9
件
かつて、世界は六つあった。
十年前、世界間の門を管理していた門界《レムナ》は、一夜で地図から消滅した。
公式記録に残された死者は三百十二人。
実行者は、たった一人で国家の通信・軍事・政治を停止させた停戦執行人、グレイ・ハザード。
通称――《灰色の悪魔》。
現在、五十一歳となったグレイは、古びた事務所で個人から依頼を受ける境界探偵として生きていた。
五つの世界の代表が集まる最高級ホテル・アーク。
会議を目前に、ホテル危機管理室リゼット・モーンの机へ一枚の予告状が届く。
午前零時、六人目の代表が殺される。
しかし、会議に出席する代表は五人しかいない。
そして午前零時。事件が起こる。
監視映像に出入りした者はいない。
現場には、各世界すべてを犯人に見せかける証拠が残されていた。
朝六時までに真相を示せなければ、五界協定は失効し、世界間戦争が始まる。
六人目の代表とは誰なのか。
犯人は、なぜ五つの世界を争わせようとしているのか。
そして、十年前に死んだとされる三百十二人に、何が起きたのか。
一国を消した五十一歳の境界探偵と、ホテル設備に詳しい二十六歳の担当官が、一夜で世界の嘘を暴く。
現代ホテル×異世界外交×密室殺人。
イケオジ探偵による、現代異界サスペンス・ミステリー。
文字数 48,421
最終更新日 2026.08.14
登録日 2026.08.04
五分だけ待って。その声は、本当に誰かを救ったのか。
顔も名前も出さず、声だけで夜の配信を続ける青年・目黒湊。
配信名は、ヨル。
彼の配信には、眠れない人、学校へ行けない人、家に帰れない人、死の直前で立ち止まる人たちが集まってくる。
湊ができることは、解決ではない。
ただ、声をかけること。
「五分だけ待ってください」
その一言で、湊は画面の向こうにいる誰かの夜を、何度もつなぎ止めてきた。
けれど、ある屋上の少女を救った夜を境に、湊の配信には少しずつ違和感が生まれ始める。
救ったはずの人が、同じ場所へ戻される。
守るために伏せたはずの名前が、別の場所で浮かび上がる。
誰かを助けるための言葉が、いつの間にか誰かを追い詰めるものへ変わっていく。
そして湊自身も、自分の声の中にある別の感情から目を逸らせなくなっていく。
声は、人を救えるのか。
それとも、声だけでは届かない場所があるのか。
これは、夜の底で誰かを救おうとした青年と、救われたあとも痛みを抱え続けた人たちの物語。
文字数 82,355
最終更新日 2026.08.03
登録日 2026.07.17
一年間の音楽活動に区切りをつけようとしていた歌手・一ノ瀬明里。
最後に残すため、始まりの曲『明日へ、息をして』のLIVE TAKEを撮影した夜、明里は駅前の閉鎖された地下通路《迷い口》で、泥だらけの少女の指を見つける。
少女は、明里の歌だけが暗闇の中で一つの方向から聞こえたと言う。
偶然か、奇跡か。
その救出動画をきっかけに、誰にも届いていないと思っていた明里の歌は広がり始める。
しかし、同じ《迷い口》では、まだ一人の少女が行方不明になっていた。
その少女・凛は、明里の楽曲を母へ送り続けていた。
『Glass Heart』も、『背中の向こう』も、『光のその先へ』も。
それは、母に届かなかった、凛の心の叫びだった。
歌で人を救えるとは思えない。
それでも、暗闇の中で誰かがまだ息をしているなら。
明里はもう一度、マイクを握る。
終わるはずだった歌が、迷い込んだ少女と、すれ違った母娘を明日へ導く、音楽×現代ファンタジー短編。
【関連楽曲】
本作に登場する一ノ瀬明里の楽曲は、
YouTube「Cinematic MV Project」にてミュージックビデオを公開しています。
『明日へ、息をして』
『Glass Heart』
『背中の向こう』
『光のその先へ』
また、本作の結末と繋がる
『明日へ、息をして』LIVE TAKEも公開中です。
