世の中には、2つのタイプの人がいます。
1つは、お金が自然に貯まるタイプです。こういう人はなんとなく支出の管理ができ、収入に見合った暮らしができ、貯蓄もちゃんとでき、投資なんかにもチャレンジしたりして、普通に暮らしているだけでお金が貯まっていきます。
もう1つは、なぜかお金が貯まらないタイプです。贅沢をしているわけじゃないのに貯蓄は増えず、たまに支出が収入を超えてしまう月があったり。使っていないサブスクを解約するのが面倒で、放置していたり……。良く言えば「おおらか」、ちょっと悪く言うと「ズボラ」と言われてしまうような人です。
この連載では、こうしたタイプの違いを「変えられない性質によるもの」として割り切り、ズボラな人でも、無理せず、ラクに、ズボラなままで、お金が貯まっていく・増えていく方法を、ファイナンシャルプランナーの岩切健一郎さんに解説していただきます。
お金のプロでありつつ、自身がADHDの特性を持ち、お金のトラブルに見舞われた経験が豊富な岩切さんだからこそ知っている、ズボラな人でも今日からお金が貯まりだすノウハウが満載です。
世の中にあふれるお金のアドバイスは、言ってしまえば、できる側の人側のアドバイスがほとんどです。もちろん、努力でお金を管理できる人は素晴らしいです。でも、それができないズボラさんだからといって、あなたが劣っているわけでは決してありません。
むしろ、私は逆に「ズボラであることは、才能になりえる」と考えています。ズボラだからこそ、ズボラなままでお金が貯まる工夫を考える。ズボラだからこそ、無理せず継続できるアイデアを思いつく。「面倒くさい」を出発点にして、一緒に考えていきましょう。
では、どうやって「ズボラなまま」でお金の土台を作っていけばいいのでしょうか。
その具体的なステップとして、私が提案したいのが次の3つです。どれも難しい知識は一切不要で、今日からすぐに始められるものばかりです。
まずは全体像を見てみましょう。
1.自分の「やる気」や「意志」を1ミリも信用しない
2.すぐやる・誰かとやる仕組みを作る
3.メインの支払い方法をクレジットカード1枚に絞る
今回は、1つめについて解説します。
ズボラのままでも、お金と上手に付き合うために、まず絶対に守ってほしい「鉄の掟」、それは、「自分のやる気や意志を、1ミリも信用しない」ということです!
せっかく「お金の問題を解決しよう!」とこの記事を読んでくださった皆さんに、いきなり水を差すようなことを言って申し訳ありません。でもこれが、どん底の状態から資産形成するに至った自分の経験と、FPとして多くの方の家計を見てきた私が辿り着いた、最も大切な真実です。
「よし、今日から家計簿をつけるぞ!」
「今月こそは無駄遣いをやめよう!」
そんな決意を何度も繰り返しては挫折してきたあなた。大丈夫です。
私も挫折してきた人間です。今も家計簿をつけていませんし、無駄遣いがないとは言い切れません。それでもお金は貯まっています。
そもそも、この決意を持ったままでい続けられる人は、ズボラさんではないですもんね。「家計簿をつけたい!」と思ったそのエネルギーは本物だと思いますし、その時の「変わりたい」という願いに嘘はないはずです。もしかしたら、家計簿やアプリを使って数日、数か月続けるところまではたどり着いた方もいるかもしれません。でもそれ以上は続かなかった。
だからこそ、今こうして読んでくださっているのだと思います。
想像してみてください。
「今日からお金のことちゃんとするぞ」というそのやる気は、いわば「真夏の太陽の下に置いたソフトクリーム」のようなものです。
買った瞬間は形も綺麗で、冷たくて、美味しそうですよね。でも、そのまま外に置いておけば、ものの数分でドロドロに溶けて形を失ってしまいます。
仕方のないことです。
体調が優れずに家計簿をつけることができなかったとき、冠婚葬祭が続いて特別な出費が増えたとき、大きな買い物をしたとき。「お金をちゃんとしよう」という決意は、真夏のソフトクリームのように溶けてしまいます。
それはあなたがだらしないからでも、根性が足りないからでもありません。多くの人にとって、やる気はソフトクリームなのです。
だからこそ、やる気を使わない方法を考えるのです。
かつての私の話を、少し詳しくさせてください。
借金が500万円あった頃、私の部屋は足の踏み場もないほど散らかっていました。脱ぎ捨てた服、中身が入ったままのコンビニの袋、そしてポストには溢れんばかりのDMや督促状や払込票。
仕事は手を抜かずに頑張っていましたが、プライベートではズボラの極みでした。部屋がこんな状態なので、お金のことなんて二の次の次の次。
当時の私は、毎日のように自分にこう言い聞かせていました。
「今は仕事が忙しいから。明日、心に余裕ができたら一気に整理しよう。本気を出せばできるはずなんだ」
この「本気を出せばできる」という幻想こそが、私を20代の間、どん底に繋ぎ止めていた鎖でした。
「本気を出す=意志の力・やる気で解決する」と真剣に考えていたのです。
今考えるとなかなかにヤバいですよね。
明日の自分に期待し続ける毎日。楽観的な性格なので自分を責めることはなかったですが、危機感もありませんでした。今振り返ると、現実を見ないようにしていたのだと思います。
そして今ならわかります。私がやるべきだったのは、「明日本気を出すこと」ではなく、「本気を出さなくてもいい仕組み」を一つだけ作ることだったのです。