2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

高津監督が選手起用で意識していたポイントは
「信頼度」「期待度」「貢献度」「プライド」

「当初から、野村監督の言葉を引用するつもりだった」

――日本シリーズ第6戦終了後、日本一を決めた勝利監督インタビューにおいて、高津監督は「感謝、感謝、感謝」というフレーズを述べました。これは1993(平成5)年、高津監督が胴上げ投手となった西武ライオンズとの日本シリーズ第7戦の試合後、野村克也監督が発した言葉とまったく同じでしたね。

高津 はい、「日本シリーズで勝ったら言おう」と決めていました(笑)。僕はこれまでたくさんの試合を投げてきましたけど、「この一戦を」ということになれば、間違いなく93年の日本シリーズでのピッチングを選びます。第4戦、1対0の大事な場面で故障明けの川崎憲次郎の後にマウンドに上がった試合、あの試合は生涯で一番緊張した試合でした。試合後、いくら水を飲んでものどの渇きはとれなかった。だから、あの年の日本シリーズには強い思い出があるので、野村監督の言葉を引用させてもらいました。

――改めて、今年の日本シリーズを総括していただけますか?

高津 まずはピッチャー陣が本当によく頑張ったと思いますね。先発した6人だけでなく、リリーフ陣も本当に粘り強く、自分の持ち味を発揮してくれました。もちろん打撃陣も、オリックスの山本由伸投手、宮城大弥投手を相手に勝ち星を与えなかった。初戦は敗れはしたけど、山本投手をマウンドから引きずり下ろすことができました。シリーズ前に「点を取られなければ何とかなる」と思っていた通りの試合展開が実現できたことが大きかったと思います。

――昨年の最下位からの大躍進。その要因は何だと思われますか?

高津 さっきも言ったように、今年のベンチの雰囲気は最高でした。以前から、「こういう雰囲気の中で野球をやりたい」と考えていた通りのムードでした。もし負けたとしても、決して落ち込まずに前向きな気持ちで、「明日だ、明日!」と自然に思えるような雰囲気。勝っていたからそういうムードになったとは思うんですけど、このムードは来年以降も大切にしたいと思っています。

――さて、この連載「2021東京ヤクルトスワローズ 高津流燕マネジメント」も、今回が今年のラストです。一年間おつき合いいただいた読者の方に、監督からメッセージをお願いできますか?

高津 僕自身、「シーズン中にプロ野球の監督が何を考えているのか?」ということをできるだけ正直に率直にお話しつもりです。その時々の僕の心境や考えを記録しつつ、結果的に「日本一」という称号を手に入れることができたシーズンを形に残せた連載となりました。応燕していただいたファンの方には、心から感謝します。また来年も日本一連覇という目標に向けて頑張ります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。1年間、どうもありがとうございました。

 

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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