小さな幸せの見つけ方

「掃除」とは自分の心との対話する時間

2018.06.18 公式 小さな幸せの見つけ方 第22回
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部屋の掃除の副次効果

朝の出勤前に必ず部屋にさっと掃除機をかけるのが、私の日々の日課の一つになっています。だからと言って、私が元々掃除好き、きれい好きというわけではありません。発端は娘の部屋荒らしです。

私には、2歳の食欲旺盛な娘がいるのですが、よく食べ物を持って家の中を走り回り、好物のおせんべいやお菓子のかけらなどをポロポロと落とします。そのせいもあって、掃除機をかけないとフロアがザラザラして気持ちが悪いのです。

もちろん出勤前はバタバタするので、本格的に掃除機をかけることはできませんが、目と手の届く範囲をハンディタイプの掃除機でサッと掃除します。時間にしてものの10分程度です。当初は、「出勤前に仕事が増えてしまった」「腰が痛い」など思い、仕方なくやっていたのですが、次第に掃除機をかけないと気持ちがわるくなり、今では毎朝の習慣になっています。というよりも、毎朝の掃除が楽しいのです。

私が持っているハンディタイプの掃除機は、吸い取ったゴミが見えるようになっており、どうすれば1日でこんなに家にゴミが溜まるのか不思議に思いながらも、楽しく掃除機をかけています。そして、気分が乗ってくると、ソファーの下や、部屋を走り回る娘の足音を和らげる防音対策として敷いているマットの裏などを、ひっくり返して掃除したりします。平日は時間も限られているので、ある程度の掃除しかできないのですが、「もうちょっと」「ここだけ」「あそこも」という気持ちが止まらず、気が付いたら出勤する時間を過ぎており、慌てて家を出るということもたまにあります。

しかし、この習慣が私にとっては、とても気持ちのよいものなのです。それは、掃除をしていると、自分の目の汚れを洗っているような気分になるからなのです。

使用している掃除機はハンディタイプなので、床に膝をつけることになります。イメージとしては、床を雑巾で拭いているようなポーズになります。これが、日常生活において姿勢を低くすることなどあまりない私に、いろいろなことを教えてくれるのです。

例えば、ソファーの下やテレビ台の下に娘のおもちゃが転がっていたり、部屋の隅に設置してある大きな観葉植物の枝と枝の間に人形が挟まっていたり、不思議なことを発見すると同時に、娘の行動や世界を学び、楽しくなるのです。そして、昔は自分も娘と同じような視点で物事を見ていたのであろうと想像しながら、自然と今の自分の価値観や出所もわからない常識というものを見直すことができるのです。

また、ただ無言で掃除機をかけるという単純作業によって、集中力も高まります。家を出る頃には頭もシャキッとしています。おかげで朝から仕事がはかどります。部屋は綺麗になり、気持ちもすっきりし、副次的な効果で妻からも喜ばれるという状況を作り出してくれている娘には感謝しなければなりません。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

1982年、山口県生まれ。僧侶でありながら講演や執筆、通訳や仏教家関係の書物の翻訳なども手掛け、活動の場を幅広く持つ僧侶。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。

ビジネスマンの悩みを仏教の観点から解決に導く著書『端楽(はたらく)』や、英語に訳せない日本語の奥深さを解いた『訳せない日本語』(ともにアルファポリス)が好評のほか、国内外を問わず仏教伝道活動を広く実践している。

著書

小さな幸せの見つけ方

「日常の中にある、普段は気づきにくい“幸せ”を再発見すること」をテーマとした、著者自身の実体験による24話のエッセイ。人間にとって本当の“幸せ”...

訳せない日本語

アルファポリスのビジネスサイトで大人気の連載がついに書籍化!! 正確に英語で訳せない日本語にこそ、実は日本古来の文化や習慣、日本人の「心」が息...

端楽

浄土真宗本願寺派の僧侶であり、ハーバード大学研究員の経歴を持つお坊さんが、「働く」ことを仏教的な視点から解説し、人が働くことの意味と意義における...
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