文字数 10,260
最終更新日 2026.07.10
登録日 2026.07.10
王都は焼け、国境砦も落ちた。
千人を超える避難民を守りながら逃げる護衛隊の前に、崩落寸前の石橋が立ちはだかる。
誰もが橋を渡ろうとする中、最低等級の測量士ルカ・セイルだけが、その橋が落ちることを見抜いた。
橋は崩れ、背後からは敵兵と大型兵器が迫る。
絶望の中、ルカが示したのは、地図から忘れられた旧道――白粘原を抜ける一本の道だった。
亡国の姫セレナとともに、ルカは荷車を捨て、杭を打ち、泥地を読み、千人の避難民を生かすための道を造る。
剣で敵を倒すのではない。
魔法で奇跡を起こすのでもない。
地面を測り、道を選び、敵が渡れない場所へ変える。
落ちこぼれと呼ばれた測量士が、一夜で千人を超える命を救う、異世界測量ファンタジー。
文字数 9,567
最終更新日 2026.07.09
登録日 2026.07.09
風見悠は、サッカーを見るのが好きな高校生だった。
けれど、現実のピッチに立つことはなかった。
足が速いわけでもない。身体が強いわけでもない。部活で名前を残したわけでもない。
そんな悠が唯一、誰かと同じピッチに立てる場所がある。
サッカーゲーム《WORLD ELEVEN》。
同時接続三人の小さな配信で、悠は全国上位プレイヤーを相手に、誰も気づかなかった逃げ道を見つける。
派手な操作も、超人的な反射神経もない。
あるのは、相手が崩れる順番を読む目だけ。
疑惑、炎上、ライバルとの敗北を越え、悠のプレーはやがてプロチームBLUE LYNX、そして日本代表候補の目に留まっていく。
最初はただ、疑われたくなかった。
次は、負けたままで終わりたくなかった。
そして悠は、初めて口にする。
「勝ちたい」
同接三人の無名配信者が、戦術だけでプロへ、代表へ、世界へ続く扉を開く。
これは、現実のピッチに立てなかった少年が、画面の中で仲間と出会い、もう一つのサッカーで世界を目指す物語。
文字数 131,251
最終更新日 2026.07.04
登録日 2026.06.08
最底辺Fランクの俺は、黒仮面を被った瞬間、王都最強クラスの力を手に入れた。
でもその代償は、記憶と感情、そして“人間の俺”そのもの。
無双するほど壊れていく俺は、正体を隠したまま“黒い騎士”として王都を守ることになる。
戦場の後始末しかできなかった回収係が、
最強の女騎士レオナと並び立ち、
“黒い騎士”として王都を救っていく。
でも、その代償は重すぎた。
仮面を使うたびに上がる臨界域。
削れていく記憶。
薄れていく感情。
そして敵は、なぜか“黒い騎士”である俺だけを執拗に狙い始める。
仮面がなければ、ただの雑魚。
仮面を被れば、誰よりも強い。
だけどその強さは、少しずつ俺を人間の側から引き剥がしていく。
これは、
誰かを守るたび、自分を失っていく最底辺Fランクの英雄譚。
文字数 374,153
最終更新日 2026.06.29
登録日 2026.05.02
鐘が五回鳴った日、王都南区の市場は戦場に変わった。
母とはぐれた少女ミナの前に現れたのは、黒い狼型の機械兵。
誰も間に合わない。
誰も助けられない。
その時、ひとりの若い回収係が飛び込んだ。
兵士ではない。
英雄でもない。
ただ、誰より早く少女の前に立った青年。
だが、彼は機械兵との戦いの中で瓦礫の底へ落ちていく。
そして次に現れたのは、黒い仮面をつけた、人ではない何かのような男だった。
名も告げず、礼も受け取らず、黒仮面は少女を救い、さらに暗い戦場へ走っていく。
これは、王都の片隅で少女が見た、黒い騎士の夜の記憶。
『俺だけ【リミットブレイク】』本編へつながる外伝短編。
文字数 3,825
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.05.31
9
件