 短編
『夫はやってないと、妻は言えるか』 満員電車の匂いがする 鉄と汗と、知らない誰かの体温 その中で あなたは、何をしていたの ――やってない その一言が どうしてこんなに重たいのだろう   警察署の廊下は冷たくて 床の光がやけに白い あなたはガラス越しに 指先を動かすだけで 何も触れられない 「信じてくれ」 わたしは、うなずく代わりに 唇を噛んだ   信じたい でも 世界はもう、あなたを “やった人”として扱っている ニュースにもならない罪が 静かに、生活を壊していく 洗濯物を干すとき 隣の窓が閉まる音 スーパーで 会釈が返ってこないこと それだけで 胸の奥がざらざらする   ――本当に? その言葉が 何度も喉まで上がって 何度も、飲み込まれる   あなたのシャツには 柔軟剤の匂いしか残っていない 指紋も、証拠も、見えないのに 疑いだけは こんなにも、はっきりしている   ねえ わたしは、あなたの妻だけど あなたの“その瞬間”を 見ていたわけじゃない   だから 「やってない」と 言い切ることができない   それでも   あなたが 壊れていくのを見ている 目を合わせられなくなることも 電車に乗れなくなることも 夜中に、息を殺して泣いていることも   それは、知っている   だから わたしは   「やってない」とは言えない   でも 「あなたは、やった人だ」とも 言わない   そのあいだに立って ぐらぐらと揺れながら それでも、倒れないように あなたの隣に立つ   それが わたしにできる たった一つの証明だから   朝 人の少ないホームで あなたは、震える手で 吊革を持つ   その背中に わたしは言う   「いってらっしゃい」   信じる、の代わりに 生きる、を選ぶように   今日も、わたしは あなたの妻でいる
24h.ポイント 149pt
小説 8,885 位 / 220,377件 現代文学 93 位 / 9,249件
文字数 20,679 最終更新日 2026.03.20 登録日 2026.03.20
現代文学 完結 短編
『臨月の私に離婚届を送ってきた単身赴任中の夫へ』 臨月の腹を抱えた私に あなたは愛ではなく 紙を送ってきた 白い封筒 薄くて 軽くて けれど 八ヶ月分の孤独より ずっと重かった 離婚届 まるで事務処理みたいな声で あなたは言ったね 財産分与もする 慰謝料も払う 養育費も払う だから書いて出してくれ だから、だって その「だから」に あなたのすべてが詰まっていた 泣くと思った? 取り乱すと思った? 許しを乞うと思った? 残念 私はもう あなたが誰と眠り どこに金を隠し どんな嘘で私を処理しようとしたのか とっくに知っている 深夜に切られた通話も 減っていった生活費も やけに丁寧になった言い訳も ぜんぶ 証拠になった あなたは知らなかったね 母になる女は 弱くなるんじゃない もう 守るものを決めてしまった人間になるんだよ だから私は言った はい、喜んで その一言は 服従じゃない 終わりの合図でもない 反撃の 口火だった あなたはきっと 安心しただろうね やっぱりこいつは従うって 泣いても最後は俺にすがるって 違うよ 私が差し出したのは 別れの紙じゃない あなたが見落とした 私の時間 私の痛み 私の尊厳 その全部の請求書だ あなたが捨てたつもりでいたものは ゴミなんかじゃなかった 息をしていた 耐えていた 調べていた 待っていた 私と この子の未来を守るために あなたが凍りつく顔を見ても もう 胸は痛まなかった 遅いんだよ 私が本当に凍えたのは 夜中にひとりで胎動を数えたとき 破水が怖くて眠れなかったとき それでもあなたが 別の女に「もうすぐ片づく」と送っていた あの瞬間のほうだった だから今さら 震えるのは 私じゃない 泣くのも 私じゃない 私は産む 終わった愛じゃない 始まる命を 私は書く 離婚届じゃない 取り戻すための名前を 私は生きる 捨てられた妻としてじゃない 選び直した母として 聞こえる? あなたが切り捨てたと思った人生は ここでちゃんと 息を吹き返している はい、喜んで その言葉のほんとうの意味を あなたはたぶん 一生かかっても知らない
24h.ポイント 3,528pt
小説 360 位 / 220,377件 現代文学 5 位 / 9,249件
文字数 26,287 最終更新日 2026.03.20 登録日 2026.03.20
現代文学 完結 短編
