人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

自分が「リストラ対象」!?――人事が明かす、まさかの事態の立ち回り術!

退職勧奨されても、拒否することはできる

2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。

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では、実際にリストラを告げられてしまったら、どうしたらいいのでしょうか?
そこで今回は、中高年のリストラ回避法をお伝えします。

会社の業績が悪くなったり、年収の高い中高年を減らすためのリストラが始まったら、まずは「お辞めになりませんか?」と退職勧奨を受けます。

会社は、社員を簡単にクビにはできません。一方的に「辞めてください」と伝えるのは、不当解雇にあたるので違法になります。しかし「今だったら退職金をちょっと積みますよ」と合意を求めることは違法ではありません。希望退職・早期退職は、会社からの「提案」なのです。

あくまで提案ですから、拒否することはできます。とはいえ、戦力外通告を受けているわけですから、会社には居づらくなります。

退職勧奨を拒否した社員に対して、会社が不当な異動や降格を命じることもパワハラに当たる可能性があるため、基本的にはできません。(ただし表面上は昇進という形にして、本人が望まない部署に異動させたりする会社はあります)

次に会社がとる措置は、評価をきちんとして、給与を下げることです。給与も急に下げることはできないので、少しずつ下げていきます。

例えば、年収800万の人でも、パフォーマンスに見合った適正な年収が400〜500万と判断されたら、2〜3年かけてその金額まで落としていきます。

50代後半の方なら、60歳の定年まであと少しです。年収が400〜500万まで落ちるまでは数年かかりますから、給料が下がり切る前に逃げ切ることも可能でしょう。

50代前半の方であっても、「給料が安くなってもいい、それでも粘り強くこの会社で頑張っていくんだ」と思うのであれば、会社に残るのもひとつの方法ではあります。

ですが、望まれない会社にいて、望まれていない、望んでもいない仕事をして、毎日を過ごすのって、楽しいでしょうか。やはり月曜から金曜まで有意義に働いて、土日を楽しく過ごすのが、人生というものではないでしょうか?

退職勧奨を受けた時点で、会社との信頼関係は失われています。精神的につらくなり、幸せにはなれないのではないでしょうか。この方法は、私はあまりお勧めできません。

今すぐは無理だと思ったら、同意してはいけない

退職勧奨されても、給与が大きく下がるまでは数年の時間があります。この時間を使って、牙を研ぎましょう。転職活動をする、副業をする、独立や起業の準備をする、大学で学び直すなど、2〜3年かけて自分を磨き直すのです。

私の元上司で、リストラ評論家の砂山擴三郎さんは、大手自動車メーカー時代に2回リストラされているのですが、それで悟ったことがあるといいます。

それは、会社から「辞めませんか?」と退職勧奨をされても、決して「わかりました」と言わないこと。「わかりました」と答えてしまうと「ですよね」と言ってハンコを押させられてしまいますから、何も言わず、黙っておく。

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退職は、双方の合意が必要です。会社が「労働契約を解消しましょうね」と言ってきても、本人の同意がなければ契約解消はできません。これは黒字リストラにおいても同様です。会社が「希望退職しませんか?」と言ってきても、「その条件なら辞めません」と本人が拒否したら、リストラすることはできないのです。

ですから、いちばんのリストラ回避法は同意しないことです。会社をクビになってしまったら、行くところがない。転職しても年収が下がってしまう。いずれは会社を辞めるとしても「今」じゃない。そう思うのだったら、安易に同意してはいけません。

同意しなければ、会社はそれ以上の手が打つことができません。ただし、これはあくまで応急措置。退職勧奨を拒否しても、給与が下がったり、つまらない仕事に変わったりして、今まで通りにはいかなくなります。だから時間を稼いで、牙を研ぐのです。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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