人を育てるコツ

チームを編成する際に上司が気をつけるべきこと

2017.02.02 公式 人を育てるコツ 第5回
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部下のモチベーションを第一に考える

彼は浅はかな気持ちで「チームの雰囲気をよくすること」を想定していました。早くこの二人の仲をなんとかしようと、あせっていたのもありました。しかし、そこで二人のモチベーションの低下を考えることはありませんでした。二人を組ませれば、必然的に会話をするようになって、仲の悪さは解消されるのではないか、その考えは安易だったのです。

結果として、NさんとEさんも、嫌な気分で仕事をすることになってしまったため、ペアの案件はおろか、元々の仕事である、自分の担当客先への営業活動にまで支障が出るようになってきました。仕事上でミスが出たり、積極的にお客さまのところへ訪問するという姿勢が、減ってきたのです。

生産性が上がるどころか、互いにモチベーションが下がってしまうという想定外の事態でした。営業という仕事が、とくに課員のモチベーションに大きく左右される仕事だということを見誤っていたのです。ここが課長の大きなミスでした。

もちろん、一般的な考え方として、「仕事なのだから相手の好き嫌いというのは理由にならない」「大人なのだから、お互いにきちんとした対応をすべきだ」という意見はあるでしょう。日ごろから「協調性」に欠ける部下に対し、あえて正反対の気質のメンバーと組ませて成長させてみる、そういった狙いでチームを編成するケースはもちろんありますし、うまくいけば意識改革に繋がることが多いのも事実です。

しかし、部下同士も生身の人間です。誰だって、人の好き嫌いはあります。「協調性」や「思いやり」といったものではどうにも処理できない相性というのものがあるのです。

リーダーは、そこを見誤ってはなりません。

その証拠に、この件のNさんとEさんの場合、ペアを解消し、それぞれ、別の人間とペアを組ませた途端、ペアでの仕事はどんどん進むようになり、NさんとEさんも生き生きとして営業活動するようになりました。自分の担当客先への営業活動も積極的になり、仕事上のミスはなくなってきたのです。

こういったケースは、チーム内の編成だけでなく、クライアントに対し、部下の誰を担当させるか、といった場面でも起こりうることです。クライアントの会社風土、先方の担当者の性格などと照らしてみて、部下との相性はどうだろう。リーダーは常にそういった視点で判断しなくてはなりません。「部下の人間的な成長」を優先させて厳しいクライアントを任せた結果、関係がこじれてしまったとなったら、それはリーダーの采配ミスといえるのです。

誰と誰を組ませるかは、実際にペアを組ませてみないと分からないこともあるでしょう。上司としては非常に悩む采配ではありますが、それが上司の大きな仕事でもあります。これができない上司の下で働く部下は、想像以上のフラストレーションを抱え、モチベーションが著しく低下する可能性を内包しているのです。

プロジェクトの成功と部下の成長、両軸を成立させる最適解を見据えながら、チームの編成をするよう意識してみてください。


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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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