「完全分離のはずでしたが、義妹が毎日子供を置いていきます」 玄関は、別 鍵も、別 水の音も、食卓の匂いも 交わらないはずの設計図 けれど朝になると 境界線はやわらかくなる ピンポンは鳴らない ノックもない ただ、開く音だけがして 小さな靴が、こちら側に増える 「ちょっとだけ」 その言葉は 日付のない約束みたいに 毎日を連れてくる 机の上の仕事は 途中で息を止める 画面の向こうの誰かに 謝る回数だけ、私が減っていく 完全分離、という言葉を 何度も口の中で転がしてみる 角ばっていたはずの意味は いつのまにか丸くなって どこへでも転がっていく 「家族でしょ」 そう言われるたび 私の輪郭が、少しずつ薄くなる ドアは、閉めている 鍵も、かけている それでも毎日 こちら側に置かれていくものがある 子供と 時間と 名前のない役割 境界線は、見えない けれど確かに 踏み越えられている 私は今日も その線をなぞり直す 消えないように 消されないように 自分のために
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小説 11,423 位 / 220,377件 現代文学 136 位 / 9,249件
文字数 25,870 最終更新日 2026.03.20 登録日 2026.03.20
現代文学 完結 短編
遅いですわ 名前のない日々に 最初から名札はついていなかった 白い壁と、少し古い匂い 誰かの泣き声が夜を均す あれはたぶん、わたしだった 捨てられた理由を 大人は優しい言葉に言い換えるけれど 言葉はいつも 事実より少しだけ臆病だ だからわたしは 事実の側に立つことにした 条文は嘘をつかない 少なくとも、人よりは 守られるべきものが 守られないまま放置されるなら それは不運ではなく 構造だと知った日から わたしは泣くことをやめた 代わりに 書くことと、読むことと、戦うことを覚えた 正しさは、ときに刃物だ それでも持たなければ 誰かの喉元に当てられるのは いつだって弱い側だから 拍手の音は 意外と軽い 総理、という呼び名も 紙一枚の重さしかない ただ 積み重ねた夜だけが わたしの体温に似ている ——あの日、 あなたたちはわたしを置いていった 理由は知っている 今なら、理解もできる 理解できてしまうことが こんなにも冷たいとは思わなかった 「家族になりましょう」 遅れて差し出されたその手は 正しく整えられていて 非の打ちどころもなく だからこそ どこにも触れなかった わたしはもう 待っていない あの夜に置き去りにしたものは あなたたちだけではなくて わたしの中の 小さな祈りでもあったから 今頃引き取りに来ても 遅いですわ これは勝利ではない ただの時間の結果だ それでも この国のどこかで 名札を持たない子どもが 名前を呼ばれる日が来るなら わたしは もう少しだけ ここに立っていようと思う 静かな場所で 誰にも聞こえない声で 「大丈夫」と言えるように
24h.ポイント 149pt
小説 8,885 位 / 220,377件 現代文学 93 位 / 9,249件
文字数 54,435 最終更新日 2026.03.19 登録日 2026.03.19
現代文学 完結 短編
熟年離婚~37年目の逆襲~ 気がつけば 名前より先に 「お金」と呼ばれていた気がする 朝も 夜も 黙って働き 通帳の数字だけが 生きてきた証だった ありがとう、は 一度も聞かなかった ただ 足りない、と ため息だけが増えていった 三十七年 長かったのか 短かったのか わからないまま 気づけば 心だけが置き去りになっていた ある日 ふと聞かれた 「あなた、自分の人生を生きてる?」 その言葉が 胸の奥で ずっと凍っていた何かを 静かに溶かした 遅すぎると 誰かが笑うかもしれない でも 遅いことと 間違っていることは 同じじゃない はじめて 自分のために使った 小さな一杯のコーヒーは 涙の味がした それでも 確かに 自由の味がした もう 誰かのための人生は終わりだ 通帳ではなく 心で生きると決めた日 私は 初めて 自分の名前を取り戻した
24h.ポイント 49pt
小説 17,027 位 / 220,377件 現代文学 165 位 / 9,249件
文字数 43,609 最終更新日 2026.03.19 登録日 2026.03.19
現代文学 完結 短編
