実は、親になってわかったことがもう一つあります。それは、このようなことを口にしている私自身も、自分の両親から、私と妻が娘に注ぐ思いと同じ思いを受けながら生かされてきた事実です。そう思うと、親の思いも理解せず、随分と酷い態度を取ってきたものだと反省するばかりです。それでも文句一つ言わずにいてくれた両親の懐の深さに、改めて大きな愛を感じます。
ただ、このような温かい思いに包まれている事実は、なにも親子の関係だけに限ったものではありません。目には見えませんが、実は私たちは普段から、周囲の人々から温かい思いや願いを注がれているのです。自分では気が付かないだけで、家族をはじめ、友人、職場の同僚、近所の方々から、何かしら「気にかけて」もらっていたり、「心配り」をしてもらっているのです。なかなか思慮することはできませんが、私たちは日々の生活の中で常に温かな思いに包まれているのです。
言い換えるなら、私たちは一人ひとり、さまざまな方の思いを注がれながら「生かされている」ということになります。普段、孤独を感じている方もおられると思いますが、気持ちを落ち着かせて、深くこれまでの自分自身の歩みを振り返ってみると、たった一人で生き抜いてきたと断言できる人はおそらくいないと思います。いろいろな人や物との交わりを経て、誰しも今があるのです。
冷静に考えれば誰もが理解できると思いますが、忙しい日々の生活の中ではなかなか落ち着いて自分自身を振り返る時間がなく、周囲に心から感謝できるほどの思いを持つことができていないのが現実ではないでしょうか。その結果、自分は孤独であると思い込んでしまう人もきっといるはずです。
しかし、振り向けば、実は世の中は私たちを支えてくれている思いで溢れています。そうした意味では、誰も孤独ではないのです。
毎朝目にする女の子とお母さんの光景は、いつもこの大切な事実を私に思い出させてくれます。普段意識しない気持ちを改めて考えてみると、実は、私たちはすでに幸せ者なのかもしれませんね。