東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

苦しいチーム状況だが、若手にはチャンスの時……
「出場機会が目前にある状況を生かしてほしい」

今はオールマイティーにいろいろ取り組む時期

――今は試合に出るチャンスも多いので、ベンチに控える選手は、よりリアリティを持って見ているし、試合に出ている選手は「うかうかできない」ということで、緊張感を持ってプレーができるということですか?

髙津 たぶん、ベンチで控えている選手も今まで以上に緊張していると思います。「もしかしたら、今日この人がうまくいかなかったら、明日は自分がスタメンなんじゃないか」と思って、ベンチに座っているはずです。昨年までとは違って、今年はメンバーが固定されていないので、「自分の出番は今日なのか、それとも明日なのか?」と考えている選手がたくさんいるのかなと思いますけどね。

――以前から、「本当に勉強になるのは、練習での100球よりも試合での1球。何千本のスイングよりも試合での1打席」と監督は話していますが、期せずして、それが今は毎試合行われているということですか?

髙津 その通りですね。非常に大きな財産と経験を積んで、明日、来年、彼ら若い選手は成長していくんだろうなと思って見ています。何かのタイミングでチャンスをつかんでレギュラーになっていく、自分の地位を確立していく選手というのは、これまでにも山ほどいます。若手選手たちにとって、今この状況はすごく大事な時間、ゲームを過ごしているんだと思います。この状況を生かしていってほしいです。

――とはいえ、「今日は試合に出るけど、明日は出ない」とか、「今日はセカンドだけど、明日はショート」という出場スタイルだと、選手たちにとってはかなりとまどいもあることと思います。

髙津 残念ながら、これは間違いなく弱いチームの典型ですね。試合に出られる機会が増える一方で、役割が一定しない難しさも当然あります。「今日はこっち、明日はこっち」となると、それで学ぶことも多いけれど、選手としては難しさもある。僕自身も、本心を言えばできれば起用法やポジションを固定して、自分の役割をどんどん深く追求していく方が、チームとしてはいい形かなと思いますけど……。

――例えばセカンドもやる、ショートもやるとなると、オールマイティーにいろいろな経験や視点を獲得できるメリットはあると思います。でも、一方では一つのポジション、役割を深く追求する、掘り下げていくことは、どうしても弱くなりますよね。

髙津 その通りだと思います。だけど、現状では「僕はショートだけやります」とか、「サードしかできません」というタイプの選手は、今のチーム状況にはなかなかマッチしないのも事実です。「内野も外野もやります」という選手の方がチャンスは増えるし、(内山)壮真なんて、「キャッチャーもできます」というところで出場の機会を増やしています。彼らにとっては大変かもしれないけど、今はそうやってチャンスを手にしていく時期。そのチャンスをものにできるかどうかは別として、まずはチャンスを手に入れること。それが若手選手にとっては重要なことだと考えています。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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