「令嬢は微笑みながらすべてを終わらせる」 静かな朝、光はレースのように差し込み 磨かれた床に、影をやさしく落とす ここは、わたくしの城 けれどその日、鍵の音は礼を欠いていた 「家族でしょう?」 その一言が、空気を濁らせる 香っていた紅茶は、いつしか冷え 言葉は刃となり、微笑みの奥をかすめる けれど―― 令嬢は叫ばない 涙で勝とうとはしない ただ静かに、すべてを整える 執事は時を測り メイドは記録を整え 医師は痛みを言葉に変え 弁護士は真実に輪郭を与える 見えなかったものが、形を持ち 曖昧だった日々が、証明へと変わる 「家族でしょう?」 その問いに、もう揺れはない 微笑みは、武器となる 沈黙は、刃よりも鋭く 品位とは、声を荒げぬ強さ そしてその日 扉は再び、正しく閉じられる 余計な足音は消え 空気は澄み 紅茶は、ふたたび香る 令嬢は、ただ微笑む ――すべては、終わったのだから
24h.ポイント 248pt
小説 5,785 位 / 220,377件 現代文学 57 位 / 9,249件
文字数 22,628 最終更新日 2026.03.19 登録日 2026.03.18
現代文学 完結 短編
『離婚して7年後、再婚を報告したら元夫が「俺が捨てたゴミを誰が拾うんだ?」と言ってきた。新しい夫が名刺を差し出した瞬間、元夫は凍りついた』 カップの底に残った苦いコーヒーを ゆっくり飲み干したのは、 あの日の続きを、やっと終わらせるためだった。 「久しぶり」 その声は、昔よりも軽くて、 けれど同じ場所に突き刺さる。 「再婚するんだって?」 「……うん」 指先が少しだけ冷たい。 けれど、もう震えはしなかった。 「誰が拾ったんだよ」 笑いながら言う。 昔と同じ顔で。 「俺が捨てたゴミをさ」 その言葉は、 一度死んだはずの痛みを ほんの少しだけ揺らした。 だけど、 胸の奥に落ちた音は、 昔みたいに割れなかった。 ただ、静かに沈んだ。 ――ああ、まだこの人は、ここにいる。 七年前のまま、 同じ場所で止まっている。 私は、違うのに。 カップを置く音が、小さく響く。 それが合図みたいに、 隣にいた人が、 ゆっくりと名刺を差し出した。 「その言葉、訂正していただけますか」 低くもなく、高くもない声。 ただ、まっすぐで、 逃げ場のない音だった。 白い紙が、 テーブルの上に置かれる。 たったそれだけのことなのに、 空気が変わる。 温度が、一度下がる。 呼吸の仕方を、 忘れたみたいに、 沈黙が落ちる。 元夫の視線が、 紙の上を滑って、止まる。 その瞬間、 何かが壊れる音がした。 それはきっと、 プライドとか、 思い込みとか、 「自分が上だ」という 見えない骨組みみたいなもの。 「……は?」 掠れた声が、 やっと出てくる。 でももう遅い。 七年は、 ちゃんと流れていた。 私は、 あの場所に置き去りにされていない。 拾われたわけでもない。 救われたわけでもない。 ただ、 歩いてきただけだ。 自分の足で、 ゆっくりと、 何度も立ち止まりながら。 「ゴミじゃないですよ」 隣の人が、静かに言う。 「最初から」 その言葉に、 胸の奥の、 ずっと固まっていた何かが、 やっとほどける。 あの日、捨てられたのは、 私じゃない。 価値でもない。 ただひとつ、 誰かを正しく見ることのできなかった、 その視線だった。 私は、 それを拾わなかった。 だから今、ここにいる。 名前を呼ばれて、 当たり前に、 隣に座っている。 それだけでいいと、 思える場所に。
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小説 493 位 / 220,377件 現代文学 6 位 / 9,249件
文字数 20,858 最終更新日 2026.03.18 登録日 2026.03.18
現代文学 完結 短編
『長女だからと介護を押し付けられ会社を辞めた私、 父の葬式の翌日に追い出されたので―― 特約付き贈与契約と不当利得返還請求で兄夫婦を破産させます』 ― 詩 ― 長女だから、と 何度言われただろう。 その言葉は 鎖のように 静かに私の人生を縛った。 会社を辞めた日、 誰も「ありがとう」とは言わなかった。 夜中の三時、 父の呼吸を確かめながら 私は天井を見ていた。 人生は、 こんなふうに すり減っていくものなのだと。 兄は言った。 「家族なんだから」 兄嫁は笑った。 「独身なんだから」 その言葉が 刃のように胸に刺さっても 私は黙っていた。 だって私は 長女だったから。 けれど 父の葬式の翌日。 玄関の前で 言われた言葉は それでも、あまりに軽かった。 「もう用済みだから」 雨が降っていた。 三年分の時間が アスファルトに溶けていく。 私は思った。 ああ、そうか。 家族って こういうものだったのか。 だから私は ポケットから 一枚の紙を取り出した。 それは 感情ではなく 涙でもなく 法律だった。 契約は嘘をつかない。 証拠は裏切らない。 そして制度は 静かに すべてを計算する。 長女だから。 その言葉で 奪われた時間は戻らない。 けれど その言葉で 踏みつけられた人生を 取り返す方法なら 知っている。 雨はやがて止む。 そして 私の名前で 新しい扉が 静かに登記される。 今度はもう 誰のためでもない。 これは 私の人生だ。 ようやく そう言える 朝が来る。
