2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

高津監督が選手起用で意識していたポイントは
「信頼度」「期待度」「貢献度」「プライド」

「我々が勝つものだと思っていた」

――さて、今回の日本シリーズは全6試合、すべてが僅差の白熱した展開となりました。以前監督は「大舞台の緊張と興奮は嫌いではない」とおっしゃっていましたが、今回もその思いは変わらなかったのですか?

高津 結果的に勝ったから言えるのかもしれないけど、今回も多少の緊張と大きな興奮と、毎試合のハラハラドキドキがすべて重なった心境でゲームを見守っていましたね。

――選手たちも、ファンの人たちも「絶対大丈夫」という言葉を信じて戦っていたように思います。これだけ胃が痛くなるような激戦の中で、監督自身は「絶対大丈夫」と信じていたんですか? ある種の自己暗示のような意味合いもあったのでは?

高津 うーん、僕自身「絶対大丈夫」と思っていましたね。今言ったように、少しの緊張と大きな興奮の中で、やるべきことはやって不安はなかったですし、「我々が勝つものだ」と思っていましたから。

――この日本シリーズや、巨人とのクライマックスシリーズ(CS)もそうですし、ペナントレースでの大一番もそうでしたが、今季は「ここぞ」という場面での粘り強さ、勝負強さが目立ちました。この点について監督自身はどのようにとらえていますか?

高津 シーズン中の10連戦を7勝3分で無敗で乗り切ったり、10月の巨人、阪神との6連戦を5勝1敗で切り抜けたり、CSを2勝1分で通過したり、「はたしてどうかな?」というプレッシャーのかかる場面で、自分たちの力を発揮できたのは立派だったと思います。今年はベンチ内が常に「まだまだいけるぞ」という雰囲気でしたね。この雰囲気作りは狙ってできるものではないけれど、こうしたムードはこれからも大切にしていきたいと思っていますね。

――短期決戦において、「よそ行きではなく普段通りの野球をする」という考え方と、反対に「従来のやり方にこだわらずに臨機応変に対応する」という考え方もあります。この点について、監督はどのように考えていますか?

高津 日本シリーズのような短期決戦は、本当にあっという間に決着がついてしまうので、注意が必要ですね。基本的には「今までやってきたことを崩さない」というスタンスで、その上で「状態のいい選手を使っていく」というのが定石なのかな? ただ、その際にはこれまでの信頼度、貢献度、期待度、選手たちのプライドを注意して起用する必要があると思います。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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