人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

ミドル世代転職は、「年収維持」が本当に幸せか

「自分の時間を充実させる」という選択肢はありか?

自分の時間の充実させたい、ワークライフバランスを大事にしたい。そういう希望を持っている人もいますよね。それはそれで、ありだと思います。

50代になると、子供が成人して社会人として独立したり、住宅ローンを完済したりして、それほど多くのお金は必要ないという人もいるでしょう。ブラックな会社を辞めて、もっとラクな仕事をしたいと考えている人もいるかもしれません。

年収が下がったり、仕事のやりがいは減るかもしれませんが、プライベートの充実を軸にするのも、考え方のひとつだと思います。

この場合は、正社員になるのは難しいかもしれません。しかし契約社員として働いたり、週2・週3勤務の顧問として働いたり、業務委託で営業支援をしたり、専門職のフリーランスとして複数の会社の仕事と契約をするといった選択肢もあります。

最近は、働き方が多様化しています。正社員や年収維持にこだわらなければ、やりたい仕事をすることも、自分の時間を充実させることも可能です。

将来に備えて、田舎に土地を買って農業を始めて、足りない収入は兼業でまかなう。そんな働き方もいいのではないでしょうか。

50代で新しいことを始めても、一流になることは可能

仕事を軸にするにしても、プライベートを軸にするとしても、考えておきたいのは、定年後の働き方です。

私たちの世代は、60歳を過ぎても、あと10年、20年と働くことになるかもしれません。50代は、そのための準備期間として有意義に過ごすことが大事です。

自分には特別なスキルも経験もない。ボーッとしたまま50代になってしまった。今さら頑張っても遅い。そんな風に思っている人もいるかもしれませんが、あきらめてしまうのはまだ早いです。私たち50代には、まだまだ多くの時間があります。

「1万時間の法則」というのをご存知でしょうか。仕事でも勉強でも、あることを1万時間やれば、その分野のエキスパートになれるという考え方です。

1日3時間、何かに取り組み、年間365日10年間続ければ、1万時間を超えます。
50歳から新しいことを始めても、60歳で何らかのエキスパートになれるのです。

また、50代になれば、これまでやってきた仕事は1万時間を超えているでしょう。すでに一流の粋に達しているわけですから、そこに新たな領域を加えれば、これは強いです。60代、70代を生き抜く新しいスキルを身につけることは十分可能です。

そのために、「自分の時間を充実させる」という選択をするのも大いにありだと思います。転職先を選ぶときは、こうした考え方も取り入れてみてはいかがでしょうか。

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50代は人生の終わり、あとは余生を過ごすだけ…。そんな考え方をしているとしたら、もったいないです。私たちの人生は、まだまだこれからです。50代からの1万時間を大切に過ごして、充実した60代、70代を過ごせる選択をしましょう。

次回につづく

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

著書

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