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小説 8,885 位 / 220,377件 現代文学 93 位 / 9,249件
文字数 21,676 最終更新日 2026.03.17 登録日 2026.03.17
現代文学 完結 短編
**私は弟のために生まれたんじゃない** 〜「お姉ちゃんなんだから」と人生を搾取された私、弁護士になったのでクズ家族に返還請求します〜 --- お姉ちゃんなんだから、と 何度言われただろう その言葉は 優しい教えの顔をして 私の首に巻かれた 見えない鎖だった 譲りなさい 我慢しなさい 助けなさい 夢を見る前に 夢を諦めることを 教えられた 弟の皿には 肉が山のように積まれ 私の皿には 冷えた残り物 それでも母は言う 「お姉ちゃんなんだから」 その言葉が まるで呪文のように 私の人生を 少しずつ削っていった --- 私は弟のために生まれたのだと 信じていた そう思わなければ この人生を 耐えられなかったから けれどある日 一冊の本を開いた そこには書かれていた 権利 という 初めて見る言葉 私はその文字を 何度もなぞった 権利 それは 私にもあるものなのだろうか --- 長い夜を越えた 眠れない机 ページをめくる音 誰にも知られない努力 それでも 心の奥では ずっと響いていた 「お姉ちゃんなんだから」 その言葉と 戦いながら 私は歩いた --- そして今日 私は静かに書類を差し出す 震えない手で 条文を読み上げる あなたたちが 当然だと思っていたもの それは 搾取という名前だった あなたたちが 愛だと思っていたもの それは 支配という形だった --- 私は弟のために生まれたんじゃない 私は 私のために生まれた 今日から私は 娘でも 姉でもない あなたたちの **債権者よ**
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小説 5,785 位 / 220,377件 現代文学 57 位 / 9,249件
文字数 18,377 最終更新日 2026.03.16 登録日 2026.03.16
現代文学 完結 短編
幸福な家庭のふりをした地獄 「幸福な家庭はどれも似ている」と かつての文豪は 紙に書きつけた けれど この家のドアの向こう側 熟した果実の芯は とうに腐り落ちていた 朝陽に照らされた 清潔なリネン 「理想の夫」を演じる 傲慢な足音 茶碗の置き方 服の畳み方 すべてを支配する 透明な暴力(モラハラ) 「誰の金で食っていると思っているんだ」 その言葉を あなたは盾にして笑ったけれど 盾の裏側で 私が何を磨いていたか 想像もしなかったでしょう? キーボードを叩く音は 未来を綴る鼓動 ボイスレコーダーの赤い光は あなたの断罪 「飯炊きババア」と あなたが吐き捨てた夜 私は密かに 自由の香りに酔いしれた 定年の鐘は 終わりの始まり 差し出された離婚届に 私は微笑みで応える あなたが夢見た 若き恋の蜃気楼は 「将来性」という冷徹な篩(ふるい)にかけられ消える 残されたのは 洗濯機の回し方も知らぬ男 ぬるいコンビニ弁当の 寂しい底の味 「不幸な家庭は それぞれに不幸である」 その一節が ようやくあなたの胸を刺す 私はもう 似たり寄ったりの幸福には戻らない 自分だけの足跡で この大地を踏みしめて かつて「地獄」と呼ばれた場所を 風の吹き抜ける ただの空き家にするために
24h.ポイント 99pt
小説 11,423 位 / 220,377件 現代文学 136 位 / 9,249件
文字数 31,095 最終更新日 2026.03.14 登録日 2026.03.06
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