小さな幸せの見つけ方

道端に咲く花

2017.08.07 公式 小さな幸せの見つけ方 第1回
Getty Images

道端の花から学ぶこと

そんな私たちの姿とは対象的に、マリーゴールドは置かれた場所で何の不満や心配を持つこともなく、ただ一生懸命に咲いていました。このマリーゴールドが物語っていることは「私たちは特に気張って背伸びをしたり、自分の存在をアピールしなくても、自分にできることをきちんとしていれば見てくれる人ちゃんといて、時として人に感動を与えることだってできる」ということです。もっと言うと、「人目を気にする必要はないよ」というメッセージだと私は感じ取りました。

人はそれぞれ生まれも育ちも異なるように、一人ひとり異なる環境の中で生活しています。そして、人それぞれが置かれた環境には、目で見ることも思慮することもできない「無量の繋がりの歴史」があります。それを他人と比較して無理に環境を変えようとすれば、それはとても体力を消耗することになってしまいます。また、見落としがちなのは、外見上は他の人のほうがよく見えても、実はその方々の内情は複雑な家庭環境や人間関係の問題などで苦しんでいることも少なくはありません。

大切なのは、人と比較することではありません。自分の置かれた環境で「自分にしかできない行動や考え方に添った生き方」をすることなのです。その中で人は輝きを放つのではないでしょうか。ある意味、これは「幸せ」と呼んでいいと思います。それは、ひょっとしたら周りの人からは評価されないかもしれません。でも、自分にとっては価値をつけることなどできないほど大切なものです。

そうした「幸せ」は、他人と比較したり競い合って手にできるもの、つまり自分の外側にあるものではありません。これらはすべて自分の内側にあります。外側にあるものには限りがありますが、内側にある「幸せ」の数は無限です。

これをひと言でいうと、「少欲知足」(しょうよくちそく)ということになります。これは「欲を少なくして足るを知る」と読み、実は自分が生活するうえではすでに十分に必要なものは備わっているということに気づき、今の置かれたその状況を大切にすることを意味します。心穏やかに考えればいたって当たり前のことですが、これを忘れがちなのが私たち人間です。それは、どうしても「我欲」(自分一人の利益・満足だけを求める気持ち)に囚われた「はからい」(計算)の心が働いてしまうからです。

しかし、この自分の姿をきちんと受け止めて、反省しては軌道修正をするということを繰り返しながら生活することで、少しずつですが人は変容していきます。それは、今まで目を向けなかったことに目を向けられるようになったり、別の視点で物ごとを考えられるようになれたり、さまざまです。これが人と比較して得られる「はかない幸せ」とは真逆の、自分の内側に秘められている、小さなものですが「消えない幸せ」の見つけ方です。

つまりマリーゴールドも、自分らしく、ただ置かれた場所で一生懸命に咲いているだけなのです。

普段、私たちは相手のことを考えず、自分を中心として物事を考えがちです。しかし、相手の立場から物ごとを考えられるようになると、相手を受け止められる大きな心を育むことができます。すると結果的に、優しく温かい心が生まれます。これも小さな幸せの一つなのかもしれません。

 

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

著書

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