真中流マネジメント

真中流2軍論(2)――立場の異なる選手達のマネジメント法

2016.09.09 公式 真中流マネジメント 第12回

野球以外のこともマネジメントする

1、2軍監督のコミュニケーション
若手選手への人間教育

2軍の競争の中で勝ち上がった選手をどのタイミングで1軍に昇格させるか、というのは非常に難しい問題です。1軍のニーズ、各選手の調子、将来性など、様々な要素を総合的に判断する必要がありますから。2軍監督時代はどうかというと、「1軍からのニーズは、おそらくこういうものだろう」と、1軍の状況を自分なりに読み取って2軍を指揮していました。というのも、デイゲームの多い2軍とナイター中心の1軍ですから、時間帯が合わず、こちらから連絡を取ることを躊躇していたんですね。
そんな経緯もあり、1軍監督になってからは自分の考えを2軍監督に伝えるようにしています。とくに現在2軍にいる選手の、今後の1軍での起用プランなどですね。こうした情報を共有することで、2軍監督が指揮を取りやすくなればと考えているのです。

その他に2軍監督時代に心がけたことは、人間教育でしょうか。高校を卒業したばかりのルーキーをはじめ、若い選手を多く預かっていましたから。前に一度触れた、「真中満-野球=ゼロになるな」という野村監督からの教えを、私も選手によく伝えていました。また、「プロ野球選手というのは、自分で思っている以上に世間から注目されている」ということも繰り返し話しましたね。球場の外でも、常にプロとしての意識を持ってほしいということです。野球以外のことに対してもしっかり責任を持つべし、と若い選手達を教育するようにしてきました。

このように、様々な立場の選手が集まる2軍では、野球以外のことも含めて選手・チームをマネジメントしていく難しさがあります。だからこそ、彼らが1軍に上がって活躍している姿を見ると非常に嬉しいものがありますね。2軍監督時代、デイゲームが終わって帰宅し、テレビで1軍のナイター中継を見ていると、そうした選手が試合に出ていることがありました。そんなとき、まるで親のような気持ちで彼らの活躍を眺めたものです。私にとっては、このような時間こそ「2軍監督として一番のモチベーション」だったといっても過言ではないですね。

取材協力:高森勇旗

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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