小さな幸せの見つけ方

食べ物をいただくということ

2018.04.16 公式 小さな幸せの見つけ方 第18回
Getty Images

食事を摂取するということの意味

普段、私たちは当然のように食事をしていますが、食事の前に手を合わせて「いただきます」と口にされている方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか。

食前の「いただきます」の「いただく」は、「食べ物をいただく」「食べ物を作ってくれた人や運んできてくれた人に感謝する」と理解されている方が多いと思いますが、さらに深く掘り下げると、食べ物に含まれる「いのち」を「いただく」という意味になります。すべての食べ物には「いのち」があります。つまり、食べ物自体もさまざまな「いのち」の集合体なのです。私たちは、ただ食べ物という物質を口の中にいれているわけではありません。他の生き物の「いのち」を口に入れ、生きる力とさせていただいているのです。

例えば、お米一粒にしても、無数のいのちの結びつきの中で生まれた「いのち」の集合体です。私たちが普段食すご飯は、炊飯器で炊かれて食卓に運ばれてきますが、その過程には無数の「いのち」が存在します。まずご飯を炊くには水が必要です。その水の中には細菌という「いのち」もいることでしょう。また、そもそもお米が集荷される前には、稲は田んぼの水や地中のさまざまな栄養を吸収して育ちますが、それらもすべて他の「いのち」を吸収していることになります。

つまり、私たちは食事をしているとき、たくさんの「いのち」の集合体を摂取しているということになるのです。別の言い方をすれば、私たちは、他の「いのち」の犠牲なくしては生きていけないのです。これは、人間だけではありません。この地球上に生きるものはすべて同じです。

このことを本当に理解したとき、生まれてくるのは、お姉ちゃんのような「かわいそう」という言葉の根底にある、他の「いのち」を搾取してしまうことへの懺悔(ざんげ)です。そして、私たちは「生きている」のではなく、「生かされている」ことに対して感謝すべきなのです。

私たちは、多くの「いのち」と繋がって生かされているという事実をしっかりと受け止めなければなりません。これが一人で生きているのではないという意識と共に、温かい気持ちを持つことにつながります。その結果、本当に自分にとって必要なものと、必要でないものとの区別ができるようになり、我欲(がよく)をコントロールできるようになるでしょう。実は私たち人間の苦しみの原因は、何事にも不満を持ってしまう心です。この原因をきちんと把握し、小さなことでも満足できるようになれば、苦しみは軽減していくものです。

まずは食事をする前に、必ず「いただきます」という言葉を口にすることを、意識的に実践してみることから始めてみましょう。きっと、誰しもが幼い頃に少なからず持っていた、お姉ちゃんのような他の「いのち」への気持ちを思い出すことにもつながるかもしれません。

 

ご感想はこちら

プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

著書

楽に生きる

楽に生きる

大來尚順 /
アルファポリスビジネスの人気連載「人生100年時代を幸せに生きる明日への一歩」...
訳せない日本語

訳せない日本語

大來尚順 /
大好評書籍、待望の文庫化! 正確に英語で訳せない日本語にこそ、実は日本古来...
あなたは、あなた。

あなたは、あなた。

大來尚順 /
アルファポリス・ビジネスの人気Web連載の書籍化! 仕事、同僚、友人、家族との...
小さな幸せの見つけ方

小さな幸せの見つけ方

大來尚順 /
「日常の中にある、普段は気づきにくい“幸せ”を再発見すること」をテーマとした...
訳せない日本語

訳せない日本語

大來尚順 /
アルファポリスのビジネスサイトで大人気の連載がついに書籍化!! 正確に英語で...
端楽

端楽

大來尚順 /
浄土真宗本願寺派の僧侶であり、ハーバード大学研究員の経歴を持つお坊さんが、...
出版をご希望の方へ

公式連載